いよいよ目が覚めたか?強烈キャストの登場で俄然面白くなりだした「麒麟がくる」
こんにちは、カズノコです。
皆さん、NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」はご覧になっていますか?
私は熱心な大河ファンとは言えませんので、お正月の第1回か第2回を観てその後も続けて観るかを決めるような、極めて不埒な視聴者なんですね。
昨年の「いだてん」は、正月過ぎてもずっと観ていましたが、宮藤官九郎の凝った構成の脚本はともかく、主役の中村勘九郎と阿部サダヲのキャラクターには最後まで馴染めませんでしたね…。
そんなこんなで「麒麟がくる」には期待していたんですよ。NHKもずいぶん早いうちから宣伝してましたね…。大河ドラマでは最も人気のある戦国時代ということ、ただ、大河ドラマではおなじみの織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が主役ではなく、明智光秀を主役に持ってきたところが斬新やな…と思いました。
あの、明智光秀ですよ!明智光秀と言えば「本能寺の変」のイメージが強いですからね。どちらかといえば、織田信長や豊臣秀吉を主人公とした小説や映画やドラマの中では「ヒール(悪役)」で「引き立て役」ですからね…。でも明智光秀を演じるのが人気者の長谷川博己なら話は別でしょう、ビジュアルも華やかで明智光秀のイメージを一新してくれそうです!
「麒麟がくる」も、昨年の「いだてん」と同様、出演俳優の途中交替で放映予定分の回の撮り直しが必要になったことから、放映開始が例年より遅れるというハプニングもありましたが、ドラマ自体はかなり好評価で、視聴率も昨年に比べればずっとよいようですね。
4Kでフル撮影されているためか、画面は鮮明でやたら明るくてきれい!登場人物たちの着ている衣装も色鮮やかで、過去の映画やドラマの中で武士や農民の服装とは一線を画しています。撮影もドローンを使用して、おおっ!と思うような視点からの空撮は面白いですね!
ただ、個人的には明智光秀の人物像が平和主義者であまりにもいい人すぎやしないかと…。従来の明智光秀のイメージを変えようとするあまり、癖がなく物足りない感じが…。
大河ドラマや同じくNHKの朝ドラのような長編ドラマが成功するカギは、物語の主人公であるヒーロー、ヒロインの魅力もさながら、時には主役を食うほどの存在感のあるサブキャラにあると思うんですね。
「麒麟がくる」の今の時代でいえば、斎藤道三や松永久秀のような濃ゆ~い歴史上のキャラクターを、本木雅弘や吉田鋼太郎ら、豪華な俳優陣が演じてくれるので、さぞや面白くてドロドロした腹の探り合いが展開していくかと思えば意外とそうでもない…。そうなんですね、みんな「いい奴」なんですね…今のところは…。
聞くと視聴率も下降気味とのこと…。ダレ気味でモッサリした展開にちょっとした不安や眠気を感じていたところ…第9回「信長の失敗」(2020.3.15放送)が、目が覚めるような素晴らしい回だった!
前回の第8回「同盟のゆくえ」(2020.3.8放送)のラストで、ついに明智光秀にとって運命の人、織田信長が登場したんですが、海から(船に乗って)現れた信長に「浦島太郎かよ!」と突っ込んでしまいました…。「麒麟がくる」の意外性のあるキャストの中でも、織田信長に染谷将太をあてるとは正直ビックリしました。過去に信長を演じてきた役者さんのイメージからするとミスキャストやないかと…?
