史上最強の「ジョーカー」は誰なのか?
こんにちは、カズノコです!
ホアキン・フェニックス主演、トッド・フィリップス監督の映画「ジョーカー」(2019)が、日本でも2019年の年間ベスト10をうかがう勢いで大ヒットしています!
「ジョーカー」と言えば、DCコミックス「バットマン」に登場する最強の悪役(スーパーヴィラン)です。そのジョーカーの誕生を独自の解釈で描いた映画が「ジョーカー」ですが、過去にも映画の中でジョーカーは数々の名優が演じてきました。中でも印象に残っている三人のジョーカーを紹介します。
1.ジャック・ニコルソン 「バットマン」(1989)
「バットマ~ン🎵」というテーマ音楽とともにアダム・ウェスト演じるバットマンとロビンがバットカーに乗って洞穴から飛び出してくるシーンや、バットマンやロビンが悪者をパンチするとアメコミ風の擬音が画面に合成されるシーンが、テレビドラマで初めて観た「バットマン」のイメージでした。このドラマではジョーカーをシーザー・ロメロが演じていましたが、おぼろげな記憶しかありません…。
シーザー・ロメロ扮するジョーカー
いずれにしても、チープでコミカルな印象しかなかった「バットマン」をティム・バートン監督が超大作映画として蘇らせた映画「バットマン」(1989)は自分にとっても印象深い作品です。
あの暗い断崖絶壁か何かわからないオブジェの中をカメラが這うように動き回り、最後にカメラが引いていくと、あのバットマンのマークが浮かび上がるタイトルロールは、今だに何度観てもワクワクします!バックに流れるダニー・エルフマンの手による金管楽器がうなる重厚なオーケストラのテーマ曲もかっこいい!もう冒頭からバットマンの世界に引き込まれましたね。
主演のマイケル・キートンは、ティム・バートン監督の前作「ビートルジュース」(1988)で主役のビートルジュースを演じたこともあり、バットマン/ブルース・ウェイン役への抜擢は監督のたっての要望でしたが、バットマンの熱狂的なファンからは猛烈な抗議を受け、映画が公開されるまではかなり物議を醸したようです。
でも、「バットマン」でのマイケル・キートンって、バットマンでもブルース・ウェインでもけっこうカッコよくないですか?よく見るとおっさん顔(公開当時は38歳)なんですが、思ったより悪くないですよね?「なんでこのキャスティングで抗議されたのかな?」と映画を観ている間、ちょっと不思議な気持ちで観てました。
実は、ティム・バートン監督の手がけた映画で私が一番最初に観た映画が「バットマン」でした。ですから、変な先入観なく観ることができたんですね。たぶん「ビートルジュース」を先に観ていたら、マイケル・キートンがバットマンを演じることについて「大丈夫か…?」と思ったに違いないでしょうね…。
それよりも、テレビドラマの「バットマン」と「ビートルジュース」のティム・バートンのイメージで、この映画「バットマン」を観た人は、その「暗さ」に驚いたんではないでしょうか?何よりも出てくるキャラがどいつもこいつも屈折してます。次作の「バットマン リターンズ」(1992)では行き過ぎてしまっていますが、この「バットマン」ではかろうじて「ヒーロー映画」としての体裁を保っています。
この「バットマン」で宿敵ジョーカーに扮したのは、アカデミー賞を3回も受賞した名優ジャック・ニコルソンです。主役のバットマンを演じたマイケル・キートンとともに新たなバットマンの世界を確立したといえます。
ジョーカー役のジャック・ニコルソンに対しては、文句のつけようがないですね…。強いて言えば、プリンスの曲に合わせてダンスしながら美術品を破壊したり、パレードをしながら札をばらまくシーンがあるんですが、踊っている姿は完全に実年齢50歳の太めのオヤジでした…。でも、登場シーンでのオーラは半端ないですね…。バットマンの対極にありながら、カードの裏表のような関係にあるジョーカーを見事に演じていました。
一番好きなシーンはジョーカー誕生のシーンですか…。銃撃戦の末に化学工場の薬品槽に落ちて肌は真っ白、髪の毛は緑色に染まり、顔の神経も全部やられ、不衛生でろくな手術器具もない闇医者の手で、常にひきつった笑顔のジョーカーへと変貌する姿が描かれます。薄汚れた病院で顔の包帯を取り、その顔を鏡で見て高笑いするシーンは素晴らしすぎます…。
紫のスーツに身を包み、陽気と狂気の不安定なバランスを行き来する稀代のヴィランであるジョーカーは、コミックという虚構の世界と現実の世界の間でどこかシラけつつもノリノリで演じたジャック・ニコルソンによって説得力のあるキャラクターとして歴史に名を残したと思います。
あの劇中で印象的な「月夜に悪魔と踊ったことがあるか?」というセリフはニコルソンの創作によるものだそうです。
ジャック・ニコルソンが演じた「バットマン」でのジョーカーほど「はまり役」はないと思われましたが、クリストファー・ノーラン監督の「ダークナイト」(2008)では、ヒース・レジャーが演じたジョーカーが登場しました。
映画の冒頭で「ピエロ」のマスクを被った集団が銀行を襲撃中に「仲間」うちで次々と「仲間」を片付けていき、最後に残った「ピエロ」がマスクを外した時、またしてもピエロのようなメイクのジョーカーの顔が現れたシーンを観た時には、映画館の座席で身震いした覚えがあります。それほどまでにこのシーンで初めて登場したヒースのジョーカーは、めちゃくちゃクールでカッコよかった!
