鑑賞方法を間違えなければ、どえらい傑作⁈…「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」
こんにちは、カズノコです。
「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」(2015)ですが、この映画には、ちょっと苦い思い出があるんですね。
それは、この映画の公開前に何かのテレビで見たんですが、そこで「ターミネーター」シリーズの生みの親であるジェームズ・キャメロン監督が、
「最新作は私にとって『ターミネーター』の3作目だ!」(あくまでも「ターミネーター: ニュー・フェイト」(2019)が公開される前の「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」についての話ですよ…)とか、
「期待を遥かに超える、予想外のどんでん返し!必見の作品だ!」とか、とにかく絶賛されていました!
そうですよね…シリーズの顔ともいえるアーノルド・シュワルツェネッガーが「ターミネーター3」(2003)以来、ほぼ12年ぶりにシリーズに復帰するんですから、私も期待に胸を膨らませてました!
「今度はどんな展開を見せるんだろう?」と、公開と同時に映画館に駆け付けました。…観終わって直ぐの気持ちは何とも言えないモヤモヤしたものでした。それは、「あのキャメロン監督の発言ってどんな意味だったんだろう?」という素朴な疑問でした…。
しばらくして、キャメロン監督があの公開前の発言はシュワルツェネッガーへの友情から発言しただけであり、本意ではなかったと語っているのを知りました…。 見事に、やられました…。
映画の出来はどうであれ、観る前と観た後のギャップの差の激しさはシリーズ随一かも知れませんね。
2029年、人類を抹殺しようとするスカイネットはサラ・コナーを殺害すべくターミネーターT-800を1984年のロサンゼルスへ送ります。それを阻止する命を受けた兵士カイル・リースはサラを救うため過去へ向かいます…。
「あれっ?これって、もしかして、1作目の〝ターミネーター〟へのオマージュか?」と思ったら、ほぼ「そのまんま再現」しているじゃないですか!
若かりし頃のT-800(もちろんCGによるシュワルツェネッガーですが…)が、「ターミネーター」の時と全く同じロサンゼルスのグリフィス天文台に素っ裸で登場!
「おおっ!若い!懐かしい!」と感傷に浸る間もなく、ここでもう一人の中年のT-800=シュワルツェネッガーが「待ちくたびれたぜ!」と、なぜか登場…「えっ?なんで?もう一体ってこと?」と疑問に思うヒマもなく、ターミネーター同士の超重量級の取っ組みあいが始まります…!
一方、未来からT-800を追ってタイムトラベルしてきたカイル・リースは、浮浪者の老人から服を奪って警察官から逃げて…って、「これもターミネーターと一緒か⁈」
と思った瞬間、警察官の手がするすると巨大なナイフ状に変形し…「おおっ!まさかのT-1000か!」とテンションまたまた上がったところで、絶体絶命のカイルを助けに登場するのが若きサラ・コナー!しかも超美人!あまりの嬉しさに、映画館の椅子からずり落ちそうになりました…!
しかし、しかし、テンションがピークだったのはここくらいまでですかね…。映画が進むにつれて下がっていく一方で私のテンションが再び上がることは残念ながらありませんでした…。
テンションが下がる要因の一つにやはりキャスティングがあるでしょうね…。
まず、サラ・コナーを演じたエミリア・クラーク!お目々パッチリの超美人で、しかもカワイイ!おまけにグラマー!
えっ?…ここまでベタほめで何の問題があるの?と思うでしょう?
