ハゲ親父のささやき

「親父は何でも知ってはいない」親父がよりよく生きていくためのブログ

「阿修羅のごとく」は見た目薄味、中身超濃い目のドラマです!

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こんにちは、カズノコです。

 

 

宝塚歌劇団の出身で、映画からテレビドラマ、舞台でと温かみのある演技で知られた女優の八千草薫さんが10月24日に亡くなられました。

 

 

清楚で優美な存在感のある女優さんで、ある人にとっては三船敏郎と共演した映画宮本武蔵三部作のお通役で、またある人にとっては一大ブームを巻き起こしたドラマ岸辺のアルバムの主婦役で、さらに最近ではテレビドラマ「やすらぎの里」で演じた往年のスター「姫」役として、それぞれのイメージを持っているかと思います。

 

 

私にとっての八千草薫さんは、なんといってもドラマ阿修羅のごとくの巻子役ですね…。て言うか阿修羅のごとくは当時中坊だったガキの自分に強烈なインパクトを残したドラマでした。

 

 

NHK土曜ドラマ枠の向田邦子シリーズとして1979年1月にパート1として3話が、1980年1月にパート2として4話が放送されました。今からちょうど40年も前になるんですね…。

 

 

当時わが家に一台しかないテレビの視聴権は全面的に親父が握っており、親父の好まない番組を見るのは許されませんでした。

 

 

それゆえにリアルタイムでこの「阿修羅のごとく」を見たということは、親父からこのドラマを見るのを許されたということになります。

 

 

 

ただ、いまだに親父がこのドラマを見るのを許したのか、理由がよくわからんのですね…。

 

 

倉本聰山田太一と並んで当時の人気シナリオライターであった向田邦子が脚本だったからというわけでもないですね。

 

 

向田邦子の代表作で人気ドラマだった「時間ですよ」寺内貫太郎一家がわが家のテレビに映っていたことはただの一度もなかったからです。

 

 

ドラマのテーマも男子中学生向けではないですよね…。

 

 

ある日、新聞への匿名の投書をきっかけに、四姉妹の父親が浮気をしているどころか、愛人と子どもまでいることが判明。四人は集まって母親を気遣いながら対処について話し合うところからこのドラマは始まります。

 

 

向田邦子は女性の本質を「阿修羅」に例えています。阿修羅についてはドラマのタイトルに続いてナレーションとともに毛筆のテロップが流れて説明されます。

 

 

阿修羅とは、インド民間信仰上の魔族で、諸天は常に善をもって戯楽とするが、阿修羅は常に悪をもって戯楽とする。天に似て、天に非ざるゆえに、非天の名がある。


外には仁義礼智信を掲げるかに見えるが、内には猜疑心強く、日常争いを好み、たがいに事実を曲げ、また偽って他人の悪口を言いあう。怒りの生命の象徴。争いの絶えない世界とされる。

 


彫刻では、三面六臂を有し、三対の手のうち一対は合掌他の二対は、それぞれ水晶、刀杖を持った姿であらわされる。興福寺所蔵の乾漆像は天平時代の傑作のひとつ。

 

 

たぶん、親父があのドラマを気に入った理由の一つがあのタイトルでも流れていたテーマ曲やないかなと思うんです。なぜなら、親父がよく鼻歌で歌っていたから…!

 

 

印象的なドラマのテーマ曲は数々あると思いますが、「阿修羅のごとく」のテーマ曲(後から「ジェッディン・デデン」という名前の行進曲だと知りますが)くらい破壊力のある曲は後にも先にもないでしょうね。

 

 

妙に哀愁ただようメロディーを中東の管楽器や打楽器でけたたましい音色と独特のリズムを響き鳴らすこの曲は、メフテルと呼ばれるトルコの軍楽。

 

 

一度聴いたら遺伝子レベルで記憶に刷り込まれるほどインパクトのある曲です。この曲を聞いたら反射的に「阿修羅のごとく」と思い出してしまうところが怖い…。

 


ドラマ自体も、この曲のごとくインパクト十分でした。演出を手がけたのが和田勉であるところがすごい!

 

 

実は、和田勉が演出したのは第一話と第三話だけなのですが、その他の話も和田勉が演出してるような自然な統一感があるんですよね…。

 

 

NHK退局後の「ガハハおじさん」としての方がひょっとすると有名かもしれませんが、和田勉の演出したドラマはすぐに「和田勉」とわかる特徴があります。

 

 

一言で言えば濃ゆいんです。登場人物のクローズアップがやたら多くて、しかも陰影のコントラストが半端ないんですよね。さらに、ゴゴゴゴゴ…」とか「ドシャーン!とか効果音を多用するので、まるで実写で劇画を見ているような気分になります…。

 

 

四人姉妹の物語というと「若草物語」や「細雪」を思い浮かべるかもしれませんが、向田邦子の描く物語は当然ながら一筋縄にはいきません。演じている女優陣もすごい!

 


夫に先立たれて生け花の師匠をして生計をたてている長女綱子を加藤治子。サラリーマンの家庭の主婦である次女巻子を八千草薫。図書館の司書で男っ気なしの三女滝子をいしだあゆみ。四女咲子の風吹ジュンはボクサーと同棲しています。

 

 

皆さん若くて美しくて何より演技が上手い!この華やかな四姉妹が時には連帯し、時にはお互いを遠慮なく罵ったりするのだからたまりません! 

 

 

ところで、このドラマは男性陣も素晴らしく豪華なんです。

 

 

浮気をする父親に日本映画界の重鎮、佐分利信。次女の夫に最も脂ののった頃の緒形拳。浮気調査をしながら三女に惚れる興信所の探偵に宇崎竜童

 

 

まずは、重厚で貫禄のある佐分利信が父親役を演じたことによって、「あの父親が浮気なんて信じられない…」と、姉妹と同じように観ているこちらにも説得力を持って訴えかけてきたと思うんですよね。

 

 

緒形拳は残念ながらパート1のみの出演(パート2は露口茂)ですが、映画復讐するは我にありの頃ですから、あのひょうひょうとしつつギラギラした感じ…いいですよ!

 

 

 そして、何よりも宇崎竜童ですよ。このドラマの宇崎竜童ほど「かっこ悪いことはなんてかっこいいんだろう」という言葉が合う人はいないですよ!特にパート2では大活躍します!

 

    

八千草薫さんそっちのけで「阿修羅のごとく」についてばかりになってしまいましたが、あくまでこのドラマの主役は八千草薫さんで、平凡な主婦という役柄ながら、彼女の周囲も穏やかで済むわけにはなりません…。

 

 

機会があれば、ぜひ観てもらいたいドラマです!

 

 

 

 

 

 昔のドラマを視聴するのはなかなか困難ですが、さすがに名作ドラマとあって「NHKオンデマンド」(有料)でも視聴できます。もし、足を運ぶことができるのなら、全国各地の NHKの「番組公開ライブラリー」(無料!)で視聴することもできます。