ハゲ親父のささやき

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どちらが好み?キングとキューブリックの二つの「シャイニング」

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こんにちは、カズノコです。

 

アメリカのホラー作家、スティーブン・キング原作の映画IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」が11月に公開されたのに続き、「シャイニング」の続編「ドクター・スリープ」も公開されました。2020年1月には再映画化された「ペット・セメタリー」の公開が予定されており、ちょっとしたキング・ブームになっていますね。

 

日本でスティーブン・キングの名前が一般にも知られようになったのは、スタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」が1980年に公開されてからだと思うのですが、私も映画「シャイニング」を観てキングの名前を知った一人でした。

 

ところで、私が一番最初に読んだキングの作品は呪われた町集英社文庫)でした。「呪われた町」も新装版では藤田新策画伯の表紙画に変わっていますが、私が読んだのは、ちょっと、と言うよりもかなり陳腐な感じの上巻は、下巻はのイラストの表紙で、読むまで若干の不安がありましたが…一読して、ぶっ飛びました!

 

吸血鬼が現代のアメリカの田舎町に現れるという話は、吸血鬼といえばコウモリの舞う古城に佇む「ドラキュラ伯爵」のイメージでしかなかった当時の私にとってはかなり新鮮な着眼点でした。

 

あと、読み終わった後の「崩壊感」とでも言うのでしょうか…「町が死んでいく」という感覚はこういうことなのかと、キングの筆力にただただ圧倒されてしまいました。

 

その次に読んだのがファイアスターター新潮文庫)でしたが、もう一挙にハマりましたね!超能力者である親子の逃避行をスピード感のある筆致で、ぐいぐい読者を引き込んでいくストーリーテリングにノックアウトされました…。しかも、泣ける…。

 

肝心の「シャイニング」なんですが…何せ原作者のキングが映画の「シャイニング」をめちゃくちゃこきおろしていたので、いったいどんな小説なんだろうと、想像ばかりたくましくしていましたが、版元が倒産して長い間読みたくても読むことができなかったのでずいぶんモヤモヤしてましたね…。映画の公開から6年も経って、やっと文春文庫で読むことができました!

 

で、読み終えての感想は、期待していた割には「こんなものか…」という軽い失望感と「原作者としては、あの映画化は怒るやろな…」という納得感でした。

 

それほど小説と映画のキャラクター設定からストーリーまで大きく異なっており、映画は小説の登場人物の名前と基本設定しか借りていない全くの別物と言ってもいいほど、キューブリックの映画になっています。

 

キングの長編ホラー小説の特徴として、日常描写の徹底的な書き込があります。序盤から中盤にかけてじわじわと怖さを盛り上げていって、ラストにかけてジェットコースターのような怒涛の盛り上がりを見せる展開も多くみられます。

 

ですので、映画の「シャイニング」、しかも上映時間119分の「コンチネンタル版」と呼ばれるバージョンを先に見た私にとっては、主演のジャック・ニコルソンの狂気に満ちた怪演と暴力的な描写のインパクトが強烈過ぎました…。

 

しかも、小説の「シャイニング」ではジャックは誰も殺しませんし、実にハートウォーミングなラストを迎えることになります。これにも驚きました…。

 

これはもうどちらの方がよいとか、優れているとかいう次元ではなく、小説も映画も別個の作品として「傑作」となってしまったんですね…。

 

原作者であるキングも、自分の意図したところとあまりにもかけ離れて作られてしまった映画が「駄作」であったら、ここまで非難を繰り返すことはなかったと思います。(実のところ、そのようなキング原作の映画はたくさんあります…。)

 

映画「シャイニング」が「傑作」であったゆえに、原作者としてのプライドもあり、素直に認めたくはなかったのではないでしょうか?(あくまで私見です…)

 

 

ところで、キング自らが脚本と製作総指揮を務めたTVドラマのミニシリーズとして、「シャイニング」は1997年に再映像化されています。

 

一説には、「シャイニング」のドラマ化の権利を持っていたキューブリックが、キングが映画に対する非難を止めるのを条件にドラマ化を許諾したと言われています。

 

キングほど映画が好きな作家はいないでしょうね。映像化された作品は70を超えるそうですが、「シャイニング」だけはどうしても自分の好きなように作り直したかったんだと思います。

 

私もこのドラマを観ましたが、結論から言えば、出来はとてもよかったと思います。当たり前と言えば当たり前ですが、キャラクターやストーリーは原作の小説に極めて忠実です。きちんと動物のかたちに刈り込まれた植木も出てきますよ…。

 

主人公であるジャックはアルコール依存症に悩んでいたり、家庭内暴力をふるった過去はありますが、ごくごく普通の人で、悪いのは邪悪な意思を持った存在であるホテルとそこに巣くっていた悪霊なんですね…。

 

映画でジャックを演じたジャック・ニコルソンはある意味ミスキャストですね…。顔つきからして、最初から狂っていとしか思えない…。

 

妻のウェンディも、もっと気丈でしっかりとした女性として描かれており、レベッカ・デモーネイが演じています。映画のシェリー・デュヴァルのヒステリックな演技も怖さを増という意味では捨てがたいものがありますが…。

 

ただ、主人公の息子のダニーだけは、映画の方がいいですね。5,000人の候補者の中から選ばれた当時6歳のダニー・ロイド少年は、文字通り映画の中で「輝いていた」と思います。

 

ドラマでダニーを演じた少年も上手いんでしょうが、いつも半開きの口がだらしなくて、このドラマの唯一気になってしょうがないところなんです…。

 

このドラマはその年のエミー賞の作品賞にもノミネートされましたが、いかんせん監督したミック・ギャリス(この監督は原作者キングのお気に入りのようですね…)の力量によるものなのか、脚本と製作総指揮まで務めたスティーブン・キングの完全な支配下に置かれたのか、ドラマは原作の忠実な映像化にとどまってしまい、映像の持つ訴求力は映画と比較にならないと思います。小説の映画化、ドラマ化って難しいものですね…。

 

 

 

 

 

キング初期の代表作として絶対外せない名作!新装版の文庫の表紙は優しい感じで、とてもいいですね。

新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

 

 

新装版 シャイニング (下) (文春文庫)

新装版 シャイニング (下) (文春文庫)

 

 

 

 

  小説の忠実なドラマ化で、4時間32分とかなりの長尺ですが、キングの小説ファンにとっては何でもない長さでしょう。キューブリックが映画化した「シャイニング」と比較してみるのも楽しめますよ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“傑作”を作ってしまったばかりに原作者から反感を買ってしまった映画「シャイニング」

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こんにちは、カズノコです。

 

スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画の名作「シャイニング」(1980)の40年越しの続編「ドクター・スリープ」(2019)が、11月29日に公開されました!

