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破壊力抜群の「犬神家の一族」はレトロフューチャー?

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こんにちは、カズノコです。

 

 

NHK-BSの「シリーズ横溝正史短編集Ⅱ金田一耕助 踊る!」(…「踊る!」ってなに?…)で犬神家の一族が、2月1日に放送されました!

  

 

このNHK-BSのシリーズは「スーパープレミアム」の金田一耕助シリーズとは別に、金田一耕助の活躍する横溝正史の短編小説を映像化しているシリーズです。

 

 

2016年放送の第1弾に続いて池松壮亮金田一耕助を演じていますが、今回の第2弾は「貸しボート13号」「華やかな野獣」「犬神家の一族が映像化されています。

 

  

…って「犬神家の一族」の原作は長編やないの?

 

 

過去何度も繰り返し映画化、ドラマ化されてきた横溝正史金田一耕助ものではもっとも有名な、あの「犬神家の一族」をなんと30分で、しかも「ほぼ原作通り映像化」という、大胆というか無謀というかすごい試みですよね…。

 

 

で、結果は…「これは破壊力あるわ…」としか言いようのない代物でした…。

 

 

映画やドラマの「犬神家の一族」と言えば、一代で巨万の富を築いた信州財界の巨頭・犬神佐兵衛の莫大な遺産相続にまつわる遺言状を、犬神家の顧問弁護士である古館弁護士が一族全員が揃ったところで開封し読み上げるシーンをまず思い浮かべるのではないでしょうか?

 

 

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 ―角川映画犬神家の一族」(1976)より―

 

 

 

このドラマでは回想シーン等を除き、犬神家の一族全員が揃ったこの和室一部屋で物語は展開していきます。ただし、和室といっても全員が座れるようなだだっ広い部屋ではないため、ほとんどの登場人物はひしめき合って立ったままです。ちょうど演劇の立ち稽古のようなイメージでしょうか…。

 

 

この狭い部屋に、金田一耕助を始め、橘署長、大山神主、猿蔵(たぶん、猿蔵史上最もチャーミング!)らが、入れ代わり立ち代わり、文字通りこの部屋に転がり込んで、この一族に絡んできます。

 

 

登場人物はどれもインパクトがありますが、まず、長女松子、次女竹子、三女梅子のファッションがすごい!従来の和装の黒喪服のイメージは微塵もありません…歪んだバロック調とでもロココ調とでもいうのでしょうか…。

  

 

長女松子は坂井真紀が演じていますが、まるでティム・バートンの映画に出てくるヘレナ・ボナム=カーターのような怪しい雰囲気を醸し出しています…。

  

 

でも、なんといっても「犬神家の一族」と言えば、長女松子の息子である佐清(スケキヨ)が戦争で負った傷を隠すためにかぶっているマスクに尽きると思います。

 

 

映画やドラマで有名なのは、頭からすっぽりかぶるタイプの白いゴムマスクですが、これは角川映画第一作である「犬神家の一族」(1976)で市川崑監督が創り上げたイメージで、この映画以降主流となっています。

 

 

ところが、原作の小説では出征前の佐清と見間違うような端正なマスクと描写されているんですね。そりゃそうですよね…いくら顔から型を取ったとはいえ、あの白塗りのマスクでウロウロされたら不気味すぎますよね…。

 

 

今回のマスクはまさに原作通りの佐清そっくりのマスク!…なのですが、頭からすっぽりかぶっているので、通常の頭よりひとまわりデカいんですね…。

 

 

造形がとてもよくできているだけに違和感ありあり!一見して爆笑必至です!あの佐清!その仮面を半分めくって、見せておやり!」のお約束のシーンもちゃんとあります。 

 

 

また、印象的な見立て殺人のシーンの見せ方も凝っています。特に、佐武が一瞬で生首と菊人形に変わるシーンは意表を突いて素晴らしい!

 

 

ならば、佐清湖面に逆さ立ち、足にょっきりはどうする?と思ったら、なんとタライから足にょっきり!しかも、原作通りパジャマはいてます…。変に原作に忠実なんですよね…。

 

 

金田一耕助も、「スケキヨ」が逆さになって「ヨキケス」、さらに水面より上だけが見えているので「ヨキ(斧)」と、ここの見立てを説明するのはまるで「子供だましの判じ物のような世界なので…と語っており、映像化では省略されることが多いのですが、これもきちんと説明しています!

