原作にかなり忠実なんだけどなにか物足りない…「八つ墓村」
こんにちは、カズノコです。
NHK-BS「スーパープレミアム」金田一耕助シリーズ第3弾「八つ墓村」が放送されました!
今回の金田一耕助は吉岡秀隆が続投しています。前作の「悪魔が来りて笛を吹く」でもなかなかの好演でしたが、作品そのものは賛否両論でしたね…。
今回は「八つ墓村」…「八つ墓村」を原作として映像化されたのは、過去に映画が3本、ドラマが今回で7本目となり、10回の映像化は横溝作品の中では最多です!
吉岡版金田一は若干キャラクターとしての弱さもありましたが、その点でも「八つ墓村」は最適かと。この作品での金田一耕助は「傍観者」的な立場が強く、あくまでも主役は「寺田辰弥」(このドラマでは「井川」姓で、村上虹郎が演じています)で、辰弥の視点で物語が語られているからです。
「八つ墓村」は探偵金田一が謎解き推理をするというよりも、辰弥青年による、とある村の鍾乳洞に隠された埋蔵金をめぐる「愛と冒険の物語」なんですね!(とも違うかな…?)
まず、今回のドラマを見て驚いたのは、2時間の尺のドラマでこの長編に登場するキャラクターをほぼ省略せずに登場させていること!
何度も映像化されている横溝作品ですが、登場人物をばっさりカットしたり、二人を一人にしたり、エピソードそのものも省略したり、設定を変えたりするのはざらにあることです。
むしろ、今回は登場人物を極力省略せずにできる限り登場させたため、一人一人の登場シーンは逆に少なくなり、キャラクターの印象がそれほど残らないのが、難点でしょうか?
また、エピソードもたくさんありすぎるので、映像化にあたっては、尺に合わせてどの部分を削ってどの部分を残していくかが、難しいところでしょう。この取捨選択で物語の方向性が変わってきますから。
今回のドラマでは原作に非常に忠実なシナリオでありながら、見せ場をなくしてしまった感があります。その最たるものが、田治見要蔵による村人大虐殺シーンでしょう。
「八つ墓村」と言えば、「たたりじゃあ~!」の名セリフで知られる1977年に映画化された渥美清が金田一耕助を演じた野村芳太郎監督の松竹映画「八つ墓村」を思い出す人が多いと思います。
あの映画での「八つ墓村」は完全にオカルト・ホラーと化していましたが、インパクトは相当なものでした。芥川也寸志作曲の「惨劇・32人殺し」にのって、桜吹雪舞う中、疾走する白塗りの山崎努(=要蔵)の姿はトラウマになっています…。
その後も数々の「八つ墓村」で多くの名優が田治見要蔵を演じてきました…。
今回のドラマで要蔵を演じたのは音尾琢真。最近の映画やドラマでしょっちゅう見かける名バイプレイヤーですが、旧家の主である要蔵役となるとどうでしょうか?
要蔵のいでたちはほぼ完ぺき!変な着物に首からランタンをぶら下げ、手には日本刀と猟銃、予備の弾倉を斜めに掛け、頭には懐中電灯を鉢巻きで挟み込み、いわゆる山崎努版要蔵スタイルを踏襲しています。
しかし、今回、まさかの日中の惨劇で「昼行燈」ならぬ「昼懐中電灯」…血しぶきはCGでの合成、子どもでも容赦なく殺すが、反撃に出る村人もいるし、バックに流れる曲も叙情的ではなはだしく迫力に欠ける。まるで白昼夢のよう…。
これはあまりにも山崎努の田治見要蔵が強烈に刷り込まれているからでしょうね…。あの松竹の「八つ墓村」は後から思えば、かなり「異端」の部類になるんですが、自分のが中でスタンダードになっているのが怖い…。
ただ、今回の「八つ墓村」は横溝正史の小説「八つ墓村」を未読の方が見るには、また、映画やドラマでしか「八つ墓村」を見たことがない方にも、かなり原作に忠実なドラマだと思いますので最適です!
エンドロールで磯川警部が金田一を事件解決後の静養先として、「亀の湯」に誘っているシーンがあります。ということは次の作品は…⁉︎
あと、このドラマである意味一番トラウマに残りそうなシーンは、エンドロールのあとの最後の最後で、「〇〇が無言で✕✕する」シーンでした…。NHKもやるのお…。
横溝正史の映画化作品と言えば、石坂浩二と市川崑監督がタッグを組んだ作品と並んで必見の名作です!
実は…ドラマで金田一耕助を演じた吉岡秀隆の映画デビュー作でもあります!
市川崑監督で金田一と言えば石坂浩二ですが…この「八つ墓村」ではトヨエツが演じています。一番の見どころは一人で小竹・小梅を演じた岸田今日子の怪演でしょう!