 

この公開にあわせるよう、「シャイニング」がNHK-BSでも11月25日にオンエアされていたので、つい観てしまいましたが…やっぱりコワい!何度観てもコワい!そして面白い!

 

キューブリック監督の映画は、何の予備知識も持たずに初めて観ても、映画にまつわるエピソードやトリビアを知ったうえで深読みしながら観ても、どちらも面白い!

 

この「シャイニング」で一番有名なエピソードは、原作者のキングがキューブリックの手で映画化されたこの作品を毛嫌いしており、事あるごとに非難を繰り返していることでしょうね…。

 

正直なところ、この映画が公開された当時中学生だった私はキングなんて作家は全く知りませんでした。それもそのはずで、70年代後半にキングの初期の作品が出版されたものの、売れ行きはどれもよくなかったようです…。

 

特に、「シャイニング」の単行本は出版社が倒産してしまう不幸が重なり、長い間読みたくても読めない状況が続きました。その後、やっと文春文庫に収められて読むことができたのは映画の公開から6年も経ってからでした…。

 

ですので、日本で作家キングの名前を知ったのは、この映画「シャイニング」の原作者としてからという人も多いのではないでしょうか?

 

ちなみに、当時の映画雑誌「スクリーン」「ロードショー」かでしたが、例えば、「〇〇監督の次回作は「✖✖」に決まりました」等の映画の新作情報が短く掲載されているページがありました。そこでは「シャイニング」は「輝き(原題)と紹介されていました。当時の私はキューブリック監督の次回作はなんか明るい映画になるみたいやの~。」と勝手に想像しておりました…。

 

ちなみに話はそれますが、私がこれら新作情報の中でも一番想像できなかった映画は「地球圏外(原題)でした…。皆さん、おわかりになるでしょうか?…......そうなんです、あのスティーブン・スピルバーグ監督の大ヒットSFファンタジー映画「The Extra-Terrestrial」つまりE.T.のことだったんですね…。「地球圏外」…。

 

…そんなことはどうでもよいことでした。当時は何の予備知識もなく、製作に5年もかかったという「シャイニング」を観たのですが、まぁスゴいインパクありましたねぇ!

 

すでに言い尽くされてもいますが、なんと言っても、主人公のジャック・トラヴィスを演じたジャック・ニコルソンが、演技とわかっていても怖すぎる!

 

特に、ジャックが洗面所のドアを斧で叩き壊して隙間から顔を覗かせ、「ひあず、じょに〜!」と吠える場面は、この映画の名場面中の名場面であり、この映画のポスターにも使われています。

 

キューブリックはこのわずか2秒程度のシーンを撮るために2週間をかけ、190以上のテイクを費やしたそうです…。

 

また、恐怖で気も狂わんばかりに絶叫し、目の玉が飛び出さんばかりに包丁を持ったまま恐れおののく、妻のウェンディを演じたシェリー・デュヴァルの顔も、襲う側のジャックよりもさらに怖い!

  

これもキューブリックがデュヴァルに対し納得がいくまで何度も撮り直しをしたため、精神的に追い詰められ、あのような「恐怖」演技につながったそうです。これは映画以上にコワい…。

 

「シャイニング」には様々な恐怖が描かれています。一番には、わめき叫びながら斧を持って暴れるジャックの直接的な暴力の恐怖なんでしょうが、ジャックがそこに至るまでのジワジワと狂気に囚われていく心理的な恐怖、それに気づいた時のウェンディの絶望的な恐怖もまた格別です…。

 

もちろん、キューブリック監督の持ち味であるシャープな映像美もたっぷり堪能できます!

 

友人であった写真家ダイアン・アーバスの代表作にオマージュを捧げたエレベーターホールに立つ双子の姉妹、ブレのないスムーズな移動撮影を可能にしたステディカムによるホテルの廊下や迷路庭園を移動するシーンは印象的であるとともに現実離れした不気味さも醸し出しているかと思います。

 

また、生理的に何ともイヤーな気持ちにさせる描写も忘れていません…。エレベーターから大量に溢れ出る血の海、「237号室のバスルームの女」や「いかがわしい行為にふける犬男」なんかは気色悪いですよね…。

 

でも、なぜキューブリックホラー映画、しかも、ベストセラー作家であるキングの代表作「シャイニング」の映画化に臨んだのでしょうか?

 

キューブリックの前作バリー・リンドン(1975)は、18世紀のヨーロッパを舞台にして、時代考証はもちろん、照明、美術、衣装に至るまで、その時代を忠実に再現しようと試みた“挑戦的な作品”でしたが、興行的には見事に失敗してしまいました…。

 

そこで、キューブリック必ずやヒットが狙える作品を次回作に選ばなければならなくなったのですね。当時はエクソシスト(1973)やオーメン(1976)が大ヒットして、映画界はオカルトホラー映画ブームとなっていました。

 

キューブリックの元には「エクソシスト2」の製作の話も来ていたそうですが、結局は「シャイニング」に決定し、キューブリックにとっても重要な作品に、そして、後の映画史上にも残る傑作が生まれることになりました。

 

この「シャイニング」という作品は、キングにとっても、キューブリックにとっても、win-winの関係で、両者にメリットがあったと個人的には思うのですが、果たしてその続編の「ドクター・スリープ」はどのような結果をもたらすのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