 

 

金田一耕助が頭を掻きむしればフケが雪のように舞い(そういえば原作では舞台は信州那須の冬でした…)、自らの推理と真相を披露していくシーンはバックに流れる音楽も快調で、たたみかけるようにこの物語のラストへ向かっていきます。

 

 

演出は渋江修平長崎県波佐見町出身のフリーランスの映像ディレクターで、数々のCMや、モーニング娘。らのミュージックビデオ、また、ドラマの監督として活躍しています。インパクトのある映像美と微妙なユーモアブレンドが独自の味わいで、これからが楽しみなクリエイターです!

 

 

以前、NHK-BSで放送された「シリーズ横溝正史短編集」のほか「シリーズ江戸川乱歩短編集」でも、いくつかの作品を演出しています。個人的には、女優の満島ひかり明智小五郎を演じ、柔道家篠原信一と共演した一編「屋根裏の散歩者」が特によかったですね!

 

 

この野心的な「犬神家の一族」では濃いキャラばかりに目を奪われがちですが、忘れてはならないのは、膨大なセリフの応酬の面白さです!

 

 

原作の「犬神家の一族」が初めて雑誌「キング」で連載されたのは1950年(昭和25年)、実に70年も前なんですね…。このドラマではセリフはあえて原作の言い回しのままにし、レトロな味わいを活かしています。でも、役者さんたちは大変だったでしょうね…。 

 

 

 この攻めまくったドラマ「犬神家の一族」を観ただけでは、あの「犬神家の一族」の奥深い世界を味わえるとはとても思えませんが、特筆に値するチャレンジであったことは間違いありません!間違いなく地上波でも再放送されるでしょうから、お見逃しなく!

 

 

 

 

 

 

 

 角川映画第1作であり、日本映画の金字塔。市川崑監督&石坂浩二主演のこの映画が、その後の“金田一耕助ブーム”を作ったのは間違いありません。必見。

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「教場」はキムタク、フジテレビにとって起死回生の一作となるか?

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こんにちは、カズノコです!

 

 

「令和」となって初めてのお正月…食っちゃ寝、食っちゃ寝と寝正月を決め込んでいましたら、目の覚めるような強烈なドラマをフジテレビがやってくれました!フジテレビ開局60周年記念の新春スペシャルドラマ「教場(きょうじょう)」です!

 

 

木村拓哉主演で1月4日と5日の二夜連続で、前後編にわたって放送されました。視聴率も前編15.3%、後編15.0%(関東地区 関西地区は前編16.5%  後編17.2%  ビデオリサーチ調べ) と大変好調だったようですね。

 

 

「教場」とは聞きなれない言葉ですが、警察学校の教室を指す言葉だそうです。舞台となるのは警察官となるための警察学校ですが、閉鎖的な空間の中で生徒の人間性が試されるような試練の連続が展開していく…と想像していたら、そもそもその生徒たちが想像を絶するとんでもない奴らばかりだった!

 

 

よくもここまで集めたと思えるほど、この警察学校の生徒はゲスな奴らばかりで、こんな輩が警察官になったら…と思うと恐ろしさを感じるほどの犯罪者集団。学校内に調達係の生徒までいるところはまさに「刑務所もの」を観ているような雰囲気…。窃盗、恐喝、暴行、密造、放火ばかりか殺人もありの世界で、悪事が露見してもブタ箱に入れられずに退校で済むのが不思議なくらい…。

 

 

木村拓哉はこの警察学校の初任科第198期短期過程の教官である風間公親(かざまきみちか)を演じていますが、風間は「警察学校とは適性のない人間をふるいにかける場である」と考えており、常に退校届を携え、何かあればすぐに「退校届を提出しろ」と生徒に迫る非情な男です。

 

 

「何をやってもキムタク」と評されることの多い木村拓哉ですが、このドラマでのイメージチェンジは大成功ではないでしょうか?白髪に義眼という外見もインパクト抜群ですが、感情を表に出すことなく生徒に試練を与え冷徹な判断を下していく風間の人物像によるところが大きいと思います。

 

 

トラブルを抱えた生徒に退校届を渡して子飼いとし、スパイのように学校内での情報を吸い上げ、鋭い観察力と洞察力で判断していく風間の姿はまさに探偵のようです。私はいわゆる安楽椅子探偵を思い浮かべました。

