ハゲ親父のささやき

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「スター・ウォーズ/フォースの覚醒」は再始動したシリーズの模範解答⁉

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こんにちは、カズノコです!

 

 

 

スター・ウォーズ/フォースの覚醒(2015)が、スター・ウォーズシスの復讐」(2005)から10年ぶりに公開されたとき、まず思ったのはジョージ・ルーカスが当初描いていたスター・ウォーズ全9部作の構想はどの程度反映されたのかな?」ということですね。

 

 

 

1971年、ユニバーサル映画と契約を結んだジョージ・ルーカスアメリカン・グラフィティ(1973)を監督し、映画は大ヒットしました。その後、ルーカスが昔からの念願であったフラッシュ・ゴードン」の映画化を企画しますが、色々問題があって頓挫します。

 

 

 

フラッシュ・ゴードン」の映画化を断念したルーカスは新たなスペース・オペラの草案を書き上げます。しかし、ユニバーサルはこれを拒否したため、ルーカスは20世紀フォックスと新たに契約を結びます。ルーカスは草案を下敷きにして脚本を書き上げ、全9部作の物語となると主張して20世紀フォックスと交渉した結果、記念すべきシリーズ第1作スター・ウォーズ(1977)が生まれることになります。 

 

 

 

ジョージ・ルーカススター・ウォーズ」をアナキン・スカイウォーカーダース・ベイダーの物語として描いた以上、「スター・ウォーズ」は6作品で完結したことになります。ルーカスも自分が語りたかった物語は終わったと考えたのでしょう。ルーカスは「シスの復讐」を監督した後、以降の作品は製作しないと明言し、スター・ウォーズ」シリーズは当初の構想では全9部作の予定を全6部作と修正して完結しました。

 

 

 

完結したはずの物語が再び動き出すのは、映画の世界では「常識」ですよね…。2012年にウォルト・ディズニー・カンパニーがルーカス・フィルムを買収してスター・ウォーズシリーズの著作権を取得したところから話が動き始めます。

 

 

 

ディズニーは、新三部作(エピソード1・2・3)旧三部作(エピソード4・5・6)に続く「スター・ウォーズ」の物語、続三部作(エピソード7・8・9)の製作を決定します。ディズニーはルーカス・フィルムを買収したといっても、要は「スター・ウォーズ」に関する権利だけが欲しかったんでしょうね…。

 

 

 

シリーズの生みの親であるジョージ・ルーカス本人は、 当初、製作総指揮的な立場として参加する予定だったようですが、自身のプロットをディズニー側から拒否され、最終的に製作現場から退いています…。もちろん、ルーカスの頭の中には、ルーク・スカイウォーカー、レイア、ハン・ソロたちの次の世代が主人公となる三部作の構想があったはずでしょうが、それを観ることは出来ませんでした…。

 

 

 

 もっともルーカスは、この「フォースの覚醒」を公開当初「ファンを喜ばせるためのレトロなSF作品、新しいものが何もない。」としてオリジナリティーの欠如を批判し、あまりいい評価を与えていませんでした。ところが、この発言がたちまち物議を醸しましたので、ルーカスは慌てて撤回しています…。

 

 

 

ルーカスが期待した新しいものは、ストーリーやキャラクターのみならず、新しい技術にもあったと思います。「スター・ウォーズ」のストーリーやキャラクターは正直なところ、過去の神話や物語、映画から得たものから換骨奪胎したものであり、そこが観客の共感を得られたと思っています。スター・ウォーズ」が残した本当のすごさは革新的な映画技術にあり、その後の映画のSFXやCG技術、音響効果、デジタル上映の発展等に数々の貢献をしてきました。ルーカスはこうした技術的な挑戦が新しい「スター・ウォーズ」に見られなかったことに落胆したのではないのでしょうか?