日本やヨーロッパで劇場公開されたのは上映時間が119分の「コンチネンタル版」と呼ばれるもので、NHK-BSでもこのバージョンが放送されていました。スピーディな展開で、純粋なホラー映画として楽しむならこちらの「コンチネンタル版」をお勧めします。

シャイニング [Blu-ray]

シャイニング [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

 「シャイニング」には、「プレミア上映版」(146分)、そこからエピローグを除いた「北米公開版」(143分)、そこからさらに説明的なシーン等を削除した「コンチネンタル版」(119分)といくつかのバージョンがあります。キューブリック監督が意図したバージョンは「コンチネンタル版」だと思いますが、より深く「シャイニング」の世界を知りたい方にはこちらの「北米公開版」をご覧ください。

 

 

 

予想をくつがえす展開にも納得の“正統”な続編!「ターミネーター:ニュー・フェイト」

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こんにちは、カズノコです。

 

ターミネーター: ニュー・フェイト(2019)が公開されています!興行ランキングも1位と大ヒットしています!(11/18現在)

 

シリーズの中でも傑作の呼び声高いターミネーター2(1991)の正統な続編で、「ターミネーター3(2003)以降はなかったことにしていいと…。(この言葉これまでどれだけ耳にしてきたことか…。)

 

ただし、今回は違う!

何と言ってもシリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロンが製作に復帰!

おまけにリンダ・ハミルトンも28年ぶりにサラ・コナー役で復帰!

しかも、監督を務めるのが「デッドプール(2016)ティム・ミラーって、これは期待しない方が無理というもの!

 

ところで、「デッドプール」は大好きな映画で、ティム・ミラーの腕も大したものだと思っていましたが、実はターミネーターの監督としてティム・ミラーってどうよ?」とも思ってました…。

 

ところが、ジェームズ・キャメロンティム・ミラーは10年以上前からの知り合いで、キャメロンは「デッドプール」の映画化を強く推していたそうです。「デッドプール」は大ヒットし、「デッドプール2」の製作もスタートしましたが、残念ながら監督のミラーは降板してしまいます。そんな傷心のミラーに手を差し伸べたのがキャメロンで、「ターミネーター」の新作の監督としてミラーを抜擢したそうです…。

  

いまさら言うのもなんですが、ターミネーター」と「ターミネーター2」は、同じキャラクターが悪玉と善玉とに入れ替わる、一枚のカードの裏表のような、エポックメイキングな正編と続編であったと思います。

 

それでも、ターミネーターのシリーズが公開されるたびに映画館へ足を運んでしまうのは、ただただ、今回は「ターミネーター」と「ターミネーター2」を超えることはできたのだろうか?と見届けるためにだけだと思うんですね。そして、そのたびに、やっぱり超えられなかったかな?…と、ちょっぴり安堵感混じりの失望感を味わってきました。

 

でも、今回は何と言ってもジェームズ・キャメロンが製作に加わり、本気で「ターミネーター2」の続編に取り組むと言うのです…。かつて「ターミネーター3」製作の時、「物語は『ターミネーター2』で完結しており、続編を作るべきではない」として製作から降りたキャメロンがです…。

 

 

様々な期待をもって今回は「ターミネーター: ニュー・フェイト」の公開初日に映画館に駆けつけましたが、ああ、ターミネーターのファンって40〜50代のおっちゃんが中心なんやなぁと感慨深いものがありましたね…。

 

果たして、映画を観終わった直後の感想は、「これってどういうこと?『ターミネーター3』どころか、『ターミネーター』と『ターミネーター2』さえもなかったことにしてはいないか?」でした…。

 

たぶん、「ターミネーター2」に思い入れの強い人ほど、この映画の冒頭のシークエンスには度肝を抜かれたと思います…実は私もそうでした。正統的な続編にしてあの展開はいくら何でもないだろうと。

 

ティム・ミラーって『ターミネーター』に愛情もリスペクトもないのかな…?」と思ってもいたところ、あのシークエンスを決めたのは、ジェームズ・キャメロン自身だったと映画を観た後に知り、さらにショックを受けました…。

 

映画を観て2週間がたち、ようやく冷静になって思えることは、ジェームズ・キャメロンにとってもターミネーター2」は、“いつかは越えなければならない壁”になっていたのではないかということです。

 

ターミネーター」公開から35年たち、「ターミネーター: ニュー・フェイト」を観て強く感じたことは、歴史は女で作られる「歴史は変えられない」ということです。

 

歴史は女で作られるとは、同じ題名のフランス映画がありましたが、ジェームズ・キャメロン監督が「ターミネーター」からの一連の監督作品において一貫して描いてきたのは「強い女性」の姿です。

 

ターミネーター」から始まり「エイリアン2」、「アビス」、「ターミネーター2」、「トゥルーライズ」、「タイタニック」、そして「アバター」と、いずれの映画にも「強い女性」しかも「母性の感じられる強い女性」が登場しています。

 

ターミネーター: ニュー・フェイト」にも、シリーズでおなじみのサラ・コナーに加え、未来から来た女性戦士のグレースと、ダニー・ラモスという若いメキシコ人の女性が登場します。物語はこの三世代の女性を軸に展開していきます。

 

女性は子どもを産むことによって未来を作っていくということはもちろんですが、女性自らが主役となり歴史を作っていく、未来を作っていくリーダーこそ女性であるというスタンスに一歩進んでいます。

 

そこに、男性リーダーの存在は必要ありません。ジョン・コナーの呪縛からサラ・コナーが、そして、ジェームズ・キャメロンが解かれたともいえるでしょう。

 

また、今回の「ターミネーター: ニュー・フェイト」では、過去に戻って歴史を変えたとしても未来は変わらない、別の分岐を経て同じ未来をたどる感が強く感じられます。

 

それは「ターミネーター」や「ターミネーター2」のラストで、人類の危機が回避され希望に満ちた姿を描くのではなく、未来に対して漠然とした不安を持ったまま終わるラストで描いていたものを、はっきりと観客の私たちに示したものと言えます。これこそが、キャメロンの言うターミネーター2」の正統な続編の意味でしょう。

 

また、「ターミネーター: ニュー・フェイト」は、アーノルド・シュワルツェネッガー扮するT-800が役割を終える最後の雄姿を見届ける映画でもあります。 

 

脚本的に「いくら何でもちょっと変だろ?…」と思うところも多々ありますが、35年もの間、ターミネーターを演じてきたシュワルツェネッガーの姿には感慨深いものがあります…。私は「X-メン」のキャラクター「ウルヴァリン」の最期を描いた「ローガン」(2017)のヒュー・ジャックマンの姿が重なりました…。

 

ちょっと、感傷的になってしまいましたが…、ターミネーターの代名詞」である「どこまでも追いかけてくるしつこさ」「受け身なしの取っ組みあい」は今回は健在です!はっきり言ってアクションは「ターミネーター3」以来のスゴさで、見ごたえがあります!

