キャメロン監督が好きなことをやりきった会心作…「ターミネーター2」
こんにちは、カズノコです。
「ターミネーター2」(1991)は、「ターミネーターシリーズの中で一番好き!」という人が最も多いのではないでしょうか?
第1作の「ターミネーター」(1984)から7年、アーノルド・シュワルツェネッガーと監督のジェームズ・キャメロンを取り巻く環境も大きく変わりました。
アーノルド・シュワルツェネッガーはその後、「コマンドー」(1985)、「プレデター」(1987)、「ツインズ」(1988)、「トータル・リコール」(1990)とハリウッドの大作に次々と主演し、トップスターの道を歩みます。日本では「シュワちゃん」の愛称で呼ばれだしたのもこの頃でしょうか…。
その中でも「ターミネーター2」でのシュワルツェネッガーのターミネーター、通称T-800のカッコいいこと!カッコよさでいえば、シュワちゃんが主演した数多くの映画の中でも「ターミネーター2」がダントツだと思います。
一方、ジェームズ・キャメロンも「ターミネーター」の予想外のヒットで「エイリアン2」(1986)の監督に大抜擢され、この映画も大ヒット。そして自身が高校生の時から温めていた構想を超大作「アビス」(1989)として結実させています。
ハリウッドで大成功をおさめた二人にとって再びタッグを組んだ「ターミネーター2」は押しも押されもせぬ凱旋作でしたが、すぐに続編の製作といかなかったのは、「ターミネーター」の続編製作の権利が複数のマイナー会社に握られていたため、なかなか進まなかったようです。
ところが、80年代から90年代半ばまでのアメリカ映画界を席巻した独立系の製作会社であるカロルコピクチャーズが「トータル・リコール」に続くシュワルツェネッガー主演の超大作として製作の権利を買い集めたことで話はトントン拍子に進みます。
でも、「ターミネーター」の続編が作られるというニュースを聞いたとき、「大スターになったシュワルツェネッガーが今さら悪役をやるのかなぁ?」と思っていたら、やっぱりでしたね…。
まぁ、鉄人28号も命令される側で悪人の手先にも正義の味方にもなりますし、ゴジラ もガメラも最初に登場したときは人類の敵で人気が出ると人類の味方になりましたから、不思議でも何でもないですよね…。
今回のT-800の使命はサラ・コナーの息子で父親のいないジョン・コナー少年を守ること。ジョンとT-800の関係が、「息子と父親」のような関係になり、ラストに至っては「ターミネーター」とはまた異なる感動を味わせてくれます。まさか、ターミネーターで泣けるとは思いもしませんでしたね…。
正直なところ、「ターミネーター2」はプロデューサーも兼ねたジェームズ・キャメロン監督が、お金をかけたくてもかけられなかった1作目の「ターミネーター」の鬱憤を晴らそうと、たっぷりお金をかけて焼き直しをした感がないこともないのですが、実はそこのところが「ターミネーター2」のよいところでもあるんですね。つまりは、キャメロン監督が自分のやりたいことをやり切った作品なんですね。
例えば、サラ・コナーのキャラクターも大きく変更され、引き続き出演することになったリンダ・ハミルトンは武器の操作に慣れた引き締まったボディーの母性愛の強いタフな女性として生まれ変わりました。これもキャメロン監督の一連の作品、「エイリアン2」や「アビス」等で描かれたヒロイン像と一致します。
さらに、1作目の「ターミネーター」ではT-800は当初は「一見ひ弱そうな細身の人間だが実は強い」というキャラクターで設定をしていました。これはまさに「ターミネーター2」に登場する もう一体のターミネーター、変形自在の液体金属で作られた最新モデルの T-1000のイメージに他ならないですね。
「ターミネーター2」が成功をおさめた要因の一つが、T-1000の特殊効果で使われたCGIによる液体金属の描写にあるのは間違いないと思います。あのヌメっとした銀色のヤツです。
これはキャメロン監督の前作「アビス」での空中を自在に変形し動き回る海水のCGIの成果でしょう。キャメロン監督は「液状のキャラクター」というアイデアの映像化が成功したことにより、逆にT-1000というキャラクターを思いついたのかもしれませんね。
個人的には「どこまでも追いかけてくるしつこさ」と「受け身なしの取っ組みあい」があってこそ「ターミネーター」と言えると思っているんですが、T-1000が登場したことにより、両方の条件が揃うことになりました!T-1000を熱演したロバート・パトリックに感謝です。
ところで、どうでもいいことなんですが、車で逃げる三人をT-1000がヘリコプターで追いかけるシーンが後半にあります。
T-1000はヘリコプターを運転しながらトラックに向かって銃を撃っているんですが、T-1000の脇腹あたりから腕が出ていて操縦桿を握っているのが見えるんです…。
最初は「スタントマンかスタッフさんの手が映ってしまってるわ!」と思ったんですが、これはT-1000が腕を一組増やしているんですかね?
手をナイフ状に変形はさせても、腕そのものを増やすような描写がなかったので「おーっ!」と思ってしまいました…。
「シンドバッド黄金の航海」(1973)に登場した6本の腕を持つ破壊神カーリーとシンドバッドとのチャンバラのようなものを、腕を増やしたT-1000とT-800のつかみ合いで見たかったような、見たくないような…。
おかしな妄想はともかく、後の映画にも大きな影響を与えた見どころ満載の傑作であることは間違いありません!
「T2」のDVD、ブルーレイは版元が次々と変更されているせいか、数えきれないほどの仕様がありますね… 。