令和版ドラマ「柳生一族の陰謀」でも、やっぱり烏丸少将はスゴかった!
こんにちは、カズノコです!
NHK-BS「スーパープレミアム」で、吉田鋼太郎主演のテレビドラマ「柳生一族の陰謀」が、4月11日(土)に放送されました!
1978年に公開された東映の時代劇「柳生一族の陰謀」が、歴史がひっくり返るストーリー展開と登場人物の濃すぎるキャラに圧倒され、あまりにも自分の中でインパクトを持った傑作となっていたので、観るまでは一抹の不安があったのですが…。ドラマを観た結果は…大健闘だったんじゃないでしょうか!
映画「柳生一族の陰謀」は当時、斜陽となっていた時代劇の復活をかけて、東映が総力を挙げてオールスターキャストで製作した時代劇超大作で、当然のことながら大ヒットしました!
徳川幕府三代将軍位を巡る後継争いの中、暗闘する将軍家剣術指南役・柳生宗矩を中心とした陰謀と裏切りが錯綜する、まさに時代劇版「仁義なき戦い」でした。今回のドラマも、映画の野上龍雄・松田寛夫・深作欣二の共作によるオリジナル脚本を原案に、大石哲也が脚本を書いています。
2時間を超える映画を1時間30分のテレビドラマにリメイクするので、どうしてもスケールダウンは否めないと思いきや、ポイントを押さえた演出でスピーディな展開で、しかも、あちこちに映画版「柳生一族の陰謀」へのオマージュがあるのが嬉しいですね…。ドラマのナレーションを担当しているのが、映画版で徳川家光の弟、忠長を演じた西郷輝彦だし…。
もちろん、「これより先、親に会えば親を殺し、仏に会えば仏を殺す…」「姿は隠しても獣は臭いでわかりまするぞ」「夢だ、夢だ、夢だ夢だ夢だ〜、夢でござ〜る!」等の印象的な名セリフもしっかりあります! また、映画版とは大きく役割が異なるキャストもあり、映画版との違いと意外性を楽しむことができます!
今回のドラマで主役の柳生但馬守宗矩を演じた吉田鋼太郎も、シェイクスピアやギリシア悲劇などの海外の古典作品から蜷川幸雄作品までこなせる舞台俳優としての本領を発揮、映画版の萬屋錦之介とはまた違った存在感を漂わせていました。
歌舞伎出身の萬屋錦之介の場合、他のキャストから浮きまくるほどのセリフ回しと過剰に作りこんだ演技を最後まで押し通しました。この時代がかったセリフ回しが、あのラストシーンのセリフに生かされていくんですね…。
舞台出身の吉田鋼太郎は、始めは剣術指南役として冷静沈着で威厳や風格さえ見せていたましたが、物語が進むにつれ、冷徹で傲慢な一面が現れ、最後には冷血で狂気の極みに至ります。これら宗矩の様々な顔を使い分け、圧巻な演技を見せた吉田鋼太郎、あまりにも有名なラストシーンも素晴らしかったですね。
そして、ドラマ版の柳生十兵衛を演じたのは溝端淳平。映画版で十兵衛を演じて、当たり役となった千葉真一と比べるとかなりあっさり目かな…と最初のうちは思っていましたが、ドラマ終盤の宗矩の謀略による根来衆皆殺しに接し、十兵衛は復讐の鬼へと変わります。修羅と化した十兵衛と宗矩との最後の対決は凄みがありました!ある意味、映画版よりエグイかも…。
ところで、根来衆を弔う燃えさかる炎の前に立つ十兵衛の姿は、ちょっと山田風太郎の「魔界転生」でのラストの十兵衛の姿を思い起こしましたね…。同じキャスト、スタッフでドラマ化されないかな…と期待したいところです!
あと「柳生一族の陰謀」では忘れようにも忘れられないあの役もバッチリ登場しましたね…。そうです、「おじゃる言葉」を操る白塗りのなよっとした公家でありながら、めちゃくちゃ腕の立つ剣豪というあり得ない設定の烏丸少将文麿です!
映画版では、ニヒルな敵役を演じさせれば並ぶ者のない、実録路線の東映ヤクザ映画の常連俳優である成田三樹夫が演じました。この烏丸少将は濃ゆ~いキャラ満載の「柳生一族の陰謀」の中でも一、二を争う強烈なインパクトがありました。
今回のドラマで烏丸少将文麿を演じたのは、波岡一喜。波岡一喜といえば、NHKのドラマにもよく出演していますが、テレビドラマ初主演作の「ライオン丸G」ではライオン丸を演じていますから、身体能力は高い!
でもって、このドラマのスタッフはよくわかってらっしゃる…烏丸少将の見せ場がめちゃ多い!
柳生一族と合流した根来衆の襲撃を受けるシーンでも、剣の達人である烏丸少将は軽々と敵を斬っていきます。根来衆のリーダーである左源太の背中を続けざまに射る弓の腕前もすごい!後に関西テレビ制作の連続ドラマ化された「柳生一族の陰謀」での「烏丸少将は弓の名手でもある」設定をしっかり踏まえていますね…。
橋を爆破して討死にした左源太を尻目に、「剣呑、剣呑、汚れるとこやった。」と、何食わぬ顔をして盾にした護衛の武士をよけて立ち上がるところなんか、敵役として最高じゃないですか!
映画版では、烏丸少将と柳生十兵衛の一戦は、意外とあっけなく終わってしまうんですよね…。しかも、十兵衛の作戦勝ちというか、「ちょっとそんなのありか…」という後味の悪い終わり方…。
今回のドラマでは、十兵衛と烏丸少将はしっかり正々堂々と勝負して見応えがあります!決着はややあいまいに終わりましたが…。天国の成田三樹夫様も喜んでいるのではないでしょうか…。
あと、柳生一族と新陰流の正統を争う小笠原玄信斎に榎木孝明など、シブいキャストもよいですが、やはり時代なのでしょうか?映画に比べドラマの方が女性キャストの活躍が素晴らしい!
柳生茜役の飯豊まりえ、阿国役の森田望智、根来衆のコウ役の香寿たつき、同じくマン役の北香那らはキレッキレの立ち回りと殺陣を見せてくれます!