 

考えてみれば、壁や車に衝突したりぶっ壊れることをまったく気にしないカーチェイスが、「ターミネーター」以外にあるでしょうか?とにかく、気持ちいいくらいガンガンやってくれます!

 

この調子で「陸・水・空」とアクションを繰り広げてくれるのでたまりませんよ!

 

また、この映画で新登場する殺人ターミネーター「REV-9」はメキシコ系アメリカ人のガブルエル・ルナが演じていますが、悪玉ターミネーターの伝統である「一見ひ弱そうな細身の人間だが実は強い」をしっかり継承しています!しかも、非情なんですね…悪役はこうでなくっちゃ!新型ターミネーターの新機能も見どころの一つです。

 

また、この「REV-9」と緊張感あふれるガチバトルを繰り広げてくれる未来からやって来た女性戦士グレースとがとてもいい!長身のカナダの女優マッケンジー・デイヴィスが演じていますが、「ターミネーター」のカイル・リースの役回りで、彼女のたどる運命には感動を覚えます…。

 

そして、リンダ・ハミルトン演じるサラ・コナー!シリーズ28年ぶりの満を持しての登場シーンはあまりのカッコよさに震えました!思わず心の中で「待ってました!」と叫んでしまうくらい、このサラ・コナーの登場シーンだけでもこの映画を観る価値があります!

 

この「ターミネーター: ニュー・フェイト」も新三部作として、新しいシリーズを展開していくんでしょうか…。そのためにはこの後も失速せずに順調なヒットを続けることが必要ですが…。

この未来だけは予想がつかないのではないでしょうか?

 

 

 

 

ターミネーター:ニュー・フェイト」を観る人でこの作品を観ていない人はいないでしょうが、予習のために観ておきましょう!

 



 

 

 

 

 

 

鑑賞方法を間違えなければ、どえらい傑作⁈…「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」

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こんにちは、カズノコです。

 

ターミネーター: 新起動/ジェニシス」(2015)ですが、この映画には、ちょっと苦い思い出があるんですね。

 

それは、この映画の公開前に何かのテレビで見たんですが、そこで「ターミネーター」シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロン監督が、

 

最新作は私にとって『ターミネーター』の3作目だ!」(あくまでも「ターミネーター: ニュー・フェイト」(2019)が公開される前の「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」についての話ですよ…)とか、

 

「期待を遥かに超える、予想外のどんでん返し!必見の作品だ!」とか、とにかく絶賛されていました!

 

そうですよね…シリーズの顔ともいえるアーノルド・シュワルツェネッガーが「ターミネーター3」(2003)以来、ほぼ12年ぶりにシリーズに復帰するんですから、私も期待に胸を膨らませてました!

 

「今度はどんな展開を見せるんだろう?」と、公開と同時に映画館に駆け付けました。…観終わって直ぐの気持ちは何とも言えないモヤモヤしたものでした。それは、「あのキャメロン監督の発言ってどんな意味だったんだろう?」という素朴な疑問でした…。

 

しばらくして、キャメロン監督があの公開前の発言はシュワルツェネッガーへの友情から発言しただけであり、本意ではなかった語っているのを知りました…。 見事に、やられました…。

 

映画の出来はどうであれ、観る前と観た後のギャップの差の激しさはシリーズ随一かも知れませんね。

 

2029年、人類を抹殺しようとするスカイネットはサラ・コナーを殺害すべくターミネーターT-800を1984年のロサンゼルスへ送ります。それを阻止する命を受けた兵士カイル・リースはサラを救うため過去へ向かいます…。

 

「あれっ?これって、もしかして、1作目の〝ターミネーター〟へのオマージュか?」と思ったら、ほぼ「そのまんま再現」しているじゃないですか!

 

若かりし頃のT-800(もちろんCGによるシュワルツェネッガーですが…)が、「ターミネーター」の時と全く同じロサンゼルスのグリフィス天文台に素っ裸で登場!

 

「おおっ!若い!懐かしい!」と感傷に浸る間もなく、ここでもう一人の中年のT-800=シュワルツェネッガー「待ちくたびれたぜ!」と、なぜか登場…「えっ?なんで?もう一体ってこと?」と疑問に思うヒマもなく、ターミネーター同士の超重量級の取っ組みあいが始まります…!

 

一方、未来からT-800を追ってタイムトラベルしてきたカイル・リースは、浮浪者の老人から服を奪って警察官から逃げて…って、「これもターミネーターと一緒か⁈」

 

と思った瞬間、警察官の手がするすると巨大なナイフ状に変形し…「おおっ!まさかのT-1000か!」とテンションまたまた上がったところで、絶体絶命のカイルを助けに登場するのが若きサラ・コナー!しかも超美人!あまりの嬉しさに、映画館の椅子からずり落ちそうになりました…!

 

しかし、しかし、テンションがピークだったのはここくらいまでですかね…。映画が進むにつれて下がっていく一方で私のテンションが再び上がることは残念ながらありませんでした…。

 

テンションが下がる要因の一つにやはりキャスティングがあるでしょうね…。

 

まず、サラ・コナーを演じたエミリア・クラークお目々パッチリの超美人で、しかもカワイイ!おまけにグラマー!

