ハゲ親父のささやき

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破壊力抜群の「犬神家の一族」はレトロフューチャー?

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こんにちは、カズノコです。

 

 

NHK-BSの「シリーズ横溝正史短編集Ⅱ金田一耕助 踊る!」(…「踊る!」ってなに?…)で犬神家の一族が、2月1日に放送されました!

  

 

このNHK-BSのシリーズは「スーパープレミアム」の金田一耕助シリーズとは別に、金田一耕助の活躍する横溝正史の短編小説を映像化しているシリーズです。

 

 

2016年放送の第1弾に続いて池松壮亮金田一耕助を演じていますが、今回の第2弾は「貸しボート13号」「華やかな野獣」「犬神家の一族が映像化されています。

 

  

…って「犬神家の一族」の原作は長編やないの?

 

 

過去何度も繰り返し映画化、ドラマ化されてきた横溝正史金田一耕助ものではもっとも有名な、あの「犬神家の一族」をなんと30分で、しかも「ほぼ原作通り映像化」という、大胆というか無謀というかすごい試みですよね…。

 

 

で、結果は…「これは破壊力あるわ…」としか言いようのない代物でした…。

 

 

映画やドラマの「犬神家の一族」と言えば、一代で巨万の富を築いた信州財界の巨頭・犬神佐兵衛の莫大な遺産相続にまつわる遺言状を、犬神家の顧問弁護士である古館弁護士が一族全員が揃ったところで開封し読み上げるシーンをまず思い浮かべるのではないでしょうか?

 

 

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 ―角川映画犬神家の一族」(1976)より―

 

 

 

このドラマでは回想シーン等を除き、犬神家の一族全員が揃ったこの和室一部屋で物語は展開していきます。ただし、和室といっても全員が座れるようなだだっ広い部屋ではないため、ほとんどの登場人物はひしめき合って立ったままです。ちょうど演劇の立ち稽古のようなイメージでしょうか…。

 

 

この狭い部屋に、金田一耕助を始め、橘署長、大山神主、猿蔵(たぶん、猿蔵史上最もチャーミング!)らが、入れ代わり立ち代わり、文字通りこの部屋に転がり込んで、この一族に絡んできます。

 

 

登場人物はどれもインパクトがありますが、まず、長女松子、次女竹子、三女梅子のファッションがすごい!従来の和装の黒喪服のイメージは微塵もありません…歪んだバロック調とでもロココ調とでもいうのでしょうか…。

  

 

長女松子は坂井真紀が演じていますが、まるでティム・バートンの映画に出てくるヘレナ・ボナム=カーターのような怪しい雰囲気を醸し出しています…。

  

 

でも、なんといっても「犬神家の一族」と言えば、長女松子の息子である佐清(スケキヨ)が戦争で負った傷を隠すためにかぶっているマスクに尽きると思います。

 

 

映画やドラマで有名なのは、頭からすっぽりかぶるタイプの白いゴムマスクですが、これは角川映画第一作である「犬神家の一族」(1976)で市川崑監督が創り上げたイメージで、この映画以降主流となっています。

 

 

ところが、原作の小説では出征前の佐清と見間違うような端正なマスクと描写されているんですね。そりゃそうですよね…いくら顔から型を取ったとはいえ、あの白塗りのマスクでウロウロされたら不気味すぎますよね…。

 

 

今回のマスクはまさに原作通りの佐清そっくりのマスク!…なのですが、頭からすっぽりかぶっているので、通常の頭よりひとまわりデカいんですね…。

 

 

造形がとてもよくできているだけに違和感ありあり!一見して爆笑必至です!あの佐清!その仮面を半分めくって、見せておやり!」のお約束のシーンもちゃんとあります。 

 

 

また、印象的な見立て殺人のシーンの見せ方も凝っています。特に、佐武が一瞬で生首と菊人形に変わるシーンは意表を突いて素晴らしい!

 

 

ならば、佐清湖面に逆さ立ち、足にょっきりはどうする?と思ったら、なんとタライから足にょっきり!しかも、原作通りパジャマはいてます…。変に原作に忠実なんですよね…。

 

 

金田一耕助も、「スケキヨ」が逆さになって「ヨキケス」、さらに水面より上だけが見えているので「ヨキ(斧)」と、ここの見立てを説明するのはまるで「子供だましの判じ物のような世界なので…と語っており、映像化では省略されることが多いのですが、これもきちんと説明しています!

 

 

金田一耕助が頭を掻きむしればフケが雪のように舞い(そういえば原作では舞台は信州那須の冬でした…)、自らの推理と真相を披露していくシーンはバックに流れる音楽も快調で、たたみかけるようにこの物語のラストへ向かっていきます。

 

 

演出は渋江修平長崎県波佐見町出身のフリーランスの映像ディレクターで、数々のCMや、モーニング娘。らのミュージックビデオ、また、ドラマの監督として活躍しています。インパクトのある映像美と微妙なユーモアブレンドが独自の味わいで、これからが楽しみなクリエイターです!

 

 

以前、NHK-BSで放送された「シリーズ横溝正史短編集」のほか「シリーズ江戸川乱歩短編集」でも、いくつかの作品を演出しています。個人的には、女優の満島ひかり明智小五郎を演じ、柔道家篠原信一と共演した一編「屋根裏の散歩者」が特によかったですね!

 

 

この野心的な「犬神家の一族」では濃いキャラばかりに目を奪われがちですが、忘れてはならないのは、膨大なセリフの応酬の面白さです!

 

 

原作の「犬神家の一族」が初めて雑誌「キング」で連載されたのは1950年(昭和25年)、実に70年も前なんですね…。このドラマではセリフはあえて原作の言い回しのままにし、レトロな味わいを活かしています。でも、役者さんたちは大変だったでしょうね…。 

 

 

 この攻めまくったドラマ「犬神家の一族」を観ただけでは、あの「犬神家の一族」の奥深い世界を味わえるとはとても思えませんが、特筆に値するチャレンジであったことは間違いありません!間違いなく地上波でも再放送されるでしょうから、お見逃しなく!

 

 

 

 

 

 

 

 角川映画第1作であり、日本映画の金字塔。市川崑監督&石坂浩二主演のこの映画が、その後の“金田一耕助ブーム”を作ったのは間違いありません。必見。

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