でも圧巻は、家光の生母於江与を演じた斉藤由貴と乳母御福を演じた美村里江の恐るべき女のバトルでしょうね…。ペシッ!と扇子で頭を叩いたりして最高にコワい!
いずれにしろ、予想以上に見応えのあった「柳生一族の陰謀」…面白い脚本と気鋭のキャストとスタッフで、いくらでも新しい時代劇が作れるんだなぁと感心した次第です!
「昭和」という時代を強く感じさせる時代劇…時代劇としては「異端」だったのかも知れませんが、徹底的に娯楽に徹した面白さは保証付きです!
細かいことは気にしない!オールスターキャストの大型娯楽時代劇「柳生一族の陰謀」
こんにちは、カズノコです!
深作欣二監督の名作時代劇「柳生一族の陰謀」が、NHK-BS「スーパープレミアム」でテレビドラマとして4月11日(土)よみがえります!
1978年に公開された映画「柳生一族の陰謀」は、東映が12年ぶりに製作した、映画・演劇・テレビ各界のオールスターを集めてキャスティングした時代劇の復活を賭けた大作でした。
同年に公開された「野性の証明」「さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち」に続き、邦画配給収入第3位(邦画・洋画全体でも7位)の大ヒットを記録しています。
1978年というと、あの「スター・ウォーズ」や「未知との遭遇」が公開された年ですからね…。当時、中坊だった私が時代劇に興味を示すわけもなく、「柳生一族の陰謀」も後年テレビで観て、改めてその面白さにぶっ飛んだ記憶があります。
1950年代、東映は、勧善懲悪をテーマにした明朗快活な時代劇で映画界に一大ブームを巻き起こします。ピークには2日に1本のメチャクチャなペースで映画が量産されましたが、1960年代に入ると時代劇は下火になり、末期には「十三人の刺客」(1963)など集団抗争時代劇を生み出すもののブームは終焉を迎えます。
代わって「人生劇場 飛車角」(1963)のヒットをきっかけに、勧善懲悪の時代劇の世界を明治から昭和初期のヤクザの世界に置き換えた、時代劇の変種ともいえる仁侠映画を量産し、ヤクザ映画のブームを作ります。1973年の「仁義なき戦いシリーズ」でヤクザ映画も戦後の実録路線に切り替えますが、その「仁義なき戦いシリーズ」を監督したのが深作欣二でした。
深作欣二監督の初の時代劇となった「柳生一族の陰謀」は、まさに「仁義なき戦い」のような陰謀と裏切りが錯綜する集団抗争時代劇でしたね。徳川幕府の三代将軍位を巡る争奪戦を基に、実在した歴史上の人物と史実をフィクションで織り交ぜたスケールの大きい脚本は野上龍雄・松田寛夫・深作欣二の共同脚本です。
「柳生一族の陰謀」の面白さは、実録秘話というか荒唐無稽ともいえる脚本にあると思うんですが、キャスティングも秀逸でしたね。
まず、柳生十兵衛を演じた千葉真一。深作欣二監督は、かつての東映時代劇の主流であったチャンバラ映画ではなく、黒澤明監督のリアリズム時代劇とも違う、もっとテンポのあるアクション時代劇を作りたいとかねてから思っており、その実現のためには柳生十兵衛役には千葉真一しかいないと決めていました。
千葉真一にとっても柳生十兵衛は当たり役となり、その後、テレビや映画で何度も十兵衛を演じています。中でも、同じく深作欣二監督の映画「魔界転生」(1981)での柳生十兵衛もワイルドでカッコよかったですね。
もう一人の主人公である柳生但馬守宗矩を演じたのは萬屋錦之介。東映時代劇では「宮本武蔵」(1961)に代表される、絶対的なヒーローばかりを演じてきた黄金期のスターであり、東映としては時代劇を復活させるためにも萬屋錦之介の出演を切望していたといいます。
ただ、「柳生一族の陰謀」での柳生但馬守宗矩はダークヒーローであり、このダークヒーローを嬉々として演じた萬屋錦之介は、この映画の中で現代劇を中心とした他のキャストからも完全に浮きまくっていましたよね…。
まず、歌舞伎さながらの時代がかった所作とセリフ回し!当初この映画を観た時は、深作欣二監督があえてこのような演出を試みたと思ったんですが、事実は全くの逆で、深作が過剰な大見得芝居をやめるよう萬屋に伝えたところ「他の方は知りませんが、私はこれでやらせていただきます」と返答されたそうです…。
ただ、この萬屋錦之介の過剰なまでに作り込んだ演技があってからこそ、この映画のラスト、あまりにも有名で当時の流行語にもなった「夢だ、夢だ、夢だ夢だ夢だ〜、夢でござ〜る!」のセリフが生きてきたんですね!萬屋の狂気に満ちた顔にも注目です!
しかし、何と言おうとこの映画で一番カッコいいのは、公家で剣豪の烏丸少将文麿を演じた成田三樹夫です!成田三樹夫と言えば、実録路線の東映ヤクザ映画の常連俳優ですが、この烏丸少将文麿は濃ゆ~いキャラ満載の「柳生一族の陰謀」の中でも、ひときわ異彩を放っており、強烈なインパクトがありました。
白塗りの顔に「オホホホホ…」と甲高く笑い、「~でおじゃる」とマロ言葉を使うなよなよした公家にしか見えないのに、刀を抜くと一瞬で顔つきまで変わってしまい、優雅に舞を舞うように相手を斬ってしまう、とてつもない剣豪なんですね…。
また、徳川幕府に対し、いつかは王政復古を狙おうとしている朝廷側随一の切れ者であるところもカッコいい!柳生十兵衛率いる根来忍者から奇襲をかけられた時も、十兵衛の弟を見つけると「柳生の子息よな。烏丸少将文麿お相手いたしまするぞ!」 と剣を抜き、いとも簡単にバッサリと斬ってしまう…。次兄の仇と妹の志穂美悦子が向かってきたときも「マロはおなごを斬る刀は持たぬ!」と余裕を見せる…。
でも、肝心かなめの十兵衛との一戦は、意外とあっけなく終わってしまうんですよね…「姿は隠しても獣は臭いでわかりまするぞ」なんて名セリフもあるのに…。柳生十兵衛の引き立て役としてはつらいところですが、後に関西テレビ制作の連続ドラマ化された「柳生一族の陰謀」でも同じ成田三樹夫が烏丸少将役を演じているところを見ると、皆さん強烈な印象を受けたんでしょうね…。
異色キャラ満載の壮大なホラ話である「柳生一族の陰謀」…今回、NHKがどうドラマ化するのかが楽しみです!
