『恐怖の報酬』!オリジナルもリメイクも傑作というのはそうないぞ!
こんにちは、カズノコです!
この間の日曜日、「どれだけ暑いんか…」と家の中でゴロゴロして、ケーブルテレビの番組表をパラパラとめくっていたら、なんと
『恐怖の報酬(1977)[オリジナル完全版]』の文字が…
「まさか…」と思って、もう一度番組表を見直すと、なんと…なんと
『恐怖の報酬(1953)[HDニューマスター版]』
を続けて放送するではありませんか!
なんという美味しい二本立てやねん!
まず、「恐怖の報酬」のあらすじについて簡単に説明すると、
一触即発のニトログリセリンを4人の男たちが2台のトラックに乗り火災現場まで運ぶ
というシンプルな話ではありますが、
当然ながらその道中には一筋縄ではいかぬ様々な困難が待ち受けているという極めて
ありがちな話なのです。
「恐怖の報酬(1953)」(こっちがオリジナルなのでややこしいですが…)はカンヌ国際映画祭でグランプリ、ベルリン国際映画祭で金熊賞を受賞した極めつけの名作で、アルフレッド・ヒッチコックと並ぶサスペンス映画の巨匠と呼ばれる、アンリ=ジョルジュ・クルーゾー監督の代表作!
リメイクされた「恐怖の報酬(1977)」もTVの日曜洋画劇場あたりで観たような記憶がありますが、自分はこのリメイクの方をオリジナルより先に観ているので、印象はこちらの方が断然強い!
ところで、この「恐怖の報酬(1977)」は、日本での劇場公開の際もTVでの放送でもないのに監督に無断で約30分もカットされてしまい、92分の[短縮版]が公開されてしまいました。
その後のTV放送も[短縮版]がオンエアされているので、子どもの頃の私は劇場公開された[短縮版]をほぼノーカットでTVで観たということになります。
勝手に映画をカットされ公開されてしまった不幸な監督は、ウィリアム・フリードキン監督!「フレンチ・コネクション」に「エクソシスト」に「L.A.大捜査線/狼たちの街」…クセのある監督だけに、カットでの公開の背景にはよっぽどの事情があったのでしょうか…。
そんな不幸な歴史を背負い、日本公開から40年を経て、監督の意図通りの121分「恐怖の報酬[オリジナル完全版]」をやっとの思いで観ましたが…
観終わった直後の感想は…「これほんとに完全版か?」という素朴な疑問でした…。
映画が始まると、主演のロイ・シャイダー(この映画の彼は渋すぎる…代表作といってもいいと思う)が、舞台となる南米の地に身を隠すまでの経緯が描かれており、それだけではなく、ともにトラックに乗る3人の男たちについても、それぞれの事情があって南米に逃げてきたのだな、とわかるよう丁寧に描写されています。
これが、いかにもフリードキン好みの70年代の犯罪映画の香りがプンプンしていて、メチャクチャ見ごたえがあるんです!
4人の男の「南米に逃げてくるまで」は[短縮版]では完全にカットされており、この部分を観れただけでも嬉しさがこみあげてきたが、映画が進むにつれ、子どもの頃TVで観て記憶していた印象的なシーンがないことに気がつきました。
それはトラックがニトロを積んで走り出して間もなく、映画では「洗濯板」と呼ばれていたと思いますが、ボコボコの岩が続く道を先発組のトラックは踏み外すことないよう慎重にゆっくりと走り、後発組のトラックは振動を避けるために逆に全速力で突っ走るというシーンだったと思います。
この映画では、ダイナマイトが保管されていた倉庫が雨漏りをしていたため、古いダイナマイトからニトロがしみだしており、ほんの少しのショックでも爆発するくらい傷んでいるんです。
そんなニトロを積んだトラックがガタガタ道を突っ走り、もう少しで追突しそうになるシーンは、見ているこちらが「やめてくれ~」と言いたいほど心臓に悪い。
この映画の後半の、暴風雨の中を今にもバラバラに壊れてしまいそうなボロトラックが、これもまたいかにも切れてしまいそうなボロボロの吊り橋を大きく左右に振られながら渡っていくシーンは、この映画を観た人誰もがハラハラドキドキする名シーンだと思います。
が、スリルにスピードが加わった「洗濯板」は、その「吊り橋」に匹敵するほどの名シーンだと個人的には思います。
「フリードキン監督、よりによってそこカットするか~?」と言いたい!
でも[短縮版]にあったシーンが[オリジナル完全版]にないというのは考えてみるとおかしな話ですよね? もう監督は編集し直すつもりはないんでしょうね…。
クルーゾー監督の「恐怖の報酬」が あまりに傑作だったため、フリードキン監督の「恐怖の報酬」はこれはこれで傑作でありながら、映画史に残る傑作に対する無謀な挑戦と受け止められ、不本意な形での公開をされ、興行的にも失敗し、評論家にも散々な評価を受けてしまったのではないでしょうか。
[短縮版」でも十分に傑作じゃないかと声を大にして言いたい!
それは、フリードキン監督の「恐怖の報酬」の真の主役は「トラック」だと思うからです。
廃棄されていたトラックを徹底的に作り直していくシーンのカッコいいこと!
完成したトラックが逆光の中、ヘッドライトを点灯させるシーンは身震いするほど。
吊り橋を渡っていくトラックはまるで獣か、映画の冒頭で映し出された石像の仮面が生を受けて動き出したかのようで、生き物にしか見えない!
それだけに、この地獄旅の最後に待ち受ける難関として、「ゲリラ」なんぞ人為的なものは出して欲しくなかったな~、最後までボロボロのトラックに乗って切り抜けてくれよう~と思ったのが私の切実なる願い…。
クルーゾー監督の「恐怖の報酬」のクライマックスである「真っ黒の油の沼」でのくだりは、あまりにヒューマニスティックでドラマチックであるため、フリードキン監督は自身の「恐怖の報酬」にはそぐわないと考え、あえてあのような形で地獄旅を終わらせるようとしたのでしょうか?
いずれにしても、私にとってこの二本の「恐怖の報酬」は甲乙つけがたい傑作で、大好きな作品であることはこの先もきっと変わらないでしょう。
世間的には評価としてはやや低いと思われるフリードキン監督の「恐怖の報酬」でさえも、あの「吊り橋」のシーンを観てしまったら、「これはすごい映画を観てしまった…」と誰もが 思うに違いありません。
ぜひ自分の目で確かめてください!
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