やはり、「ターミネーター2」でたくましい戦士となったリンダ・ハミルトンのサラを見てしまっているからでしょうね…。
ターミネーターとの死闘を経て、来るべき「審判の日」の備えて鍛錬してきた、リンダのサラと比べるのは酷な話ですが、「入り込み具合」が段違いですよね。
エミリア・クラークに罪はないのですが、戦士とはほど遠い体型で健気にアクションをこなす姿を見ていると、「求められているものが違かった…」、としか言いようがないですね…。でも、カワイイ…。
そして、カイル・リースにジェイ・コートニー。これも「ターミネーター」のマイケル・ビーンのカイルのイメージとかけ離れているんですね…。
サラを演じたエミリア・クラークとの身長差がありすぎて、バランス悪すぎ。状況判断もつかなすぎで全く頼りにならない。「サラの足を引っ張ってどうする?」と見ていてイライラします。
これは演じたジェイ・コートニーの限界でしょうか、かつて出演していた「ダイ・ハード/ラスト・デイ」(2013)の時にも感じたんですが、どうしてか安っぽい感じになってしまうんですよね…。
極めつけはジョン・コナーのジェイソン・クラーク。うまい役者さんだと思うんですが、これも、前作「ターミネーター4」(2009)で、クリスチャン・ベールのジョンを見てしまっているだけに、落差は大きかったですね…。(あくまでも個人的な見解です…。)でも、ストーリ―の展開上では適役だった…?
でも、映画が進むにつれて私の気持ちが萎えていったのは、何よりストーリーのダメさにあると思うんですね…。
【以下、「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」のネタばらしがあります!】
まぁ、そんなにもったいぶらなくても、予告編でも、ポスターでも盛大にネタばらしをしていますが…ジョン・コナーをターミネーターにしてどうする⁉
しかも、シリーズ史上ダントツの最弱!
T-3000という品番だけは立派ながら、売りは変身機能くらいの目立った特徴のないターミネーターで、しかも、磁気に弱い…って、お前はキャッシュカードか!
ターミネーターとはいえ姿はジョン・コナーでもあるわけで、実の父のカイルと実の母のサラから銃で撃たれまくったり、火だるまにされたり、どういう気持ちやろ…。
その度にボロボロになった顔や身体を再生能力で元に戻すくらいで、地味過ぎる…。
そもそも、
シュワルツェネッガー扮するT-800を誰がサラのもとへ送ったのかよくわからんし、
ジョンが過去に戻ってわざわざ自分の親を殺そうとする意図もよくわからんし、
カイルに至ってはタイムトラベルを何度も繰り返すので、未来の出来事がどんどん変わってしまって、過去の自分に未来の自分がメッセージを託したり、
全編にわたって、タイムパラドックスも何のその!
肝心のT-800も、サラから「おじさん」と呼ばれてカリスマ性ゼロ…。サラとカイルの前で「合体」を連発し、ただのスケベおやじ…。T-3000との戦いのあと、T-1000の付け足しのように復活するのもなぜか寂しい…。「ターミネーター2」の雄姿はいまいずこ…。
「ターミネーター」シリーズを観て感じる悲壮感、未来への漠然たる不安、避けられぬ試練に敢然と立ち向かわなければならない宿命のようなものは、この「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」にはありません。
シリーズ史上最も明るいエンディングを迎えてこの映画は終わりますが、最も驚いたのは、この「ターミネーター: 新起動/ジェニシス」までもが、新三部作の序章として製作されていた事実ですね!幸か不幸か、この路線での続編製作は中止となりました…。
ここでふと、気がつきました。この作品は最近流行りの「リブート」作ではなく、ターミネーターのパラレルワールドで遊ぶ「パロディー」作品だったんじゃないかと。
これって、昔あったドリフの「もしも… 」シリーズなんですね…。「もしも、T-800同士が戦ってみたら…」とか「もしも、ジョンがターミネーターだったら…」とか「もしも、サラが美人だったら…」とか、もう数え上げればキリがないくらいある!そのような視点で見直すと、めちゃ面白いですよ!
先のキャメロン監督の発言、「期待を遥かに超える、予想外のどんでん返し!必見の作品だ!」の真意がわかったような気がします…。
ジェームズ・キャメロン、あんたはやっぱりスゴいやつや‼︎
シリーズのあの名言、「戻ってくる (I'll be back.)」は「アイルビーバック」と字幕が出ます…。
シリーズのあの名言、「戻ってくる (I'll be back.)」は「アイルビーバック」と吹き替えられています…。