「我につくも 敵にまわるも 心して決めい!」という惹句がいいですね…。この「柳生一族の陰謀」の惹句を作ったのは、東映映画の宣伝コピーを書いていた伝説の「惹句師」関根忠郎です。
シリーズのフィナーレ「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」は誰の物語だったのか?
こんにちは、カズノコです!
「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」(2019)で、1977年の第1作の全米公開から42年、「スター・ウォーズ」シリーズがついに完結!と銘打っていますが、本作を観た人はそれぞれどんな思いをこの映画に対して抱いたのでしょうか?
ところで、映画館では「ターミネーター:ニュー・フェイト」(2019)を観た時にも感じたんですが、シリーズを1作目から律儀に観続けているようなオヤジが目立ち、あまり若い人が見当たらない…。「スター・ウォーズ」も、もう若い人が観に行く映画ではなくなってしまったのでしょうか?
定説では、前作「最後のジェダイ」(2017)でライアン・ジョンソン監督が「スター・ウォーズ」の既定路線をメチャクチャにしてしまったことにネットが大炎上…真っ青になったディズニーが前々作「フォースの覚醒」(2015)を監督したJ・J・エイブラムスに命じて軌道修正を図ったのが「スカイウォーカーの夜明け」ということですが…..。
正確には、当初「スカイウォーカーの夜明け」の監督には「ジュラシック・ワールド」(2015)で有名なコリン・トレヴォロウが就任していました。ただ、その後トレヴォロウの書いた脚本はことごとくボツになり、結局、ディズニーにクビを言い渡されてしまいます…。
そこで、またまたJ・J・エイブラムスが再登板となったわけですが、もう既にダメダメ感は出ていますよね…。ウォルト・ディズニー・ピクチャーズは初めから三部作で製作を決定しておきながら、方向性が全然定まってないのですから。トレヴォロウの脚本が次々とダメ出しされたのが物語っています。
J・J・エイブラムスは、間違いなく「スター・ウォーズ」が大好きで、大ファンなんでしょう。「フォースの覚醒」にはファンが喜びそうな過去の「スター・ウォーズ」シリーズで登場した懐かしいキャラやモノをこれでもかとぶち込んで、映画は大ヒットしました。
ライアン・ジョンソンも、もちろん「スター・ウォーズ」が嫌いなわけはないんでしょうが、自分の思う新しい「スター・ウォーズ」を盛り込んだばかりに、大批判を受けることになりました。
J・J・エイブラムスは、ストーリーを破綻なく着地しなければならないという最大の使命を果たすために…結果として、自らが監督した「フォースの覚醒」路線を再び選択することになりました。
要は「スター・ウォーズ」シリーズお決まりの展開です。少数の味方が協力者を求めて辺境の星を旅する、協力を得た少数精鋭が大勢の敵が待ち受ける巨大要塞に乗り込む、最後に光と闇の宿命の対決がある…と、「スカイウォーカーの夜明け」はストーリーもビジュアルも、まさしく「王道」をいっています。
これを、どこかで見たようなシーンばかり続く、マンネリでつまらないワンパターンの作品と言ってはいけません。これがまさしく「スター・ウォーズ」なのですから…。「あぁ、やっぱりそうきたか」とニヤッとするのが、正しい見方なのです。
【注意!このあと「スター・ウォーズ/スカイウォーカーの夜明け」に関する重大なネタバレがあります!】
何よりも、続三部作では目玉としていたレイが何者か?ということですが、明かされてみれば、こんなのあり?というか、さすがにこれはやらんやろう…と思っていた、まさかのパルパティーンの孫!
まぁ、これで何でレイがあんなに強力なフォースを持っているのか、そして、フォースの暗黒面を度々垣間見るのか説明はつきますが、これをやってしまうと「スター・ウォーズ」シリーズそのものが、パルパティーン自身の一代記となってしまわないか?と、余計な心配をしてしまいます。なにせ、エピソード1「ファントム・メナス」(1999)から最終作である本作まで登場してしまいますからね…。
光(ライト・サイド)のレイに対する闇(ダーク・サイド)のカイロ・レンも頑張ったと思いますよ。カイロ・レンこそ本当は正統なスカイウォーカー家の末裔なんですよね。同じようにダーク・サイドに堕ちたアナキン・スカイウォーカー=ダース・ベイダーと比べてしまうのはちょっと酷ですが…。
「フォースの覚醒」ではヘタレの中二病キャラだったカイロ・レンが、荒ぶる波浪の砕け散る中、あの「ジェダイの帰還」で爆破され墜落したデス・スターの残骸上で、レイとライトセーバーで闘うシーンは、この映画一番の見どころでしょう。
最後はどう決着をつけようかということで、フォースが万能になりすぎてしまいました…。フォースさえあれば、巨大な宇宙戦艦を墜落させることもできるし、死んだ者を生き返らせることもできるって、ちょっとやりすぎてしまいましたよね…。
ただ、レイと行動をともにするフィンもポーも、扱いが中途半端でしたね…。特に残念なのはフィン!もうちょっとマシな活躍させろよ!キャプテン・ファズマとの対決もあっけなく終わるし、なんか思わせぶりな発言だけして「おっ?」と思ったら映画終わってしまうし…。結局のところ、新キャラがイマイチで旧キャラに頼ってしまうのは、シリーズものの宿命なんでしょうかね…。
シリーズを締めくくる「スカイウォーカーの夜明け」も、ラストはやはりそこに戻ってきましたか…のタトゥイーンでした。かつて、ルークが未知なる世界へ思いを馳せて眺めていた二つの夕陽を今回はレイとBB-8が眺めています。この感傷的な瞬間を味わえてよかった…と思いましたよね…。
懐かしの「スター・ウォーズ/新たなる希望」(1977)でのタトゥイーンの夕陽
「スカイウォーカーの夜明け」は続三部作の最終作であるとともに、シリーズ9作品のフィナーレでもあります。いろいろと不満もありましたが、このラストシーンとジョン・ウィリアムスの音楽で、すべてなかったことにして「ありがとう」という気持ちになってしまった私は、やはり甘ちゃんなんでしょうかね…。
寄り道し過ぎで、迷子になってしまったのか…「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」
こんにちは、カズノコです!
