80年代の坂本龍一は日本のスティーリー・ダン?「音楽図鑑 2015 Edition」
こんにちは、カズノコです。
CDを整理していたら、坂本龍一の「音楽図鑑-2015 Edition」を買っていたにもかかわらず、2枚組のディスク2をきちんと聴いていなかった(!)ので、久しぶりに聴いてみました。
「音楽図鑑」は、1984年10月に初回発売されましたが、当時のCDで3,800円もしていたんですよね…。
当時大学生で常に金欠状態であった自分にとっては、CDは高価な買い物でした。欲しいCDがあってもすぐには買わずにあれにしようか、これにしようか迷いながら買っていました。
当時買ったCDで覚えているのが、ロバート・パーマーの「プライド」で、そのCDでも3,500円でしたから、「音楽図鑑」は自分でも思い切って買ったCDでしたね…。
当時は、イエロー・マジック・オーケストラ(YMO)が好きで、YMOに関するモノを探しては見たり、聞いたりしていました。
坂本龍一もNHK-FMの「サウンドストリート」という音楽番組の火曜日のDJというかパーソナリティをやっていました。その番組内で自分のアルバムの曲を何度も紹介してましたので、その流れで購入したんだと思います。
ちなみに、坂本龍一の「サウンドストリート」で目玉企画だったのが、リスナーが作った自作自演のデモテープを募集して番組内で流していた「デモテープ特集」でした。
そんなこんなで大枚をはたいて買った「音楽図鑑」でしたのでよく聴いてました。中でも自分が一番好きだったのは2曲目の「ETUDE」でした。
レゲエのリズムで始まり、曲の途中で4ビートのジャズのリズムに変わり、また元のレゲエのリズムに戻って終わる曲の構成と、サックスやクラリネット、トロンボーンのアンサンブルが気持ちいい!
坂本龍一やYMOともゆかりの深い音楽評論家のピーター・バラカンが、「ETUDE」の曲の構成(レゲエ→ジャズ→レゲエ)について、スティングが1987年にリリースした「ナッシング・ライク・ザ・サン」に収録されていた「イングリッシュマン・イン・ニューヨーク」が同じ構成ですね、と言及されていたことも印象に残っています。
「音楽図鑑-2015 Edition」のライナーノーツに、この「ETUDE」に関するトラックシートが掲載されており、レコーディングにまつわるエピソードが書かれていました。
それによると、レコーディングに参加した清水靖晃が、ソプラノ・サックス、アルト・サックス✕2本、テナー・サックス✕2本、バス・クラリネットの6声のアンサンブルを一人多重録音により演奏しており、曲の途中で4ビートになる部分はいかにもジャズのセッションの感じに聞こえるが、その当時は坂本龍一も清水靖晃も一人でスタジオに入って一人でダビングしていく行為に入り込み、みんなで演奏することがなくなっていたとのこと!
うーん、いい感じのセッションかと思っていたのに、レコーディングではだいぶ違っていたんだな…と。ちょっと複雑な気分…。
YMOの後期のアルバムも三人のメンバーが揃ってレコーディングすることが少なくなっていたこと、「音楽図鑑」のレコーディング期間が1年8カ月間の長期にわたっていることを考えると、ある意味で当然の帰結かもしれませんね…。
肝心のディスク2ですが、一聴してこれが懐かしい「デモテープ」の味わい!
と言うか、言われてみれば、全くその通りなんですね、未発表曲と未発表バージョンで構成されているんですから。
個人的に一番気に入ったのは、1曲目に収録された「M2 BILL」でしょうか。
「音楽図鑑」には山下達郎がギターで参加している曲が何曲かあるのですが、この「M2 BILL」では、山下達郎のコーラスを聴くことができます!
コーラスと言えば、3曲目に収録された「SELF PORTRAIT」の未発表バージョンでは吉田美奈子のコーラスを聴くことができるんですが、いずれも最終的にはボツになったということですよね…なんと、もったいない!
腕利きの一流ミュージシャンの膨大なアウトテイクから厳選して抽出されたアルバム…誤解を招くかもしれませんが、「彩(エイジャ)」や「ガウチョ」等の数々の名盤を残したスティーリー・ダンを何となく思い出しました…。
1980年代当時の坂本龍一の曲を再び聴くことができるだけでも価値があると思います!
「オリジナル盤」や「完璧盤」もありますが、未発表音源が聴くことができるのは「2015 Edition」になります。
ソロとなってからのスティングが世に送り出した名曲の数々の中でも屈指の一曲ではないでしょうか…。