 

 

 

 監督は、J・J・エイブラムスで、製作と脚本にも参加しています。そのため、良くも悪くも彼の嗜好が色濃く出た作品となっています。「ミッション・インポッシブル」スター・トレック、そして、スター・ウォーズと過去の作品のオマージュ、リブート作品は彼の最も得意とする分野で、いずれの作品も大ヒットとなっています。1966年生まれのJ・Jは、まさに「スター・ウォーズ」で育った世代で、大ファンであったことは間違いないでしょう。

 

 

 

脚本にはさらに、ローレンス・カスダンが共同脚本家として加わりました。カスダンは、スター・ウォーズ/帝国の逆襲(1980)の脚本に参加。その後もルーカス関連でレイダース/失われたアーク《聖櫃》(1981)とスター・ウォーズジェダイの帰還」(1983)の脚本も手掛けています。

 

 

 

この二人が脚本に関わったことで、「フォースの覚醒」の方向性は自ずから決まったようなものです。それは、過去作、それも旧三部作(エピソード4・5・6)の再生に他ならなかったと思うんですね。

 

 

 

新三部作(エピソード1・2・3)のように背景やキャラクターもCGを多用したアニメーションに近い画面は改め、フィルムによるロケやセット撮影、ライブ・アクションを重視し視覚的にも旧三部作に近いものにしています。ストーリーやキャラクターも過去のファンの好みと期待から大きく離れすぎないものにしています。懐かしい面々との再会に楽しさを感じないファンはいないいないでしょう。

 

 

 

実を言うと、私が「フォースの覚醒」で一番ワクワクした瞬間は映画本編ではなく予告編でした。それは、暗闇に浮かび上がるハリソン・フォード演じるハン・ソロとチューバッカの2ショットです!ハン・ソロが感慨深げに「チューバッカ、帰ってきたぞ」とつぶやいた姿にはゾクッと鳥肌が立ちました…。

 


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私も、J・J・エイブラムスローレンス・カスダンの術中に見事にはまったクチでしょうね…。「フォースの覚醒」に散りばめられた、懐かしい「過去の遺産」の数々に大いに楽しんでしまった方ですから…。ただ、あまりにもファン・サービスに徹したせいなのか、ストーリーそのものもエピソード4「新たなる希望」との類似点が多くなりすぎてしまいましたね…。

 

 

 

「フォースの覚醒」で新たに登場したキャラクターもなかなか魅力的です。続三部作の主人公となるレイを演じているデイジー・リドリーはフレッシュでかわいらしくアクションの切れもいい。オスカー・アイザックは渋めの実力俳優ですが、この映画でレジスタンスのパイロット、ポー・ダメロンを演じたことで一気に知名度を上げました。何より「いいな」と思ったのが、ストームトルーパーの脱走兵FN-2187、フィンを演じたジョン・ボイエガですね。「新しいものがない」とルーカスは批判したそうですが、このストームトルーパーの脱走兵という設定は今までになかったものと思いますが、いかがでしょうか?

 

 

 

疎い自分はストームトルーパーはみんなあの賞金稼ぎのジャンゴ・フェットのクローンかと思っていたら、この時代は誘拐された幼い子供たちに軍事訓練と洗脳を施してストームトルーパーとしていたんですね…。そういえば、脱走したフィンを「裏切り者!」と罵倒して戦いを挑むストームトルーパーがいたりして、なかなか個性的です。(手に持っている武器をブンブン振り回して結構カッコいい!)

 


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何よりもこの「フォースの覚醒」の最大の失敗は、過去の作品のダース・ベイダーに匹敵するような悪役がいないことにあると思います。アダム・ドライバー扮するカイロ・レンは小物ですよね…。性格的にも未熟でヒステリックでモノに当たり散らしたり、「お前は中二病か!」と突っ込みを入れたくなります…。こんな奴が愛すべきハン・ソロとレイアの息子だという事実も受け入れがたい…。

 

 

 

「フォースの覚醒」は、旧三部作にあった父と息子の葛藤と力関係をうまく反転させています。「帝国の逆襲」が親に子がめちゃくちゃにされる話なら、「フォースの覚醒」は子に親が破滅させられる話ですよね…。

 

 

 

このように「フォースの覚醒」は、「新たなる希望」の新しい物語が始まる時のワクワクするような高揚感と、登場人物たちの恩讐の彼方に新たな謎を生み、次回へと持ち越されるという「帝国の逆襲」の構造をあわせ持ち、あちらこちらにノスタルジーを感じさせる、J・J・エイブラムスの出した模範解答といえます。

 

 

 

結果的に「フォースの覚醒」は世界歴代興行成績の上位を塗り替える大ヒットをとばしますが、ファンや評論家の評価では賛否両論でした。次作スター・ウォーズ/最後のジェダイ(2017)が巻き起こした嵐はこんなものではありませんでした…。

 

 

 

 

 

スター・ウォーズ」といえば、20世紀フォックス映画のファンファーレに続いてスター・ウォーズのテーマが流れるのが常でしたが、それもかなわぬ夢となりました…。