「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017)が、「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015)の続編として公開されたとき、つくづく思ったのが、世間の評判と自分の認識とのズレですね…。
この「最後のジェダイ」に対する批判と不評の嵐に驚いた覚えがあります
ただ、「スター・ウォーズ」の生みの親であるジョージ・ルーカスは「フォースの覚醒」よりも「最後のジェダイ」を高く評価したようですね。ルーカスは、「スター・ウォーズ」に「さらなる新しさが盛り込めているか」を評価の対象としますので、その点で過去の設定を無視するような展開はコアなファンからは総スカンを食っても、ルーカスは良しとしたのでしょうね。
監督と脚本は、ライアン・ジョンソン。前作の監督と脚本を務めたJ・J・エイブラムスは製作総指揮へと代わっています。監督がライアン・ジョンソンと聞いて、最初は全くピンとこなかったんですが、ジョセフ・ゴードン=レヴィットとブルース・ウィルスが出演したSF映画「LOOPER/ルーパー」(2012)の監督と聞いて、「ずいぶん思い切って抜擢したもんだ!」とびっくりするとともに、かすかな期待と不安を覚えたものでした…。カラーが違うような気がしたからです。
ライアン・ジョンソン監督にとって「LOOPER/ルーパー」は脚本も彼自身が書いていますが、彼にとって出世作ですよね。「タイムトラベルもの」や「タイムループもの」は一般的には脚本が練られていないといけませんが、「LOOPER/ルーパー」はややこしい設定をよくものにしていて、非常に面白く観た覚えがあります。
ついでに、長編映画監督デビュー作となる「BRICK ブリック」(2005)も観ましたが、ひとことで言いあらわすなら「学園もの+ハードボイルド」という何とも形容しがたい映画でした。この映画の脚本も本人が書いていますが、「LOOPER/ルーパー」と同じように「先の読めない」面白さで、ジャンルにとらわれないながらも自分の個性をはっきりと映画に反映させるタイプだなと思いました。
「LOOPER/ルーパー」「BRICK ブリック」いずれにしても、過去に撮ってきた映画が「スター・ウォーズ」とは水と油のような異なるテイストの映画でしたので、ライアン・ジョンソンなら、間違いなく「スター・ウォーズ」に新しい血を注ぎ込んでくれる、とでも思ったのでしょうか?
率直な感想としては…やっぱりダメダメでしょうか…。自分で脚本を手掛ける監督にしては肝心の脚本がいかがなものかと…?
「フォースの覚醒」で新しく登場した、レイ、フィン、ポーの三人のキャラクターは一人一人さらに三人の関係もさらに膨らみを持たせてほしかったですね。レイは出自にこだわりすぎ!引っぱりすぎて収拾がつかなくなって、さらに次作へ持ち越し…って、そんなに時間かけて引っぱる価値がある…?
フィンもよくわからないやつですよね…。「フォースの覚醒」ではストームトルーパーあがりにもかかわらず、まさかのライトセーバーを使ってのカイロ・レンとの一戦に、一部ではフィンが「シスの復讐」で命を落としたジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥの隠し子説もありましたが…。それはともかく、レジスタンスの女性整備士のローズと行動をともにして(この暗号解読者を探すくだりは長すぎる…。何のために出てきたんだ、ベニチオ・デル・トロ…。)何となくいい仲になったりして、何やってんだ!と言いたい。
めぢから違いすぎ…ホントに親子?…それとも孫?
ポーもひどいですよね…。冒頭のファースト・オーダーとの艦隊との戦いで、命令無視の単独行動で味方のレジスタンスに大損害を与えています。まあ、レジスタンスの爆撃機も、まるで火薬庫に羽を生やして飛ばしているような信じられない代物ですが…。ポーは降格で済みましたが、軍事裁判にかけられたら死刑になっても不思議ではない大失態じゃないかと思いましたね…。
旧シリーズからのファンは、ルークやレイア、ハン・ソロの扱いがひどいとの話ですが、それも否定できないですよね…。ストーリーの構成上から新しい主役に花道を譲らなければならないとは思うんですが、それにしても、敵の攻撃を受けて船外の宇宙空間に投げ出されてしまったレイアが、フォースの力でもって空間を飛んで味方の宇宙船へと舞い戻ってくる姿には、思わず映画館の椅子からずり落ちてしまいました…。
まあ、いろいろ不満があっても「よかった!」と思える瞬間はどんな映画にもあるもので、「最後のジェダイ」では、ファースト・オーダーの最高指導者スノークを、カイロ・レンが裏切ってライトセーバーで真っ二つに切断してしまう瞬間ですね。
スノークが殺された後、護衛していた8人の親衛隊がレイとカイロ・レンに襲いかかり、この二人がまさかの共闘をして親衛隊を全滅させるくだりは、この映画の中で最高のカタルシスを感じさせてくれました。
戦いが終わった後、カイロ・レンは、レイに「俺と手を組んで二人で銀河を支配しよう!」と、どこかで同じようなセリフを聞いたかな…と思いましたが、レイは謝絶してカイロ・レンとは決別します…。
最高指導者スノークも正体がよくわからないまま、あっさりと退場してしまいましたが、これも諸説ありました。銀河帝国皇帝のパルパティーン=ダース・シディアスの師匠であるダース・プレイガス説とか、ジェダイ・マスターのメイス・ウィンドゥが実は生きており、ダーク・シディアスから電撃ショックを受けた時に肌が青ざめ、顔に大きな傷を負ったというメイス・ウィンドゥ説(ここでも出るんかい、サミュエル・L・ジャクソン!存在感ありすぎ…。)等、今から考えるとトンデモ説でしたね…。
パルパティーンも電撃ショックで顔真っ白になって額に溝ができてたしな…。
「最後のジェダイ」は上映時間152分と「スター・ウォーズ」シリーズ史上最長でありながら、中身が薄い、というか「寄り道」しすぎなんですよ。謎をもう少し明らかにして話を前に進めておかないと、三部作として企画した次の最終作にしわ寄せがこないかと…。
「フォースの覚醒」のラスト、レイがルークにライトセーバーを差し出すシーンでは鳥肌立ってしまうほどだったのに…。それもかなわぬ夢となりました…。
スター・ウォーズ/最後のジェダイ MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 発売日: 2018/04/25
- メディア: Blu-ray
コントの求道者、志村けんはソウル・ミュージックにも造詣がめちゃくちゃ深かった!