 

 

 部屋から出ることなく、あるいは現場に赴くことなく事件を推理する探偵安楽椅子探偵(アームチェア・ディテクテブ)」と言います。風間は子飼いとした生徒から情報を収集していき、それら断片的な情報から次々と生徒たちの秘密を暴き、ふるいにかけていきます。

 

 

また、警察学校が舞台ですので、容疑者から情報を引き出す様々なテクニック等を授業で教えるシーンもこのドラマには多くありますが、そのテクニックを応用して生徒たちが起こす事件の真相を暴いていくスリリングな展開もあります。

 

 

そこでドラマを観ている私たちも、いつの間にか「風間教場」の生徒に一員となったかのような気持ちになり、臨場感と緊迫感を持続したままドラマの前編は終わり、後編へとつながります。

 

ところが、このドラマの後編では、ふるい落とされずに残った「風間教場」の生徒たちが卒業に向けての最後の試練に臨むに至って、「学園もの」の様相を見せていくんですね…。

 

 

最後に至って、風間に退校届を突きつけられた生徒ばかりが卒業まで残っているのを見て、風間教官の真意がわかったような気がしました。

 

 

多くを語らず生徒に厳しく当たる風間の姿は、ある意味時代から取り残された古風な男でもあり、そのような男は背中で語り伝えていくんだな…と何か懐かしさも感じましたね。このような男の役をキムタクが演じるとは…。

 

 

あと、教室の後ろの壁に貼ってある「教場旗」とでも言うのでしょうか、富士山に椿の花が背景に描かれた旗に、大きく「疾風勁草」しっぷうけいそう)と書かれています。

 

 

この「疾風勁草」という言葉の意味は「激しく強い風が吹いて初めて、折れることのない強い丈夫な草がわかる」ということから「苦境や厳しい試練にあるとき、初めて意志や節操が堅固である人、その人の真の強さがわかる」ということだそうです。まさに、風間教官がめざす真の警察官の姿、また、このドラマのテーマを言い当てたいい言葉ですね。

 

 

ラストの卒業式で卒業生を送り出し、再び入校したばかりの新入生を迎える風間教官の姿に、ルイス・ゴセット・ジュニアが士官学校の鬼教官を演じ、リチャード・ギアをしごき上げた「愛と青春の旅立ち(1982)のような感動を覚えるとは、前編を観ていた時点では思いもよらんかった…。

 

 

しかし、「風間教場」に新たに迎える新入生の顔ぶれをよくよく見ると、「これは間違いなく続編が作られるな…」と思えるような今をときめく若手俳優の面々がそろっていましたね…商売上手なんだから、フジテレビ!

 

 

キムタク、フジテレビともども、このドラマ「教場」で新たな鉱脈を掘り当てたのではないでしょうか?

 

 

 

 

 

 

 原作は2013年の「週刊文春ミステリーベスト10」第1位、2014年の「このミステリーがすごい!」第2位を獲得したベストセラーです!ドラマ「教場」の脚本は原作小説の「教場」と「教場(2)」を元にして、「踊る大捜査線」シリーズ等で人気の君塚良一が手掛けています。

教場 (小学館文庫)

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教場 (2) (小学館文庫)

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 「教場」でメガホンを握った中江功が1998年に木村拓哉とタッグを組んだ野沢尚脚本のミステリードラマの最高峰(と個人的には思っています)。現在では観るのが難しいかも知れませんが、未見の方は機会があればぜひ! 

眠れる森 DVD-BOX

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新旧金田一が激突する⁈…「悪魔の手毬唄」

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こんにちは、カズノコです。

 

 

昨年末の12月21日にフジテレビでスペシャル・ドラマ悪魔の手毬唄金田一耕助、ふたたび~」が放送されました!今回、金田一耕助に扮するのは加藤シゲアキです!

 

 

実を言うと、加藤シゲアキについてはアイドルグループ「NEWS」の一員である、程度しか知らないんです…すいません。

 

 

なぜ、「金田一耕助、ふたたび」というサブタイトルがついているかと言うと、一昨年の12月に同じフジテレビでスペシャル・ドラマ「犬神家の一族」が放送され、そこで金田一耕助を演じていたのが加藤シゲアキ…今回は第二弾ということになります。

 

 

フジテレビでは、横溝正史原作の金田一耕助シリーズをよくドラマ化していますよね。記憶にあるだけでも、金田一耕助片岡鶴太郎が演じたシリーズと元SMAP稲垣吾郎が演じたシリーズはすぐに思い浮かびます。加藤シゲアキ金田一耕助もこれからシリーズ化していくんでしょうか…?