   

えっ?…ここまでベタほめで何の問題があるの?と思うでしょう? 

やはり、ターミネーター2」でたくましい戦士となったリンダ・ハミルトンのサラを見てしまっていからでしょうね…。

 

ターミネーターとの死闘を経て、来るべき「審判の日」の備えて鍛錬してきた、リンダのサラと比べるのは酷な話ですが、「入り込み具合」が段違いですよね。

 

エミリア・クラークに罪はないのですが、戦士とはほど遠い体型で健気にアクションをこなす姿を見ていると、求められているものが違かった…」、としか言いようがないですね…。でも、カワイイ…。

 

そして、カイル・リースジェイ・コートニー。これも「ターミネーター」のマイケル・ビーンのカイルのイメージとかけ離れているんですね…。

 

サラを演じたエミリア・クラークとの身長差がありすぎて、バランス悪すぎ状況判断もつかなすぎで全く頼りにならない。サラの足を引っ張ってどうする?」と見ていてイライラします。

 

これは演じたジェイ・コートニーの限界でしょうか、かつて出演していた「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(2013)の時にも感じたんですが、どうしてか安っぽい感じになってしまんですよね…。

 

極めつけはジョン・コナージェイソン・クラーク。うまい役者さんだと思うんですが、これも、前作ターミネーター4(2009)で、クリスチャン・ベールのジョンを見てしまっているだけに、落差は大きかっですね…。(あくまでも個人的な見解です…。)でも、ストーリ―の展開上では適役だった…?

 

でも、映画が進むにつれて私の気持ちが萎えていったのは、何よりストーリーのダメさにあると思うんですね…。

 

 

【以下、「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」のネタばらしがあります!

 

 

 

まぁ、そんなにもったいぶらなくても、予告編でも、ポスターでも盛大にネタばらしをしていますが…ジョン・コナーをターミネーターにしてどうする⁉

 

しかも、シリーズ史上ダントツの最弱!

 

T-3000という品番だけは立派ながら、売りは変身機能くらいの目立った特徴のないターミネーターで、しかも、磁気に弱い…って、お前はキャッシュカードか!

 

ターミネーターとはいえ姿はジョン・コナーでもあるわけで、実の父のカイルと実の母のサラから銃で撃たれまくったり、火だるまにされたり、どういう気持ちやろ…。

 

その度にボロボロになった顔や身体を再生能力で元に戻すくらいで、地味過ぎる…。

 

そもそも、

シュワルツェネッガー扮するT-800を誰がサラのもとへ送ったのかよくわからんし、

 

ジョンが過去に戻ってわざわざ自分の親を殺そうとする意図もよくわからんし、

 

カイルに至ってはタイムトラベルを何度も繰り返すので、未来の出来事がどんどん変わってしまって、過去の自分に未来の自分がメッセージを託したり、

 

全編にわたって、タイムパラドックスも何のその!

 

肝心のT-800も、サラから「おじさん」と呼ばれてカリスマ性ゼロ…。サラとカイルの前で「合体」を連発し、ただのスケベおやじ…。T-3000との戦いのあと、T-1000の付け足しのように復活するのもなぜか寂しい…。ターミネーター2」の雄姿はいまいずこ…。

 

ターミネーター」シリーズを観て感じる悲壮感、未来への漠然たる不安、避けられぬ試練に敢然と立ち向かわなければならない宿命のようなものは、この「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」にはありません。

 

シリーズ史上最も明るいエンディングを迎えてこの映画は終わりますが、最も驚いたのは、この「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」までもが、新三部作の序章として製作されていた事実ですね!幸か不幸か、この路線での続編製作は中止となりました…。

 

ここでふと、気がつきました。この作品は最近流行りの「リブート」作ではなく、ターミネーターパラレルワールドで遊ぶ「パロディー」作品だったんじゃないかと。

 

これって、昔あったドリフの「もしも… 」シリーズなんですね…。「もしも、T-800同士が戦ってみたら…」とか「もしも、ジョンがターミネーターだったら…」とか「もしも、サラが美人だったら…」とか、もう数え上げればキリがないくらいある!そのような視点で見直すと、めちゃ面白いですよ!

 

先のキャメロン監督の発言、「期待を遥かに超える、予想外のどんでん返し!必見の作品だ!」の真意がわかったような気がします…。

 

ジェームズ・キャメロン、あんたはやっぱりスゴいやつや‼︎

 

 

 

 シリーズのあの名言、「戻ってくる (I'll be back.)」は「アイルビーバック」と字幕が出ます…。

 

 

  シリーズのあの名言、「戻ってくる (I'll be back.)」は「アイルビーバック」と吹き替えられています…。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

今でこそ見直す価値のある“正統的な続編”「ターミネーター4」

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こんにちは、カズノコです。

 

ターミネーター4(2009)は、正直なところあまりいい思い出がなかったんですよね…。

 

まず、監督がマックGと聞いて …アメリカのテレビシリーズを映画化したチャーリーズ・エンジェル(2000)、その続編のチャーリーズ・エンジェル フルスロットル」(2003)ともにあんまり興味がなかったですね…。

 

と言うか、過去の「ターミネーター」と、あまりにも世界観が違い過ぎるような気がして…「なんでマックGなの?」という先入観がずっとありました。

 

それでも観に行った映画館でも数えるほどしか客がおらず、自分もシュワルツェネッガーの出てこないターミネーターなんて…」と観ている間、ずっと思ってました。

 

スクリーンでビルくらいの高さのバカでかいターミネーターもどきが暴れ回っている時にはため息が出ました…。こんなのターミネーターじゃねぇ!」

 

唯一盛り上がったのが、映画がもう終わろうかという頃に、顔をシュワルツェネッガーのCGですげ替えられたターミネーターの試作品が登場した時ですね!

 

あのやぶにらみの顔が現れた時、思わず「おーっ!」と言ってしまいましたが、あっと言っている間に火だるまになってエンドスケルトンになってしまいました…。

 

結局のところ、「ターミネーター4」は自分の中では印象が悪くて、キャメロン監督が宣言するずっと前から「ないもの」になっていました。

 

で、「ターミネーター:ニュー・フェイト」が公開されたのを機にもう一度「ターミネーター4」を観直したんですが、これが意外といいんですよ!