こんにちは、カズノコです。
新型コロナウィルスに感染し、闘病していたコメディアンの志村けんさんが3月29日、肺炎のために亡くなりました。70歳でした。
やはり「8時だョ!全員集合」のドンピシャ世代ですからね…。志村けんがドリフターズの正式メンバーになったのは1974年。小学3年生だった私は、それこそ毎週土曜日の夜8時にはテレビにかじりつくようにして、「8時だョ!全員集合」を観ていました。
今から考えると「8時だョ!全員集合」ってすごい番組でしたよね…。視聴率も最盛期には40~50%を誇り、「お化け番組」とか「怪物番組」とか呼ばれ、まさに無敵でした。
番組前半はいかりや長介をリーダーに、加藤茶、高木ブー、仲本工事、荒井注の5人のメンバーを中心としたコントを、大掛かりな回り舞台で演じ、最後に凝った仕掛けで建物が崩壊したり、本物の自動車が飛び込んできたりするオチは豪快そのものでした。これを公開生放送で毎週やっていたなんて、今では絶対不可能ですよね…。
でも、それだけに観客の子どもの声援やおとなのどよめきが半端なく伝わってくるんですよね。当時の売れっ子アイドルや人気歌手がドリフとからむショートコントも懐かしいですね…。歌手の歌の部分は小学生のガキには興味がなく流していましたが…。
そんな5人のドリフの面々に時々「見習い」として若いメンバーが参入してくることがありました。印象に残っているのは何と言ってもすわしんじですね。奇声を上げてやたら走り回ったあげくズッコケるブルース・リーなんかの役がそれなりに面白かったですが、ドリフのメンバーの洗練された(?)ギャグに比べると、かなり粗削りというか、出たとこ勝負のところは子ども心にも感じていました。「見習い」はもう一人いて、長髪のあまり目立たない方の「見習い」が志村けんだったんですね…。
1974年メンバーの一人荒井注が脱退して、志村けんはドリフの正式メンバーになります。いかりや長介はすわしんじの昇格も検討していましたが、「長年ドリフに付き、コントの作り方も良く知っている、志村を加入させた方がいい」と加藤茶が強く主張し、これにいかりや長介も折れて、志村けんが起用されることになります。
この頃のドリフのメンバーでは圧倒的に「加トちゃん」こと加藤茶に人気があり、私の中でも絶対的なカリスマでした。志村けんは相変わらず目立たない存在でしたが、「8時だョ!全員集合」の名物コーナーである「少年少女合唱隊」の中で歌った「東村山音頭」で状況は一変、志村けんは一躍人気者になります。
ちなみに、「東村山音頭」は4丁目、3丁目、1丁目と3曲ありますが、志村けんの地元である東村山市の「東村山音頭」をリメイクしたのが4丁目。いかりや長介が作詞・作曲したのが3丁目。さらに、志村けんが作詞・作曲(と言うのかな…)による1丁目が加えられて、3曲構成となったそうです。「東村山音頭」名曲ですよね…。当時、この曲を知らない小学生はいなかったんじゃないでしょうか?
志村けんの人気がブレイクした後は、加藤茶が一手にギャグを受け持つ存在から、志村けんと加藤茶のコンビで笑いを生み出す存在へ変化させました。このことは後に大ヒットしたコント「ヒゲダンス」を生むことになります。
「少年少女合唱隊」で思い出しましたが、このコーナーの「ドリフの早口ことば」(「生麦生米生卵~っ」ってやつです)のバックで流れている自然と体が動くファンキーな曲の元ネタがウィルソン・ピケットの「Don't Knock My Love」であることを後年知りました。
また、「ヒゲダンス」で志村けんと加藤茶が軽妙な動きで踊り、コントを次々披露するバックのBGMはテディ・ペンターグラスの「Do Me」のリフをアレンジしてループしたものです。
ウィルソン・ピケットの「Don't Knock My Love」は後にダイアナ・ロスとマーヴィン・ゲイによってカバーされたほどのヒット曲ですが、テディ・ペンターグラスの「Do Me」なんてヒット曲でも何でもない曲なんですね。それを日本人なら誰でも知っている曲にしてしまうのが、志村けんのスゴさですね…。
志村さんは、ソウル・ミュージックはもちろん、あらゆる分野の音楽に興味を示し、自宅には膨大な数のレコードやCDのコレクションがあったとのことです。それだけではなく、日本の戦前・戦後の喜劇映画やテレビ番組や落語のビデオを集め、海外からコント番組やコメディ映画のビデオを取り寄せてはチェックする習慣があり、家にはレンタルビデオ店が開けるほどの本数があったとも言われています。
このことひとつとっても、ナンセンスでバカバカしさに徹したコントに対するストイックな姿勢と研究熱心さがうかがえると思います。古今東西のお笑いに対する造詣の深さとセンスがあり、さらにそのギャグやコントを「芸」として高める努力を終生忘れなかったからこそ、志村さんの笑いがあらゆる世代に時代を超えていつまでも愛され続けるのでしょう。「同じものを何度見ても、わかっていても笑ってしまう、それが芸です」と志村さんは答えています。
志村さんは「私の笑いは動き7、しゃべり3」と語っていたように、ぎくしゃくとした独特な動きを演じて笑わせる芸は、老若男女、おとなも子どもも、世界中の誰からも愛されました。また、多摩弁を取り入れたとぼけたしゃべりにも親しみやすさがあふれていました。これだけ数多くの歴史に残るコントの傑作・名作を残し、演じ続けてきた喜劇人は他にいないでしょう。
志村さんは70歳を迎え、さらなる新境地を見せてくれるはずでした。映画「鉄道員(ぽっぽや)」(1999)に一度出たきり、映画、ドラマの仕事をずっと断ってきた志村さんが、山田洋次監督の新作映画「キネマの神様」への主演、NHK連続テレビ小説「エール」への出演を決めていました。先に逝かれたいかりや長介さんのように、人生の哀愁がにじみ出るような演技が見られたに違いありません。今となっては惜しいとしか言いようがないですね…。
志村さんが50年にわたって残してきた偉大な功績をたたえるとともに、心からご冥福をお祈りしたいと思います。
ウィルソン・ピケットは サザン・ソウル・シンガーの代表的存在で「イン・ザ・ミッドナイト・アワー」、「ダンス天国」などのヒット曲があります。このCDは彼の代表曲が網羅され、「ドリフの早口ことば」の元ネタ「Don't Knock My Love」も収められています。
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は再始動したシリーズの模範解答⁉
こんにちは、カズノコです!
