今でこそ見直す価値のある“正統的な続編”「ターミネーター4」
こんにちは、カズノコです。
「ターミネーター4」(2009)は、正直なところあまりいい思い出がなかったんですよね…。
まず、監督がマックGと聞いて …アメリカのテレビシリーズを映画化した「チャーリーズ・エンジェル」(2000)、その続編の「チャーリーズ・エンジェル フルスロットル」(2003)ともにあんまり興味がなかったですね…。
と言うか、過去の「ターミネーター」と、あまりにも世界観が違い過ぎるような気がして…「なんでマックGなの?」という先入観がずっとありました。
それでも観に行った映画館でも数えるほどしか客がおらず、自分も「シュワルツェネッガーの出てこないターミネーターなんて…」と観ている間、ずっと思ってました。
スクリーンでビルくらいの高さのバカでかいターミネーターもどきが暴れ回っている時にはため息が出ました…。「こんなのターミネーターじゃねぇ!」
唯一盛り上がったのが、映画がもう終わろうかという頃に、顔をシュワルツェネッガーのCGですげ替えられたターミネーターの試作品が登場した時ですね!
あのやぶにらみの顔が現れた時、思わず「おーっ!」と言ってしまいましたが、あっと言っている間に火だるまになってエンドスケルトンになってしまいました…。
結局のところ、「ターミネーター4」は自分の中では印象が悪くて、キャメロン監督が宣言するずっと前から「ないもの」になっていました。
で、「ターミネーター:ニュー・フェイト」が公開されたのを機にもう一度「ターミネーター4」を観直したんですが、これが意外といいんですよ!
映画って観るタイミングもすごく影響するんですね…。たぶん「新起動/ジェニシス」と「ニュー・フェイト」と、すっかり「老いたターミネーター=シュワルツェネッガー」ばかり見せられて、ほんの少しですが…「シュワルツェネッガーのいないターミネーターでもいいんじゃないか」と寂しいながらも思える心境に達したんじゃないでしょうか…?
映画の舞台は2018年…ってもう未来の話なのに昨年のことですよ!「審判の日」を経て、人間とロボットとの戦争が日々続いているんですが、「ターミネーター」で初登場した潜入型ターミネーター「T-800」の開発前夜の話なんですね。
「未来からタイムトラベルしてきたターミネーターとの戦い」をストーリーの軸にしてしまうと、どうしても前の3作の焼き直しとなってしまうんですね…。そこで現在の世界をバッサリ切ってしまい、未来の世界を舞台にしたのは結果的によかったのかも‥。
観直して気がついたのですが、「ターミネーター4」は意外にも前の3作をきちんとリンクさせた正統的な続編のかたちをとって作られていたんですね。
例えば、T-800の前のタイプのターミネーターであるT-600が登場するんですが、ゴム製の人間のマスクをかぶっているんですね。それもダメージを受けてボロボロで、ちょっと「レザーフェイス」風でコワいんですけど。
これも、「ターミネーター」で、未来からやってきたカイル・リースが「前のタイプはゴム製だからすぐ見分けがついたんだ」とサラに言っていたのを思い出し、「ははぁ、こいつのこと言っていたんだ」と嬉しくなりました。
また、「ターミネーター2」の冒頭で未来のジョン・コナーの顔がチラッと映るんですが、(この大人になったジョン・コナーを演じている俳優さんが、なかなかシブくてカッコいいんですよね!)右目の上から頬にかけて大きな傷があるんです。
この傷についても、映画の後半でジョン・コナーがターミネーターと戦うのですが、溶けた鉄を浴びて灼熱化したターミネーターの指で顔を傷つけられるシーンがあるんですね。 「あの傷跡はこの時についたんやな」とまた嬉しくなりました。
登場人物も前3作から継承されていますが、キャストは一新されています!ジョン・コナーにクリスチャン・ベール。その妻のケイトにブライス・ダラス・ハワード。そして若き日のカイル・リースにアントン・イェルチン!
バットマンのダークナイト三部作に主演する等、当代きってのイケメンで実力俳優である、クリスチャン・ベールがジョン・コナーを演じることになって、やっと軌道修正してくれたと一安心しましたが、メチャクチャ嬉しかったのは、アントン・イェルチンのカイル・リースですね!
同じ年に製作された新シリーズの「スター・トレック」(2009)にも出演していて、チェコフ役もよかったです!ロシアなまりで焦るとちょっとどもったりする、若くて有能なクルーをユニークに演じていました。
「ターミネーター4」は、マックG監督によると、製作当初から新3部作の序章として企画していたとのこと。
そこで気がついたのは、この「ターミネーター4」こそジョンが主役ですが、これからはまだ少年のカイルが精悍な戦士となっていく成長の過程を描いていく物語として展開していくつもりだったのではと…。
この作品には、サム・ワーシントン演じるマーカス・ライトという新キャラが出てきます。このマーカスと孤児のカイルと同じく孤児で口のきけない女の子のスターが行動をともにし、ロボットの攻撃を受けたり捕虜になったり困難を乗り越え、ジョンに会いに行くという話が縦軸になっているんです。
ですから、カイルはジョンと出会い、後にジョンのために未来にはニ度と戻れないにもかかわらず、過去へと旅立つ決意をするに至るカイルの心の変化、成長の軌跡を描く物語になっていたはずなんですね…。
マックG!あんたは偉い!「ターミネーター」でちょこっと語られていた未来世界の人類と機械の戦争を全面的に映画化したら面白い作品になるだろう、くらいで考えてたのとは違かった…。
ただ、監督にとって最大の誤算は「ターミネーター4」が思うようなヒットにならなかったこと。シリーズ最高の製作費として約2億ドル(280億円)がかかったにもかかわらず、興行収入は前作「ターミネーター3」を下回る結果となってしまいました。後に製作会社は倒産して版権は競売にかかられ、続編は製作中止となります…。
みんないい仕事していたのにね…。
マックGは非公式ながら、ジェームズ・キャメロン監督に相談してアドバイスを受けていたそうです。マーカス役にサム・ワーシントンを起用したのも、彼を「アバター」の主役に抜擢したキャメロン監督の推薦によるものとのこと。
また、第1作からシリーズ全作で特殊メイクを担当したスタン・ウィンストンは、この作品の撮影中に他界したため「ターミネーター4」が遺作となりました。「ターミネーター」の素晴らしい造型は彼の最後の作品としてふさわしいですよね。マックG監督はエンドクレジットで本作品をスタン・ウィンストンに捧げています。
もちろん、「生きていたければついて来い(Come with me, if you want to live!)」と「戻ってくる (I'll be back.)」の「ターミネーター」の名言も、しっかり出てきますよ!
今でこそ、新たな気持ちで観て欲しいマックGの挑戦作である「ターミネーター4」。でも、観た後に必ずこの作品の続きが観たくなりますよ…。
当初から3部作を想定して作ってしまったので、ラストで「もうちょっと観たいなぁ…」と思われること必至の作品です。
この映画で登場するT-800はしゃべりませんので、玄田哲章の吹替はありません…