ヒース・レジャー扮するジョーカーの特徴は、何と言ってもその得体の知れない不気味さだと思います。出自も背景も全く不明で、汚れた緑色の髪の毛、大きく裂けた赤い口に自らメイクしたと思われるところどころ剥げた白塗りの顔。しかも、口が渇くのかやたら唇をぺろぺろ舐める独特のしゃべり方…。
ジャック・ニコルソンのジョーカーが洗練された姿に見えるほど大きく異なった姿に、「こいつはただものじゃね~」感がいっぱいでした。でも、映画の後半で警察署から逃げ出したジョーカーがパトカーに箱乗りして夜の風に髪をなびかせている姿は、さわやかさ満点でしたね…。
また、ギャングたちの会合で悪党からの脅しにも屈せず交渉も通ぜず、「えんぴつの手品」を披露するジョーカーも最高です!要は、ジョーカーは悪役が望むような「金」とか「権力」とかには全く興味がないんですね…。
「いい子ぶった一般市民もいざとなったら他人を犠牲にするし、ヒーロー然としたバットマンもマスクで顔を隠した人殺しと変わりない」ことを証明しようと社会の秩序を乱し、狂気を体現していこうとするヒース・レジャーのジョーカーの姿は、ジャック・ニコルソンのジョーカーもかすむほどのインパクトがありました。
ヒースはジョーカーの役作りのためにホテルに引きこもって誰にも会わず、役にのめり込むあまり睡眠時間もろくに取らなかったそうです。ジョーカーという稀代の悪党を演じるために、精神と肉体のバランスを危うくしたのかもしれません。
ヒース・レジャーは撮影終了後の2008年1月22日に処方薬の過剰摂取で死去しました。28歳の若さでした。ヒースはこの「ダークナイト」のジョーカーの演技で第81回アカデミー賞助演男優賞を死後に受賞することになりました。
生前、「ダークナイト」におけるジョーカー役について、ヒースは「これまでで一番楽しい役だった。多分これからの映画人生においてもずっとそうだろう」と語っており、彼のジョーカーにかける熱意は並大抵のものではなかったことがうかがえます。完成した「ダークナイト」を誰よりも楽しみにしていたのは、ほかならぬヒース自身であったに違いないでしょう。
映画が公開される前に亡くなってしまったことで伝説になってしまった嫌いはありますが、ヒース・レジャーが命を賭して壮絶に演じたジョーカーは、「ダークナイト」を傑作たらしめ、その姿はいつまでも観た人の記憶に残るのは間違いないでしょう。
3.ジャレッド・レト 「スーサイド・スクワッド」(2016)
ジャック・ニコルソン、ヒース・レジャーと2人の名優が演じてきたジョーカーとはさらに異なる方向性を目指したのが、デヴィッド・エアー監督「スーサイド・スクワッド」(2016)のジャレッド・レトです。
映画「スーサイド・スクワッド」は、DCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描くアクション作品です。「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー賞を受賞したジャレッド・レトがジョーカー役に挑戦したことで話題を集めました。
ビジュアルのインパクトは過去のジョーカーの中ではナンバーワンでしょう。白塗りの顔に真赤な口紅はジョーカーの基本ですが、目を引くのが顔も全身もタトゥーだらけで、さながらギャングスタ―のようないでたちです。
緑の髪は短髪でオールバック、おまけに口の中には銀歯がずらりと並んでギラギラと光っていて、明らかにやりすぎの匂いがしました。個人的にも、むしろジョーカーらしさを失ってしまったような気がしますね…。
ジャレッド・レトは、このジョーカー役に並々ならぬ意欲を示していたようで、まず三つ編みにしていた地毛の長髪を切り落としただけではなく、長くのばしていた髭も眉毛もすべてそり落としてメイクテストに臨みました。そして、独自のジョーカー像を生み出すため、数カ月にわたり役作りに励みました。
さらに、ジャレッドはいかにもジョーカーらしいプレゼントを共演者に送る凝りようで、ハーレイ・クイン役のマーゴット・ロビーには生きたネズミ、デッドショット役のウィル・スミスには弾丸、さらに全キャストがリハーサルする現場に死んだ豚を送り届ける等、撮影期間中は現場以外でもジョーカーのキャラさながらの奇矯な行動を繰り返していたそうです…。
ところが、これらの行為は役作りの域を超えていると製作者側の反発を招いてしまい、映画では出演シーンが大幅にカットされ、当初は主演級の扱いだったところが出演時間は15分以下になってしまいました…。
確かに映画の中でのジョーカーはスーサイド・スクワッドの一員といった訳でもなく、ハーレイ・クインの恋人役のような中途半端な添え物となってしまってますね…。
さらに、ジャレッド主演のジョーカー単独主役映画とジョーカーとハーレイ・クインのラブストーリーを描く映画も製作中止となりました。
これらのことは、ジャレッドにとっても相当なショックだったようで、後にホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」の製作が決定した際には、製作会社に中止するよう圧力をかけたそうです…。
このジョーカーという役柄には、演じた役者をも狂わせる独特な魅力があるのかも知れませんね…。2020年第92回アカデミー賞主演男優賞のノミネートも有力視されているホアキン・フェニックスはどうでしょうか…?
次作の「バットマン リターンズ」の方が、ティム・バートン節全開です。
バットマンより、ジョーカーのこのジャケットの方が目につきますし、いいですね。
DCコミックスの悪役大集合と言うわりには、悪役が皆「いいひと」なんですよね…。
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