「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」(2015)が、「スター・ウォーズ/シスの復讐」(2005)から10年ぶりに公開されたとき、まず思ったのは「ジョージ・ルーカスが当初描いていたスター・ウォーズ全9部作の構想はどの程度反映されたのかな?」ということですね。
1971年、ユニバーサル映画と契約を結んだジョージ・ルーカスは「アメリカン・グラフィティ」(1973)を監督し、映画は大ヒットしました。その後、ルーカスが昔からの念願であった「フラッシュ・ゴードン」の映画化を企画しますが、色々問題があって頓挫します。
「フラッシュ・ゴードン」の映画化を断念したルーカスは新たなスペース・オペラの草案を書き上げます。しかし、ユニバーサルはこれを拒否したため、ルーカスは20世紀フォックスと新たに契約を結びます。ルーカスは草案を下敷きにして脚本を書き上げ、全9部作の物語となると主張して20世紀フォックスと交渉した結果、記念すべきシリーズ第1作「スター・ウォーズ」(1977)が生まれることになります。
ジョージ・ルーカスが「スター・ウォーズ」をアナキン・スカイウォーカー=ダース・ベイダーの物語として描いた以上、「スター・ウォーズ」は6作品で完結したことになります。ルーカスも自分が語りたかった物語は終わったと考えたのでしょう。ルーカスは「シスの復讐」を監督した後、以降の作品は製作しないと明言し、「スター・ウォーズ」シリーズは当初の構想では全9部作の予定を全6部作と修正して完結しました。
完結したはずの物語が再び動き出すのは、映画の世界では「常識」ですよね…。2012年にウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカス・フィルムを買収してスター・ウォーズシリーズの著作権を取得したところから話が動き始めます。
ディズニーは、新三部作(エピソード1・2・3)、旧三部作(エピソード4・5・6)に続く「スター・ウォーズ」の物語、続三部作(エピソード7・8・9)の製作を決定します。ディズニーはルーカス・フィルムを買収したといっても、要は「スター・ウォーズ」に関する権利だけが欲しかったんでしょうね…。
シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカス本人は、 当初、製作総指揮的な立場として参加する予定だったようですが、自身のプロットをディズニー側から拒否され、最終的に製作現場から退いています…。もちろん、ルーカスの頭の中には、ルーク・スカイウォーカー、レイア、ハン・ソロたちの次の世代が主人公となる三部作の構想があったはずでしょうが、それを観ることは出来ませんでした…。
もっともルーカスは、この「フォースの覚醒」を公開当初「ファンを喜ばせるためのレトロなSF作品、新しいものが何もない。」としてオリジナリティーの欠如を批判し、あまりいい評価を与えていませんでした。ところが、この発言がたちまち物議を醸しましたので、ルーカスは慌てて撤回しています…。
ルーカスが期待した新しいものは、ストーリーやキャラクターのみならず、新しい技術にもあったと思います。「スター・ウォーズ」のストーリーやキャラクターは正直なところ、過去の神話や物語、映画から得たものから換骨奪胎したものであり、そこが観客の共感を得られたと思っています。「スター・ウォーズ」が残した本当のすごさは革新的な映画技術にあり、その後の映画のSFXやCG技術、音響効果、デジタル上映の発展等に数々の貢献をしてきました。ルーカスはこうした技術的な挑戦が新しい「スター・ウォーズ」に見られなかったことに落胆したのではないのでしょうか?
監督は、J・J・エイブラムスで、製作と脚本にも参加しています。そのため、良くも悪くも彼の嗜好が色濃く出た作品となっています。「ミッション・インポッシブル」、「スター・トレック」、そして、「スター・ウォーズ」と過去の作品のオマージュ、リブート作品は彼の最も得意とする分野で、いずれの作品も大ヒットとなっています。1966年生まれのJ・Jは、まさに「スター・ウォーズ」で育った世代で、大ファンであったことは間違いないでしょう。
脚本にはさらに、ローレンス・カスダンが共同脚本家として加わりました。カスダンは、「スター・ウォーズ/帝国の逆襲」(1980)の脚本に参加。その後もルーカス関連で「レイダース/失われたアーク《聖櫃》」(1981)と「スター・ウォーズ/ジェダイの帰還」(1983)の脚本も手掛けています。
この二人が脚本に関わったことで、「フォースの覚醒」の方向性は自ずから決まったようなものです。それは、過去作、それも旧三部作(エピソード4・5・6)の再生に他ならなかったと思うんですね。
新三部作(エピソード1・2・3)のように背景やキャラクターもCGを多用したアニメーションに近い画面は改め、フィルムによるロケやセット撮影、ライブ・アクションを重視し視覚的にも旧三部作に近いものにしています。ストーリーやキャラクターも過去のファンの好みと期待から大きく離れすぎないものにしています。懐かしい面々との再会に楽しさを感じないファンはいないいないでしょう。
実を言うと、私が「フォースの覚醒」で一番ワクワクした瞬間は映画本編ではなく予告編でした。それは、暗闇に浮かび上がるハリソン・フォード演じるハン・ソロとチューバッカの2ショットです!ハン・ソロが感慨深げに「チューバッカ、帰ってきたぞ」とつぶやいた姿にはゾクッと鳥肌が立ちました…。
私も、J・J・エイブラムスとローレンス・カスダンの術中に見事にはまったクチでしょうね…。「フォースの覚醒」に散りばめられた、懐かしい「過去の遺産」の数々に大いに楽しんでしまった方ですから…。ただ、あまりにもファン・サービスに徹したせいなのか、ストーリーそのものもエピソード4「新たなる希望」との類似点が多くなりすぎてしまいましたね…。
「フォースの覚醒」で新たに登場したキャラクターもなかなか魅力的です。続三部作の主人公となるレイを演じているデイジー・リドリーはフレッシュでかわいらしくアクションの切れもいい。オスカー・アイザックは渋めの実力俳優ですが、この映画でレジスタンスのパイロット、ポー・ダメロンを演じたことで一気に知名度を上げました。何より「いいな」と思ったのが、ストームトルーパーの脱走兵FN-2187、フィンを演じたジョン・ボイエガですね。「新しいものがない」とルーカスは批判したそうですが、このストームトルーパーの脱走兵という設定は今までになかったものと思いますが、いかがでしょうか?
