ハゲ親父のささやき

「親父は何でも知ってはいない」親父がよりよく生きていくためのブログ

“傑作”を作ってしまったばかりに原作者から反感を買ってしまった映画「シャイニング」

f:id:kazunokotan:20191205000446j:plain

こんにちは、カズノコです。

 

スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画の名作「シャイニング」(1980)の40年越しの続編「ドクター・スリープ」(2019)が、11月29日に公開されました!

 

この公開にあわせるよう、「シャイニング」がNHK-BSでも11月25日にオンエアされていたので、つい観てしまいましたが…やっぱりコワい!何度観てもコワい!そして面白い!

 

キューブリック監督の映画は、何の予備知識も持たずに初めて観ても、映画にまつわるエピソードやトリビアを知ったうえで深読みしながら観ても、どちらも面白い!

 

この「シャイニング」で一番有名なエピソードは、原作者のキングがキューブリックの手で映画化されたこの作品を毛嫌いしており、事あるごとに非難を繰り返していることでしょうね…。

 

正直なところ、この映画が公開された当時中学生だった私はキングなんて作家は全く知りませんでした。それもそのはずで、70年代後半にキングの初期の作品が出版されたものの、売れ行きはどれもよくなかったようです…。

 

特に、「シャイニング」の単行本は出版社が倒産してしまう不幸が重なり、長い間読みたくても読めない状況が続きました。その後、やっと文春文庫に収められて読むことができたのは映画の公開から6年も経ってからでした…。

 

ですので、日本で作家キングの名前を知ったのは、この映画「シャイニング」の原作者としてからという人も多いのではないでしょうか?

 

ちなみに、当時の映画雑誌「スクリーン」「ロードショー」かでしたが、例えば、「〇〇監督の次回作は「✖✖」に決まりました」等の映画の新作情報が短く掲載されているページがありました。そこでは「シャイニング」は「輝き(原題)と紹介されていました。当時の私はキューブリック監督の次回作はなんか明るい映画になるみたいやの~。」と勝手に想像しておりました…。

 

ちなみに話はそれますが、私がこれら新作情報の中でも一番想像できなかった映画は「地球圏外(原題)でした…。皆さん、おわかりになるでしょうか?…......そうなんです、あのスティーブン・スピルバーグ監督の大ヒットSFファンタジー映画「The Extra-Terrestrial」つまりE.T.のことだったんですね…。「地球圏外」…。

 

…そんなことはどうでもよいことでした。当時は何の予備知識もなく、製作に5年もかかったという「シャイニング」を観たのですが、まぁスゴいインパクありましたねぇ!

 

すでに言い尽くされてもいますが、なんと言っても、主人公のジャック・トラヴィスを演じたジャック・ニコルソンが、演技とわかっていても怖すぎる!

 

特に、ジャックが洗面所のドアを斧で叩き壊して隙間から顔を覗かせ、「ひあず、じょに〜!」と吠える場面は、この映画の名場面中の名場面であり、この映画のポスターにも使われています。

 

キューブリックはこのわずか2秒程度のシーンを撮るために2週間をかけ、190以上のテイクを費やしたそうです…。

 

また、恐怖で気も狂わんばかりに絶叫し、目の玉が飛び出さんばかりに包丁を持ったまま恐れおののく、妻のウェンディを演じたシェリー・デュヴァルの顔も、襲う側のジャックよりもさらに怖い!

  

これもキューブリックがデュヴァルに対し納得がいくまで何度も撮り直しをしたため、精神的に追い詰められ、あのような「恐怖」演技につながったそうです。これは映画以上にコワい…。

 

「シャイニング」には様々な恐怖が描かれています。一番には、わめき叫びながら斧を持って暴れるジャックの直接的な暴力の恐怖なんでしょうが、ジャックがそこに至るまでのジワジワと狂気に囚われていく心理的な恐怖、それに気づいた時のウェンディの絶望的な恐怖もまた格別です…。

 

もちろん、キューブリック監督の持ち味であるシャープな映像美もたっぷり堪能できます!

 

友人であった写真家ダイアン・アーバスの代表作にオマージュを捧げたエレベーターホールに立つ双子の姉妹、ブレのないスムーズな移動撮影を可能にしたステディカムによるホテルの廊下や迷路庭園を移動するシーンは印象的であるとともに現実離れした不気味さも醸し出しているかと思います。

 

また、生理的に何ともイヤーな気持ちにさせる描写も忘れていません…。エレベーターから大量に溢れ出る血の海、「237号室のバスルームの女」や「いかがわしい行為にふける犬男」なんかは気色悪いですよね…。

 

でも、なぜキューブリックホラー映画、しかも、ベストセラー作家であるキングの代表作「シャイニング」の映画化に臨んだのでしょうか?

 

キューブリックの前作バリー・リンドン(1975)は、18世紀のヨーロッパを舞台にして、時代考証はもちろん、照明、美術、衣装に至るまで、その時代を忠実に再現しようと試みた“挑戦的な作品”でしたが、興行的には見事に失敗してしまいました…。

 

そこで、キューブリック必ずやヒットが狙える作品を次回作に選ばなければならなくなったのですね。当時はエクソシスト(1973)やオーメン(1976)が大ヒットして、映画界はオカルトホラー映画ブームとなっていました。

 

キューブリックの元には「エクソシスト2」の製作の話も来ていたそうですが、結局は「シャイニング」に決定し、キューブリックにとっても重要な作品に、そして、後の映画史上にも残る傑作が生まれることになりました。

 

この「シャイニング」という作品は、キングにとっても、キューブリックにとっても、win-winの関係で、両者にメリットがあったと個人的には思うのですが、果たしてその続編の「ドクター・スリープ」はどのような結果をもたらすのでしょうか?

 

 

 

 

 

 

日本やヨーロッパで劇場公開されたのは上映時間が119分の「コンチネンタル版」と呼ばれるもので、NHK-BSでもこのバージョンが放送されていました。スピーディな展開で、純粋なホラー映画として楽しむならこちらの「コンチネンタル版」をお勧めします。

シャイニング [Blu-ray]

シャイニング [Blu-ray]

  • 出版社/メーカー: ワーナー・ホーム・ビデオ
  • 発売日: 2010/04/21
  • メディア: Blu-ray
 

 

 

 「シャイニング」には、「プレミア上映版」(146分)、そこからエピローグを除いた「北米公開版」(143分)、そこからさらに説明的なシーン等を削除した「コンチネンタル版」(119分)といくつかのバージョンがあります。キューブリック監督が意図したバージョンは「コンチネンタル版」だと思いますが、より深く「シャイニング」の世界を知りたい方にはこちらの「北米公開版」をご覧ください。