どうか「なかったこと」にしないでください、キャメロン監督…「ターミネーター3」
こんにちは、カズノコです。
さて「ターミネーター3」(2003)です。後に「この作品からシリーズの迷走が始まった」と言われていますが、個人的にはこの作品が不憫でなりません。
現在公開中の「ターミネーター:ニュー・フェイト」が、傑作と呼ばれる「ターミネーター2」の正統な続編であると称されたため、「ターミネーター3」は「なかったこと」にされてしまうんですね…。
今を遡ること20数年前、大ヒットした「ターミネーター2」の続編である「ターミネーター3」製作の動きは早い段階から水面下で進められていました。
まずここで、「ターミネーター3」にとって最初の、そして最大の不幸がいきなり訪れます。ターミネーターの生みの親である、ジェームズ・キャメロン監督が「物語は『ターミネーター2』で完結しており、続編を作るべきではない」として製作から降りたんですね。
確かに、キャメロン監督は「ターミネーター2」で自分がやりたいことを全てやり切った感があります。そのため、この「ターミネーター3」に全く愛着がないんですね…。
また、主演のアーノルド・シュワルツェネッガーもこの時点では「キャメロンが監督しないのなら出演しない」と発言していましたが…
1990年代後半以降、かつての人気にもかげりが出るようになり、挽回を図るべく「ターミネーター3」の出演を決定します。トホホ…。
しかし、しかし、「ターミネーター3」に好意的な立場の私でも、シュワちゃん以外の主要キャストのあのキャスティングはないだろう…と思います。
まず、サラ・コナー役のリンダ・ハミルトンは早々と不参加を表明。その結果が、シナリオのうえでサラは白血病で死亡ということに…。
ジョン・コナーを演じたエドワード・ファーロングはドラッグ問題のために降板。その結果、ジョンはニック・スタールが演じることになります。
ニック・スタールって誰やねん⁈ …どう考えてもエドワード・ファーロング少年の成長した姿が、あのおっさん臭い猿顔の兄ちゃんにはならんやろ…。
ジョンのキャラ設定にも問題あり、ターミネーターの影におびえる無目的な青年って…お前はT-1000との死闘を経て母親とT-800から何を学んだんや!と、ドヤしたくなります。
しかも、「ターミネーター3」の映画の中でも、彼が成長を遂げた形跡はほとんどと言っていいほどありません。右往左往するばかりで、ただただ運命を受け入れているだけのように思えるんですよね…。
ホントにジョン・コナーはこのまま未来の人類の抵抗軍のリーダーになれるのかな?と言う不安を残してしまうのは致命的かも…。
「ターミネーター3」のジョン・コナーについては不評のかなりの部分を占めているのではないかと、想像しているのですが、どうでしょうか?
そして、未来のジョンの嫁さんになる新キャラのケイト・ブリュースター役がクレア・デインズ…はっきり言ってコワい!すでにヘタレのジョンを完全に尻に敷いている…。
「続編作るのにキャスティングとキャラの設定って大事だな…」とつくづく思いましたね。12年後の「ターミネーター:新起動/ジェニシス」(2015)で再びその悪夢を味わうことになるのですが…。
あと、自分ではよくわからないのが、ラストシーンの評判の悪さです…。
「ターミネーター2」で、あれだけ苦労して「審判の日(Judgment Day)」を回避できたのに…とか、
「ターミネーター3」のキャッチコピーは「恐れるな、未来は変えられる」なのに、これじゃウソやろ…とか、
私がアホなのかも知れませんが、「未来からターミネーターが後から後からやって来るのは、やっぱり『審判の日』は回避できずに、せいぜい遅らせたくらいなんじゃないの…。」と思っていました。だから、あのラストシーンも受け入れられたのかも知れませんね。
しまった…この映画を応援するつもりで、悪口ばかり書いてしまった…。
ということで、この映画の良いところを列挙します。
まずは、監督ですね。ジェームズ・キャメロンあっての「ターミネーター」でしたから、抜けた穴を埋めるのは大変だったでしょうが、最終的にジョナサン・モストウに決定しました。
ジョナサン・モストウって誰やねん!…という声が上がりそうですが、当時の私は密かに驚喜してましたね!なぜなら、ジョナサン・モストウの関わる映画、どれもこれも大好きな映画だったんですね!
「ブレーキダウン」(1997)で長編映画監督デビュー、デヴィッド・フィンチャー監督の「ゲーム」(1997)の製作総指揮、「U-571」(2000)の監督と、ジャンルは全くバラバラ!
監督として関わらなかった「ゲーム」は別にして、昔ながらの職人的な面白い映画の匂いが漂ってきやしませんか?
ジョナサン・モストウ監督は、この大ヒット作の続編を任されるにあたって、よく健闘したと思うんですが、いかがでしょうか?
あと、肝心の敵のターミネーターのT-X役はモデル出身のクリスタナ・ローケンで、なんと1万人がオーディションを受けたってホントかな?
今回のT-Xは女性型のターミネーターですが、「一見ひ弱そうな細身の人間だが実は強い」というキャメロン監督の考えるターミネーター像はしっかり継承してますね。
でも、はっきり言ってT-XはT-1000より明らかにバージョンダウンしてませんか?
まず、内骨格があるので人間の姿以外に変形できない。不思議なことに後のシリーズの自由に変形できるターミネーターはみな内骨格があるタイプで登場するんですね…。やはり「T-1000最強説」は変わらない?
それに、手の武器…あれって「コブラのサイコガン」とか「ライダーマンのカセットアーム」とか「燃えよドラゴンのハンの義手」に近いものがないですか?ちょっと感覚が古いし、よく故障するし…。
ただ、アクションはすごいよ!正直なところ、アクションだけ取れば、「ターミネーター3」は「ターミネーター2」に勝っているかも…。
特に、パトカーと救急車、クレーン車に消防車(何か働く車ばっかり)でのカーチェイスというかカーバトルと、トイレでの便器もろ壊しの取っ組みあいのバトルシーンは、重量感のあるアクションでめちゃくちゃ見ごたえあります!
「どこまでも追いかけてくるしつこさ」と「受け身なしの取っ組みあい」の「ターミネーターの定義」も「ターミネーター3」はしっかりクリアしています!
上映時間も「ターミネーター」の108分に並ぶ109分という短さで、コンパクトに鑑賞できる「ターミネーター3」!
「結局何も変わらない」とか「蛇足」とか言わずに、だまされたと思って観てください!
今観直すと、シリーズの後の作品にかなり影響を与えていることがわかりますよ…。