疎い自分はストームトルーパーはみんなあの賞金稼ぎのジャンゴ・フェットのクローンかと思っていたら、この時代は誘拐された幼い子供たちに軍事訓練と洗脳を施してストームトルーパーとしていたんですね…。そういえば、脱走したフィンを「裏切り者!」と罵倒して戦いを挑むストームトルーパーがいたりして、なかなか個性的です。(手に持っている武器をブンブン振り回して結構カッコいい!)
何よりもこの「フォースの覚醒」の最大の失敗は、過去の作品のダース・ベイダーに匹敵するような悪役がいないことにあると思います。アダム・ドライバー扮するカイロ・レンは小物ですよね…。性格的にも未熟でヒステリックでモノに当たり散らしたり、「お前は中二病か!」と突っ込みを入れたくなります…。こんな奴が愛すべきハン・ソロとレイアの息子だという事実も受け入れがたい…。
「フォースの覚醒」は、旧三部作にあった父と息子の葛藤と力関係をうまく反転させています。「帝国の逆襲」が親に子がめちゃくちゃにされる話なら、「フォースの覚醒」は子に親が破滅させられる話ですよね…。
このように「フォースの覚醒」は、「新たなる希望」の新しい物語が始まる時のワクワクするような高揚感と、登場人物たちの恩讐の彼方に新たな謎を生み、次回へと持ち越されるという「帝国の逆襲」の構造をあわせ持ち、あちらこちらにノスタルジーを感じさせる、J・J・エイブラムスの出した模範解答といえます。
結果的に「フォースの覚醒」は世界歴代興行成績の上位を塗り替える大ヒットをとばしますが、ファンや評論家の評価では賛否両論でした。次作「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」(2017)が巻き起こした嵐はこんなものではありませんでした…。
「スター・ウォーズ」といえば、20世紀フォックス映画のファンファーレに続いてスター・ウォーズのテーマが流れるのが常でしたが、それもかなわぬ夢となりました…。
スター・ウォーズ/フォースの覚醒 MovieNEX [ブルーレイ+DVD+デジタルコピー(クラウド対応)+MovieNEXワールド] [Blu-ray]
- 発売日: 2016/05/04
- メディア: Blu-ray
いよいよ目が覚めたか?強烈キャストの登場で俄然面白くなりだした「麒麟がくる」
こんにちは、カズノコです。
皆さん、NHKの大河ドラマ「麒麟がくる」はご覧になっていますか?
私は熱心な大河ファンとは言えませんので、お正月の第1回か第2回を観てその後も続けて観るかを決めるような、極めて不埒な視聴者なんですね。
昨年の「いだてん」は、正月過ぎてもずっと観ていましたが、宮藤官九郎の凝った構成の脚本はともかく、主役の中村勘九郎と阿部サダヲのキャラクターには最後まで馴染めませんでしたね…。
そんなこんなで「麒麟がくる」には期待していたんですよ。NHKもずいぶん早いうちから宣伝してましたね…。大河ドラマでは最も人気のある戦国時代ということ、ただ、大河ドラマではおなじみの織田信長や豊臣秀吉、徳川家康が主役ではなく、明智光秀を主役に持ってきたところが斬新やな…と思いました。
あの、明智光秀ですよ!明智光秀と言えば「本能寺の変」のイメージが強いですからね。どちらかといえば、織田信長や豊臣秀吉を主人公とした小説や映画やドラマの中では「ヒール(悪役)」で「引き立て役」ですからね…。でも明智光秀を演じるのが人気者の長谷川博己なら話は別でしょう、ビジュアルも華やかで明智光秀のイメージを一新してくれそうです!
「麒麟がくる」も、昨年の「いだてん」と同様、出演俳優の途中交替で放映予定分の回の撮り直しが必要になったことから、放映開始が例年より遅れるというハプニングもありましたが、ドラマ自体はかなり好評価で、視聴率も昨年に比べればずっとよいようですね。
4Kでフル撮影されているためか、画面は鮮明でやたら明るくてきれい!登場人物たちの着ている衣装も色鮮やかで、過去の映画やドラマの中で武士や農民の服装とは一線を画しています。撮影もドローンを使用して、おおっ!と思うような視点からの空撮は面白いですね!
ただ、個人的には明智光秀の人物像が平和主義者であまりにもいい人すぎやしないかと…。従来の明智光秀のイメージを変えようとするあまり、癖がなく物足りない感じが…。
大河ドラマや同じくNHKの朝ドラのような長編ドラマが成功するカギは、物語の主人公であるヒーロー、ヒロインの魅力もさながら、時には主役を食うほどの存在感のあるサブキャラにあると思うんですね。
「麒麟がくる」の今の時代でいえば、斎藤道三や松永久秀のような濃ゆ~い歴史上のキャラクターを、本木雅弘や吉田鋼太郎ら、豪華な俳優陣が演じてくれるので、さぞや面白くてドロドロした腹の探り合いが展開していくかと思えば意外とそうでもない…。そうなんですね、みんな「いい奴」なんですね…今のところは…。
聞くと視聴率も下降気味とのこと…。ダレ気味でモッサリした展開にちょっとした不安や眠気を感じていたところ…第9回「信長の失敗」(2020.3.15放送)が、目が覚めるような素晴らしい回だった!