それはさておき、「信長の失敗」を観ると、いきなり松平広忠(徳川家康の父)が襲撃を受けるシーンから始まるではないですか…。黒澤明監督の「蜘蛛巣城」(1957)のラスト、三船敏郎が無数の矢を浴びるシーンほどではないですが、矢を手に持って体に刺さったように見せて「わぁっ!」と言って倒れるような感じではありません。
ヒューと飛んできた矢が思い切り体に刺さります。(CGかも知れませんが…)さらにとどめでブスッと槍で刺されるのもエグイですね…。広忠を演じた浅利陽介は即退場と思われたら、意外な形で再登場します…出番が短いながらも強烈な印象を残しますが、ちょっとカワイソウですよね…。
「ただの農民のわけない…」といろいろ噂されていた岡村隆史演じる菊丸も、やはりというかただの農民ではなかったわけで、三河の徳川家ゆかりの忍びの者と判明しましたね。ということは、ハットリくんですかね…。
織田家に嫁いできたものの、祝言をすっぽかされた帰蝶(川口春奈好演!)と信長と初対面する場面は、ほっこりしますね。信長の奇妙ないでたちにとまどいながらも、素直に不実を詫び領民思いの信長に興味をもちます。信長が帰蝶に紹介したのっぽの末吉、ちびの平太、やせの太助は、三人とも田舎もん丸出しで人よさげです。
このあとが問題のシーンです。信長の父織田信秀と母土田御前に自身の婚礼の返礼として、「父上、この三郎からもめでたき引き出物がございます!この尾張の繁栄には欠かせぬものにございます!」として、あろうことか広忠の首級をプレゼントします。
帰蝶相手に「世間の噂と違って、この人実はいい人かも…」と思わせておいて、満面の笑みで首級を披露する信長の姿に思いっきりこちらも引きましたね…。
もちろん、これには信秀もドン引き。土田御前と帰蝶を人払いして、「この、うつけものが!」と激しく信長を叱責します。今川義元との来るべき決戦に先手を打ち、てっきり父から褒められると思っていた信長はどうしても納得がいきません…。
要は信長の理屈は通っているのですが、時と場所をわきまえていないちょっとあぶない奴なんですね。このあくまでもピュアな「うつけもの」である信長のキャラ設定はありそうでなかったものですよね。奇矯なふるまいが目立ち、先進的な考え方についていけないため、周囲から「うつけもの」と呼ばれたのとは全く違います。
染谷将太が演じる信長が画面に登場すると何をするか何を言い出すか見当がつかないので異様な緊張感が漂います。外面は怖いが内面は優しい、というのが信長のイメージでしたが、外面はニコニコと穏やかで優しいのに内面はゾッとするほどまじコワイんですね…。
で、思い出したのが、先に帰蝶に紹介した信長のお友だちのあの三人。そういえば、松平広忠を襲撃した刺客も三人、ちびの平太は竹槍の名人って…ああ、そうだったんか…こわ…。
この回は、なかなか盛り沢山で、後の徳川家康となる人質の身の竹千代君。子役の岩田琉聖君が可愛らしく演じていますが、竹千代も相当深い心の闇を抱えていますね…。織田信長の弟である信勝に将棋を指してもらっていたかと思ったら、「つまらぬ将棋のお相手をし…わざと負けておるのじゃ」と、接待将棋を暴露。6歳の子どもとは思えない大人の発言。
6歳児になめられている信勝も信勝ですが、そんな竹千代が織田家でただ一人一目置いているのが信長であり、その信長が何の迷いもなく実の父を殺していることを竹千代はまだこの時点では知らんのですね…。
続く第10回「ひとりぼっちの若君」(2020.3.22)では、将棋を指しながらの竹千代と信長の緊迫感あふれるやり取りが繰り広げられます。そう言えば、この回の題名「ひとりぼっちの若君」は竹千代、信長のどちらとも取れるんですね。やはり、この二人ただものではない。
将棋盤をはさんで真剣を構えてにらみ合っているようなひんやりとした凄みがあります。なお恐ろしいのは、この時の竹千代が6歳、信長は15歳ですから…。私はこの勝負、サイコパス信長に対して、人質の身というハンデがありながらTPOをわきまえ、子どもとは思えぬ老獪さえ感じる竹千代の方が勝っていたような気がしましたが…。
また、この二人の静かな戦いを天井裏の穴からじっと見ている菊丸がむっちゃカッコいい!顔つきまで精悍な風貌に変わって驚きます!
光秀の方も、帰蝶、駒(門脇麦)、煕子(木村文乃)と三人の女性たちから好意を寄せられて結構なモテぶりですが、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに言われないようにしましょうね。岡村も出てますしね…。
NHK大河ドラマの音楽では、第42作「武蔵 MUSASHI」のエンニオ・モリコーネに続き、外国人作曲家としては二人目のジョン・グラムが手掛けています。エンニオ・モリコーネは大好きなんですが、あまりの違和感にがっかりした覚えがあります。ジョン・グラムについて全く知りませんでしたが、今回は勇壮なテーマ曲はもちろん、劇伴ともに意外といいと思うんですが…。