ハゲ親父のささやき

「親父は何でも知ってはいない」親父がよりよく生きていくためのブログ

映像に凝りすぎて監督の運命を変えてしまった映画「レジェンド/光と闇の伝説」!

f:id:kazunokotan:20190928154532j:plain

 こんにちは、カズノコです!

  

レジェンド/光と闇の伝説』(1985)という、いかにもありそうな題名の映画を覚えてますか?

 

この映画の監督はリドリー・スコット、主演はトム・クルーズ と言われても、ピンとこない人は意外と多いのではないでしょうか?

 

リドリー・スコット監督の誰もが知る「エイリアン」(1979)、「ブレードランナー」(1982)に続く作品として、また、トム・クルーズも青春映画の若手スター(ブラット・パックとか言われてましたね…)として頭角を現し始めた頃でしたので、当時の「ロードショー」とか「スクリーン」等の映画雑誌でもそれなりの話題になっていたと思います。

   

 

当時の私はもちろんトム・クルーズ目当てではなく、リドリー・スコット監督が凝りに凝った映像でファンタジーを撮ったということで期待して観に行ったのですが…

 

う~ん、ちょっとがっかり…。」というのが正直な感想でした。

 

何よりもあまりに単調でお決まりの物語平板な演出が原因でしょうか…。

 

物語は妖精やユニコーンの住む太古の世界。闇の魔王は世界を闇に閉ざすため、ユニコーンの角をとってくるよう手下の小鬼に命じ、純真な心を持つ姫をおとりに使い、つがいの牡のユニコーンの角を切り落とす。姫の恋人で森にすむ若者であるトム・クルーズは妖精や小人ら仲間とともに、囚われの身となった姫と牝のユニコーンを救うべく、闇の魔王に戦いを挑む…という何のひねりもないストレートなお話です。

 

原作と脚本はウィリアム・ヒョーツバーグ。あの「エンゼル・ハート」(1987 アラン・パーカー監督)の原作「堕ちる天使」の作者です。振り幅大きすぎますが、原作と脚本を担った この人が一番の元凶かも…。

 

リドリー・スコット監督はこのファンタジーの世界を全身全霊をかけて再現しようとしているだけに、画面はどこを切り取っても一幅の絵画のようで細部まで凝りに凝っています。

 

ただ、森のシーンは綿帽子か羽虫か何かふわふわしたものが常に漂っており、登場人物の動きはユニコーンも含めてスローモーションが多用されるため、少々うざったく感じてくるのも事実です。

 

そして、この映画も劇場公開前のオリジナルフィルムは140分の長編だったにもかかわらず、ヨーロッパや日本で公開された国際版は94分に、アメリカ公開版にいたっては89分に短縮されてしまっています。ちなみに今販売されているブルーレイディスクには、国際版と114分のディレクターズカット版も収録されています。

 

オリジナルから大幅にカットされると「話のつじつまが合わなくなりわかりにくくなる」などとよく言われますが、この映画に関してはあまりそういう話を聞きません。

むしろ「話がわかりやすくなっていい」とか「94分でも長く感じた」とか肯定的(?)な意見もありますね…。

 

しかも、この映画は上映時間のカットだけでは終わりませんでした。

 

国際版にはジェリー・ゴールドスミスによるファンタジー映画にふさわしい格調高い音楽がつけられていましたが、アメリカ公開版は製作会社の意向でドイツのプログレ系ロックバンドのタンジェリン・ドリーム(!)の音楽に差し替えられました。

 

いずれにしても、この映画の一般的な評価は低く、興行的にも失敗しました。過去の「ブレードランナー」のようにカルト映画化してもなさそうです。

 

レジェンド/光と闇の伝説」の失敗が、リドリー・スコット監督にどのような影響を与えたかわかりませんが、この作品の前と後での監督作には違いが出ていると個人的には思います。

 

デュエリスト/決闘者」(1977)

「エイリアン」(1979)

ブレードランナー」(1982)

レジェンド/光と闇の伝説」(1985)

「誰かに見られている」(1987)

ブラック・レイン」(1989)

テルマ&ルイーズ」(1991)

「1492コロンブス」(1992)

「白い嵐」(1996)

G.I.ジェーン」(1997)

 

など、いずれも悪い作品ではないと思いますが(「1492コロンブス」のようにはっきり「雇われ監督」の仕事もありますが)、「別にリドリー・スコットが監督することないのにな…」と思っていました。(あくまで個人的な意見です!作品のファンの方すいません!

 

周囲との衝突があっても自分の主義主張はとことんこだわり画作りに執念を込めていた映画作家が、紆余曲折を経て周囲の意見も聞きながらも通すべきところは通して自分の作品に仕上げていったところはすごいと思います。

 

リドリー・スコットがいい意味で「職人監督」としての資質も兼ね備え、ヒットメイカーと作家主義が結実し確立された作品が、大ヒットしアカデミー作品賞を受賞した「グラディエーター」(2000)ではないかと…。

 

レジェンド/光と闇の伝説」がリドリー・スコットの転機にはなったものの、あまりにも「観るべきところなし」のような映画かと言うと…、特筆すべき点があるのを忘れていました。

 

それは、特殊メイクアップ・アーティストのロブ・ボッティンによるクリーチャーの特殊メイクで、アカデミー賞のメイクアップ賞にノミネートされました。

 

特に、ティム・カリーが演じた闇の魔王のメイクはすごいです!

 

従来のマスクを被ったりするのではなく、細かなアプライエンス(肉付け用のピース)を皮ふに重ねて貼り付け、ティム・カリーの筋肉に連動して顔の自然な表情が出るように作り上げたメイクで、当時の技術としても野心的な試みだったそうです。

 

闇の魔王の素晴らしいデザインと造形とあいまってその存在感は半端ありません。よくある作り物感は全くと言っていいほどないです。今ならCGとモーションキャプチャで処理してしまうでしょうから、ある意味大変貴重だと思います。

 

ただし、顔やボディーを含めて全くティム・カリーとはわかりません…。

 

闇の魔王だけでも見る価値あります!

もちろん初々しいトム・クルーズもファンは必見でしょう!

そうです、この映画はストーリーを追ってはいけない映画なのです…。

ただ、ひたすら画面を愛でる映画なのです!

 

 

【おまけ】

 アメリカ公開版の主題歌として元ロキシー・ミュージックのブライアン・フェリーが歌った「Is Your Love Strong Enough?」のプロモーションビデオです。

当時、ピーター・バラカンさんがMCをやっていたTBS系音楽情報番組「ポッパーズMTV」で放送してました。映画のシーンとの合成もよく出来ていて、好きなビデオの一つです。

 


Bryan Ferry - (1986) Is Your Love Strong Enough? [featuring David Gilmour]