 

 

今回は悪魔の手毬唄八つ墓村」「犬神家の一族」「獄門島に並んで映像化されることの多い作品です。もちろん、フジテレビの片岡鶴太郎版でも、稲垣吾郎版でもドラマ化されている人気作品です!

 

 

やはり、作品のテーマとする、いわゆる「見立て殺人」が映像化にも向いているんでしょうね…。「八つ墓村」別として、「犬神家の一族」そして「獄門島」も「見立て殺人」です。

 

 

悪魔の手毬唄」で見立てられるのは、舞台となる鬼首村に古くから伝わる「手毬唄」であり、その歌詞に符合するように、村には仁礼家、由良家、別所家という三家の同い年の年頃の娘が次々と殺されていく…というのがこの作品のポイントなんでしょうが、個人的には「悪魔の手毬唄」のミステリーやトリックとしての面白さは、二十数年前に起きた殺人事件の方にあると思うんですね…。

 

 

二十年前、村中を巻き込み詐欺を働いた恩田幾三というよそ者が、村の温泉宿「亀の湯」の主人青池源治郎を殺害して行方をくらました未解決の殺人事件の担当だった岡山県警の磯川警部は、暇を見つけては村を訪れ独自の調査を続けており、「亀の湯」に通ううちに未亡人の女将青池リカに恋心を寄せる ようになります…。

 

 

何より、「悪魔の手毬唄」で印象的なのは、「亀の湯」の青池リカに好意を寄せる磯川警部の複雑な思いでしょう…。

 

 

このドラマで磯川警部を演じているのが、古谷一行です。言うまでもなく、過去最も数多く金田一耕助を演じてきた名優です。私の場合は、金田一耕助と言えば映画での石坂浩二を真っ先に思い出しますが、テレビドラマの「横溝正史シリーズ」の印象が強い人も多いでしょう。1977年に製作された第1回「犬神家の一族」の視聴率は、なんと41.5%を記録したそうです!映画では石坂浩二、テレビでは古谷一行金田一耕助のベストだと思いますが、新旧金田一揃っての出演はファンにはたまりませんよね。

 

 

また、ここで思い出されるのは、1977年に市川崑監督、石坂浩二金田一耕助に扮した東宝映画「悪魔の手毬唄です。この作品も市川・石坂コンビの金田一耕助シリーズの第二作として製作されましたが、数ある横溝正史原作の金田一耕助映画化作品の中でも屈指の名作とされています。

 

 

この映画で磯川警部を演じていたのが、これまた名優の若山富三郎!「亀の湯」の女主人青池リカに岸惠子と理想的な組み合わせです。警部は二十年前に起きた殺人事件で心に傷を負ったリカに対してなんとか救ってあげたい、事件へのわだかまりをなくしてあげたいと思っているのだが、リカは警部の思いとは全く異なる思いを抱いて二十年間を生きており…。この男女の思いのズレがラストシーン、事件を解決して去る金田一耕助と磯川警部の会話の切ない余韻に繋がっていきます。

 

 

このドラマで青池リカを演じたのは寺島しのぶでしたが、古谷一行の思いはどちらかと言うと、リカに対しての男女の愛と言うよりも家族愛を感じましたね…。ですので、犯人がわかってからの磯川警部の行動にちょっと唐突な感じを受けたのは私だけでしょうか…。

 

 

また、何度も映像化されている横溝作品ですので、原作との違いや作品ごとの違いを見るのも楽しみの一つですが、この作品で一番驚いたのは、原作では三番目までしか歌詞のない手毬唄に四番があったことですね!

 

 

 その歌詞は以下の通りです。

 

 四番目のすずめのいうことにゃ おらが在所の陣屋の殿様
 狩り好き酒好き女好き わけて好きなが女でござる
 女たれがよい桶屋の娘 器量よしじゃがやきもち娘
 橋の上から川面を眺め 色街帰りの旦那を待った 待った
 恨みが強いとて返された 返された


 
この原作との違いはアイデア賞もので面白いですね!