 

映画って観るタイミングもすごく影響するんですね…。たぶん「新起動/ジェニシス」と「ニュー・フェイト」と、すっかり「老いたターミネーターシュワルツェネッガーばかり見せられて、ほんの少しですが…シュワルツェネッガーのいないターミネーターでもいいんじゃないか」と寂しいながらも思える心境に達したんじゃないでしょうか…?

 

映画の舞台は2018年…ってもう未来の話なのに昨年のことですよ!「審判の日」を経て、人間とロボットとの戦争が日々続いているんですが、「ターミネーター」で初登場した潜入型ターミネーター「T-800」の開発前夜の話なんですね。

 

「未来からタイムトラベルしてきたターミネーターとの戦い」をストーリーの軸にしてしまうと、どうしても前の3作の焼き直しとなってしまうんですね…。そこで現在の世界をバッサリ切ってしまい、未来の世界を舞台にしたのは結果的によかったのかも‥。

 

観直して気がついたのですが、「ターミネーター4」は意外にも前の3作をきちんとリンクさせた正統的な続編のかたちをとって作られていたんですね。

 

例えば、T-800の前のタイプのターミネーターであるT-600が登場するんですが、ゴム製の人間のマスクをかぶっているんですね。それもダメージを受けてボロボロで、ちょっと「レザーフェイス」風でコワいんですけど。

 

これも、「ターミネーター」で、未来からやってきたカイル・リースが「前のタイプはゴム製だからすぐ見分けがついたんだ」とサラに言っていたのを思い出し、「ははぁ、こいつのこと言っていたんだ」と嬉しくなりました。

 

また、「ターミネーター2」の冒頭で未来のジョン・コナーの顔がチラッと映るんですが、(この大人になったジョン・コナーを演じている俳優さんが、なかなかシブくてカッコいいんですよね!)右目の上から頬にかけて大きな傷があるんです。

 

この傷についても、映画の後半でジョン・コナーがターミネーターと戦うのですが、溶けた鉄を浴びて灼熱化したターミネーターの指で顔を傷つけられるシーンがあるんですね。 「あの傷跡はこの時についたんやな」とまた嬉しくなりました。

 

登場人物も前3作から継承されていますが、キャストは一新されています!ジョン・コナーにクリスチャン・ベール。その妻のケイトにブライス・ダラス・ハワード。そして若き日のカイル・リースにアントン・イェルチン

 

バットマンダークナイト三部作に主演する等、当代きってのイケメンで実力俳優である、クリスチャン・ベールがジョン・コナーを演じることになって、やっと軌道修正してくれたと一安心しましたが、メチャクチャ嬉しかったのは、アントン・イェルチンのカイル・リースですね!

 

同じ年に製作された新シリーズのスター・トレック(2009)にも出演していて、チェコ役もよかったです!ロシアなまりで焦るとちょっとどもったりする、若くて有能なクルーをユニークに演じていました。

 

ターミネーター4」は、マックG監督によると、製作当初から新3部作の序章として企画していたとのこと。

 

そこで気がついたのは、この「ターミネーター4」こそジョンが主役ですが、これからはまだ少年のカイルが精悍な戦士となっていく成長の過程を描いていく物語として展開していくつもりだったのではと…。

 

この作品には、サム・ワーシントン演じるマーカス・ライトという新キャラが出てきます。このマーカスと孤児のカイルと同じく孤児で口のきけない女の子のスターが行動をともにし、ロボットの攻撃を受けたり捕虜になったり困難を乗り越え、ジョンに会いに行くという話が縦軸になっているんです。

 

ですから、カイルはジョンと出会い、後にジョンのために未来にはニ度と戻れないにもかかわらず、過去へと旅立つ決意をするに至るカイルの心の変化、成長の軌跡を描く物語になっていたはずなんですね…。

 

マックG!あんたは偉いターミネーター」でちょこっと語られていた未来世界の人類と機械の戦争を全面的に映画化したら面白い作品になるだろう、くらいで考えてたのとは違かった…。

 

ただ、監督にとって最大の誤算は「ターミネーター4」が思うようなヒットにならなかったこと。シリーズ最高の製作費として約2億ドル(280億円)がかかったにもかかわらず、興行収入は前作「ターミネーター3」を下回る結果となってしまいました。後に製作会社は倒産して版権は競売にかかられ、続編は製作中止となります…。

 

みんないい仕事していたのにね…。

 

マックGは非公式ながら、ジェームズ・キャメロン監督に相談してアドバイスを受けていたそうです。マーカス役にサム・ワーシントンを起用したのも、彼を「アバター」の主役に抜擢したキャメロン監督の推薦によるものとのこと。

 

また、第1作からシリーズ全作で特殊メイクを担当したスタン・ウィンストンは、この作品の撮影中に他界したためターミネーター4」が遺作となりました。「ターミネーター」の素晴らしい造型は彼の最後の作品としてふさわしいですよね。マックG監督はエンドクレジットで本作品をスタン・ウィンストンに捧げています。

 

もちろん、「生きていたければついて来い(Come with me, if you want to live!)」「戻ってくる (I'll be back.)」の「ターミネーター」の名言も、しっかり出てきますよ!