前回の第8回「同盟のゆくえ」(2020.3.8放送)のラストで、ついに明智光秀にとって運命の人、織田信長が登場したんですが、海から(船に乗って)現れた信長に「浦島太郎かよ!」と突っ込んでしまいました…。「麒麟がくる」の意外性のあるキャストの中でも、織田信長に染谷将太をあてるとは正直ビックリしました。過去に信長を演じてきた役者さんのイメージからするとミスキャストやないかと…?
それはさておき、「信長の失敗」を観ると、いきなり松平広忠(徳川家康の父)が襲撃を受けるシーンから始まるではないですか…。黒澤明監督の「蜘蛛巣城」(1957)のラスト、三船敏郎が無数の矢を浴びるシーンほどではないですが、矢を手に持って体に刺さったように見せて「わぁっ!」と言って倒れるような感じではありません。
ヒューと飛んできた矢が思い切り体に刺さります。(CGかも知れませんが…)さらにとどめでブスッと槍で刺されるのもエグイですね…。広忠を演じた浅利陽介は即退場と思われたら、意外な形で再登場します…出番が短いながらも強烈な印象を残しますが、ちょっとカワイソウですよね…。
「ただの農民のわけない…」といろいろ噂されていた岡村隆史演じる菊丸も、やはりというかただの農民ではなかったわけで、三河の徳川家ゆかりの忍びの者と判明しましたね。ということは、ハットリくんですかね…。
織田家に嫁いできたものの、祝言をすっぽかされた帰蝶(川口春奈好演!)と信長と初対面する場面は、ほっこりしますね。信長の奇妙ないでたちにとまどいながらも、素直に不実を詫び領民思いの信長に興味をもちます。信長が帰蝶に紹介したのっぽの末吉、ちびの平太、やせの太助は、三人とも田舎もん丸出しで人よさげです。
このあとが問題のシーンです。信長の父織田信秀と母土田御前に自身の婚礼の返礼として、「父上、この三郎からもめでたき引き出物がございます!この尾張の繁栄には欠かせぬものにございます!」として、あろうことか広忠の首級をプレゼントします。
帰蝶相手に「世間の噂と違って、この人実はいい人かも…」と思わせておいて、満面の笑みで首級を披露する信長の姿に思いっきりこちらも引きましたね…。
もちろん、これには信秀もドン引き。土田御前と帰蝶を人払いして、「この、うつけものが!」と激しく信長を叱責します。今川義元との来るべき決戦に先手を打ち、てっきり父から褒められると思っていた信長はどうしても納得がいきません…。
要は信長の理屈は通っているのですが、時と場所をわきまえていないちょっとあぶない奴なんですね。このあくまでもピュアな「うつけもの」である信長のキャラ設定はありそうでなかったものですよね。奇矯なふるまいが目立ち、先進的な考え方についていけないため、周囲から「うつけもの」と呼ばれたのとは全く違います。
染谷将太が演じる信長が画面に登場すると何をするか何を言い出すか見当がつかないので異様な緊張感が漂います。外面は怖いが内面は優しい、というのが信長のイメージでしたが、外面はニコニコと穏やかで優しいのに内面はゾッとするほどまじコワイんですね…。
で、思い出したのが、先に帰蝶に紹介した信長のお友だちのあの三人。そういえば、松平広忠を襲撃した刺客も三人、ちびの平太は竹槍の名人って…ああ、そうだったんか…こわ…。
この回は、なかなか盛り沢山で、後の徳川家康となる人質の身の竹千代君。子役の岩田琉聖君が可愛らしく演じていますが、竹千代も相当深い心の闇を抱えていますね…。織田信長の弟である信勝に将棋を指してもらっていたかと思ったら、「つまらぬ将棋のお相手をし…わざと負けておるのじゃ」と、接待将棋を暴露。6歳の子どもとは思えない大人の発言。
6歳児になめられている信勝も信勝ですが、そんな竹千代が織田家でただ一人一目置いているのが信長であり、その信長が何の迷いもなく実の父を殺していることを竹千代はまだこの時点では知らんのですね…。
続く第10回「ひとりぼっちの若君」(2020.3.22)では、将棋を指しながらの竹千代と信長の緊迫感あふれるやり取りが繰り広げられます。そう言えば、この回の題名「ひとりぼっちの若君」は竹千代、信長のどちらとも取れるんですね。やはり、この二人ただものではない。
将棋盤をはさんで真剣を構えてにらみ合っているようなひんやりとした凄みがあります。なお恐ろしいのは、この時の竹千代が6歳、信長は15歳ですから…。私はこの勝負、サイコパス信長に対して、人質の身というハンデがありながらTPOをわきまえ、子どもとは思えぬ老獪さえ感じる竹千代の方が勝っていたような気がしましたが…。
また、この二人の静かな戦いを天井裏の穴からじっと見ている菊丸がむっちゃカッコいい!顔つきまで精悍な風貌に変わって驚きます!
光秀の方も、帰蝶、駒(門脇麦)、煕子(木村文乃)と三人の女性たちから好意を寄せられて結構なモテぶりですが、「ボーっと生きてんじゃねーよ!」とチコちゃんに言われないようにしましょうね。岡村も出てますしね…。
NHK大河ドラマの音楽では、第42作「武蔵 MUSASHI」のエンニオ・モリコーネに続き、外国人作曲家としては二人目のジョン・グラムが手掛けています。エンニオ・モリコーネは大好きなんですが、あまりの違和感にがっかりした覚えがあります。ジョン・グラムについて全く知りませんでしたが、今回は勇壮なテーマ曲はもちろん、劇伴ともに意外といいと思うんですが…。