 

今でこそ、新たな気持ちで観て欲しいマックGの挑戦作である「ターミネーター4」。でも、観た後に必ずこの作品の続きが観たくなりますよ…。

 

 

 

 

 当初から3部作を想定して作ってしまったので、ラストで「もうちょっと観たいなぁ…」と思われること必至の作品です。

ターミネーター4 (字幕版)

ターミネーター4 (字幕版)

 

  

 

 この映画で登場するT-800はしゃべりませんので、玄田哲章の吹替はありません…

 

 

 

どうか「なかったこと」にしないでください、キャメロン監督…「ターミネーター3」

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こんにちは、カズノコです。

 

さてターミネーター3(2003)です。後に「この作品からシリーズの迷走が始まった」と言われていますが、個人的にはこの作品が不憫でなりません。

 

現在公開中のターミネーター:ニュー・フェイト」が、傑作と呼ばれる「ターミネーター2」の正統な続編であると称されたため、「ターミネーター3」は「なかったこと」にされてしまうんですね…。

 

今を遡ること20数年前、大ヒットした「ターミネーター2」の続編である「ターミネーター3」製作の動きは早い段階から水面下で進められていました。

 

まずここで、「ターミネーター3」にとって最初の、そして最大の不幸がいきなり訪れます。ターミネーターの生みの親である、ジェームズ・キャメロン監督物語は『ターミネーター2』で完結しており、続編を作るべきではない」として製作から降りたんですね。

 

確かに、キャメロン監督は「ターミネーター2」で自分がやりたいことを全てやり切った感があります。そのため、このターミネーター3」に全く愛着がないんですね…。

 

また、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーもこの時点では「キャメロンが監督しないのなら出演しない」と発言していましたが…

 

1990年代後半以降、かつての人気にもかげりが出るようになり、挽回を図るべくターミネーター3」の出演を決定します。トホホ…。

 

しかし、しかし、「ターミネーター3」に好意的な立場の私でも、シュワちゃん以外の主要キャストのあのキャスティングはないだろう…と思います。

 

まず、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンは早々と不参加を表明。その結果が、シナリオのうえでサラは白血病で死亡ということに…。

 

ジョン・コナーを演じたエドワード・ファーロングドラッグ問題のために降板。その結果、ジョンはニック・スタールが演じることになります。

 

ニック・スタールって誰やねん⁈ …どう考えてもエドワード・ファーロング少年の成長した姿が、あのおっさん臭い猿顔の兄ちゃんにはならんやろ…。

 

ジョンのキャラ設定にも問題あり、ターミネーターの影におびえる無目的な青年って…お前はT-1000との死闘を経て母親とT-800から何を学んだんや!と、ドヤしたくなります。

 

しかも、「ターミネーター3」の映画の中でも、彼が成長を遂げた形跡はほとんどと言っていいほどありません。右往左往するばかりで、ただただ運命を受け入れているだけのように思えるんですよね…。

 

ホントにジョン・コナーはこのまま未来の人類の抵抗軍のリーダーになれるのかな?と言う不安を残してしまうのは致命的かも…。

 

ターミネーター3」のジョン・コナーについては不評のかなりの部分を占めているのではないかと、想像しているのですが、どうでしょうか?

 

そして、未来のジョンの嫁さんになる新キャラのケイト・ブリュースター役がクレア・デインズはっきり言ってコワい!すでにヘタレのジョンを完全に尻に敷いている…。

 

「続編作るのにキャスティングとキャラの設定って大事だな…」とつくづく思いましたね。12年後の「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(2015)で再びその悪夢を味わうことになるのですが…。

 

 あと、自分ではよくわからないのが、ラストシーンの評判の悪さです…。

 

ターミネーター2」で、あれだけ苦労して「審判の日(Judgment Day)」を回避できたのに…とか、

 

ターミネーター3」のキャッチコピーは「恐れるな、未来は変えられる」なのに、これじゃウソやろ…とか、

 

私がアホなのかも知れませんが、「未来からターミネーターが後から後からやって来るのは、やっぱり『審判の日』は回避できずに、せいぜい遅らせたくらいなんじゃないの…。」と思っていました。だから、あのラストシーンも受け入れられたのかも知れませんね。

 

しまった…この映画を応援するつもりで、悪口ばかり書いてしまった…。

 

ということで、この映画の良いところを列挙します。

 

まずは、監督ですね。ジェームズ・キャメロンあっての「ターミネーター」でしたから、抜けた穴を埋めるのは大変だったでしょうが、最終的にジョナサン・モストウに決定しました。

 

ジョナサン・モストウって誰やねん…という声が上がりそうですが、当時の私は密かに驚喜してましたねなぜなら、ジョナサン・モストウの関わる映画、どれもこれも大好きな映画だったんですね!

 

「ブレーキダウン」(1997)で長編映画監督デビュー、デヴィッド・フィンチャー監督の「ゲーム」(1997)の製作総指揮、U-571(2000)の監督と、ジャンルは全くバラバラ!

 

監督として関わらなかった「ゲーム」は別にして、昔ながらの職人的な面白い映画の匂いが漂ってきやしませんか?

 

ジョナサン・モストウ監督は、この大ヒット作の続編を任されるにあたって、よく健闘したと思うんですが、いかがでしょうか?

 

あと、肝心の敵のターミネーターT-X役はモデル出身のクリスタナ・ローケンで、なんと1万人がオーディションを受けたってホントかな?

 

今回のT-Xは女性型のターミネーターですが、「一見ひ弱そうな細身の人間だが実は強い」というキャメロン監督の考えるターミネーター像はしっかり継承してますね。

 

でも、はっきり言ってT-XはT-1000より明らかにバージョンダウンしてませんか?

 

まず、内骨格があるので人間の姿以外に変形できない。不思議なことに後のシリーズの自由に変形できるターミネーターはみな内骨格があるタイプで登場するんですね…。やはり「T-1000最強説」は変わらない?

 

それに、手の武器…あれってコブラのサイコガン」とか「ライダーマンのカセットアーム」とか燃えよドラゴンのハンの義手」に近いものがないですか?ちょっと感覚が古いし、よく故障するし…。

 

ただ、アクションはすごいよ!正直なところ、アクションだけ取れば、「ターミネーター3」は「ターミネーター2」に勝っているかも…。

 

特に、パトカーと救急車、クレーン車に消防車(何か働く車ばっかり)でのカーチェイスというかカーバトルと、トイレでの便器もろ壊しの取っ組みあいのバトルシーンは、重量感のあるアクションでめちゃくちゃ見ごたえあります!

 

どこまでも追いかけてくるしつこさ」「受け身なしの取っ組みあい」ターミネーターの定義」も「ターミネーター3」はしっかりクリアしています!

 

上映時間も「ターミネーター」の108分に並ぶ109分という短さで、コンパクトに鑑賞できる「ターミネーター3」!

 

「結局何も変わらない」とか「蛇足」とか言わずに、だまされたと思って観てください!

 

 

 

 

 

今観直すと、シリーズの後の作品にかなり影響を与えていることがわかりますよ…。

ターミネーター3 [Blu-ray]

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キャメロン監督が好きなことをやりきった会心作…「ターミネーター2」

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こんにちは、カズノコです。

 

ターミネーター2(1991)は、ターミネーターシリーズの中で一番好き!」という人が最も多いのではないでしょうか?

 

第1作の「ターミネーター」(1984)から7年、アーノルド・シュワルツェネッガーと監督のジェームズ・キャメロンを取り巻く環境も大きく変わりました。

 

アーノルド・シュワルツェネッガーはその後、コマンドー(1985)、プレデター(1987)、「ツインズ」(1988)、トータル・リコール(1990)とハリウッドの大作に次々と主演し、トップスターの道を歩みます。日本ではシュワちゃんの愛称で呼ばれだしたのもこの頃でしょうか…。

 

その中でも「ターミネーター2」でのシュワルツェネッガーターミネーター、通称T-800のカッコいいこと!カッコよさでいえば、シュワちゃんが主演した数多くの映画の中でも「ターミネーター2」がダントツだと思います。

 

一方、ジェームズ・キャメロンも「ターミネーター」の予想外のヒットでエイリアン2(1986)の監督に大抜擢され、この映画も大ヒット。そして自身が高校生の時から温めていた構想を超大作「アビス」(1989)として結実させています。

 

ハリウッドで大成功をおさめた二人にとって再びタッグを組んだ「ターミネーター2」は押しも押されもせぬ凱旋作でしたが、すぐに続編の製作といかなかったのは、「ターミネーター」の続編製作の権利が複数のマイナー会社に握られていたため、なかなか進まなかったようです。

 

ところが、80年代から90年代半ばまでのアメリカ映画界を席巻した独立系の製作会社であるカロルコピクチャーズが「トータル・リコール」に続くシュワルツェネッガー主演の超大作として製作の権利を買い集めたことで話はトントン拍子に進みます。

 

でも、「ターミネーター」の続編が作られるというニュースを聞いたとき、「大スターになったシュワルツェネッガーが今さら悪役をやるのかなぁ?」と思っていたら、やっぱりでしたね…。

 

まぁ、鉄人28号も命令される側で悪人の手先にも正義の味方にもなりますし、ゴジラガメラも最初に登場したときは人類の敵で人気が出ると人類の味方になりましたから、不思議でも何でもないですよね…。

 

今回のT-800の使命はサラ・コナーの息子で父親のいないジョン・コナー少年を守ること。ジョンとT-800の関係が、「息子と父親」のような関係になり、ラストに至っては「ターミネーター」とはまた異なる感動を味わせてくれます。まさか、ターミネーターで泣けるとは思いもしませんでしたね…。

 

正直なところ、「ターミネーター2」はプロデューサーも兼ねたジェームズ・キャメロン監督が、お金をかけたくてもかけられなかった1作目の「ターミネーター」の鬱憤を晴らそうと、たっぷりお金をかけて焼き直をした感がないこともないのですが、実はそこのところが「ターミネーター2」のよいところでもあるんですね。つまりは、キャメロン監督が自分のやりたいことをやり切った作品なんですね。

 

例えば、サラ・コナーのキャラクターも大きく変更され、引き続き出演することになったリンダ・ハミルトンは武器の操作に慣れた引き締まったボディーの母性愛の強いタフな女性として生まれ変わりました。これもキャメロン監督の一連の作品、「エイリアン2」や「アビス」等で描かれたヒロイン像と一致します。

 

さらに、1作目の「ターミネーター」ではT-800は当初は「一見ひ弱そうな細身の人間だが実は強い」というキャラクターで設定をしていました。これはまさに「ターミネーター2」に登場する もう一体のターミネーター変形自在の液体金属で作られた最新モデルの T-1000のイメージに他ならないですね。

 

ターミネーター2」が成功をおさめた要因の一つが、T-1000の特殊効果で使われたCGIによる液体金属の描写にあるのは間違いないと思います。あのヌメっとした銀色のヤツです。

 

これはキャメロン監督の前作「アビス」での空中を自在に変形し動き回る海水のCGIの成果でしょう。キャメロン監督は「液状のキャラクター」というアイデアの映像化が成功したことにより、逆にT-1000というキャラクターを思いついたのかもしれませんね。

 

個人的には「どこまでも追いかけてくるしつこさ」「受け身なしの取っ組みあい」があってこそ「ターミネーター」と言えると思っているんですが、T-1000が登場したことにより、両方の条件が揃うことになりました!T-1000を熱演したロバート・パトリックに感謝です。

 

ところで、どうでもいいことなんですが、車で逃げる三人をT-1000がヘリコプターで追いかけるシーンが後半にあります。

 

T-1000はヘリコプターを運転しながらトラックに向かって銃を撃っているんですが、T-1000の脇腹あたりから腕が出ていて操縦桿を握っているのが見えるんです…。

 

最初は「スタントマンかスタッフさんの手が映ってしまってるわ!」と思ったんですが、これはT-1000が腕を一組増やしているんですかね?

 

手をナイフ状に変形はさせても、腕そのものを増やすような描写がなかったので「おーっ!」と思ってしまいました…。

 

シンドバッド黄金の航海」(1973)に登場した6本の腕を持つ破壊神カーリーとシンドバッドとのチャンバラのようなものを、腕を増やしたT-1000とT-800のつかみ合いで見たかったような、見たくないような…。

 

おかしな妄想はともかく、後の映画にも大きな影響を与えた見どころ満載の傑作であることは間違いありません!

 

 

 

 

「T2」のDVD、ブルーレイは版元が次々と変更されているせいか、数えきれないほどの仕様がありますね… 。