 

 

このドラマでのラストは金田一耕助が、磯川警部に「あなたはリカさんを…」と言って途中で言うのをやめています。

 

 

この会話のシーンだけは、市川崑監督・石坂浩二主演の映画「悪魔の手毬唄」をぜひご覧になってください。村井邦彦の音楽とあいまって、素晴らしいラストシーンになっています!

 

 

 

 

金田一耕助ものの中でも…というよりも、日本映画の中でも屈指の名作と思います。

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村に戻ってきたアイドル大空まゆみの役で夏目雅子が出演していたんですね…。

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「ジョーカー」は本当にジョーカー誕生の物語なのか?

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こんにちは、カズノコです!

 

ホアキン・フェニックス主演、トッド・フィリップス監督の映画「ジョーカー」(2019)の、世界での興行収入10億ドル(約1,100億円)の大台を突破したそうです。R指定映画としては、それまでの「デッドプール2」(2018)の7億8,500万ドルの記録を塗り替え、もちろん初の快挙です。

 

この映画が第76回ヴェネツィア国際映画祭の最優秀作品賞にあたる金獅子賞を受賞したのには驚きましたが、日本でも観客動員数343万人興行収入50億円を突破(12/15現在)と、2019年の年間ベスト10をうかがう勢いで大ヒットしているのにもさらに驚きです。

 

日本人が国際映画祭でグランプリや最優秀賞を受賞した作品に弱いのはわかりますが、軒並みアニメばかりが大ヒットする日本国内の映画市場において、これはある種の事件ですよね…。

 

また、「ジョーカー」を観た人で、この映画をけなしたり、くさしたりしている人が周りに見当たらないんですね…。何がそこまでこの映画は人々を惹きつけているのでしょうか?

 

この映画が傑作であることは間違いないでしょう。それも、2010年代の終焉を象徴するような映画で、この映画がこの時代に作られたこと、そして、この時代の人々に広く受け入れられたことが重要でしょう。

 

舞台はバットマンでおなじみのゴッサム・シティですが、1980年代初頭の設定になっています。そこでは財政難に陥り、人々の貧富の差は拡大し、人心は荒廃しています。映画で描かれている社会問題はむしろ、現在の私たちの社会の抱える問題を反映しているといってもいいでしょう。

 

ホアキン・フェニックスが演じるのは、心優しい孤独な大道芸人のアーサー・フレックです。精神を病んだの母を介護しながら、ピエロの仕事を続け、スタンダップコメディアンを目指しています。その生活は貧困そのもので、報われない人生を送っています。

 

このホアキン・フェニックスの鬼気迫る演技とその肉体がこの映画の最大の見どころです。

 

アーサーは少年時代からの辛い境遇により、感情が高ぶると意思に関係なく笑いだしてしまう病気を患っています。この苦痛に満ちた嗚咽のような笑いには心を奪われます。そして、実際にホアキンが4ヵ月で24キロ近くの減量を行い、骨と皮だけのようになった体を歪めねじ曲げる姿には目を奪われました。

 

役に合わせて顔かたちや体型まで変化させ、その役にあった雰囲気までもを作り上げるようとする役者と言えば、真っ先にロバート・デ・ニーロの名前があがると思います。「デ・ニーロ・アプローチ」という言葉があるくらいです。

 

そのロバート・デ・ニーロ本人が、この「ジョーカー」ではマレー・フランクリンという人気トーク番組の司会者役で出演しています。アーサーは、この「マレー・フランクリン・ショー」に出演し、マレーから後継者として指名されることを夢見ています…。

 

 

 

 【注意!このあと「ジョーカー」に関する重大なネタバレがあります!】

 

 

 

うーん…。「ジョーカー」は、マーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロ主演タクシードライバー(1976)と「キング・オブ・コメディ」(1982)の二本の作品の影響を多分に受けているとは聞いてはいましたが、正直なところ、ここまでとは思いませんでした…。

 

これは「影響を受けた」とか「オマージュ」どころの話ではなく、「タクシー・ドライバー」と「キング・オブ・コメディ」という、どちらも妄想癖の強いというか、空想と現実の見極めのつかない男を主人公にした傑作を融合して換骨奪胎したものやないか…と。

 

話に聞くと、マーティン・スコセッシ自身も、一時はこの「ジョーカー」のプロデューサーへの就任を検討していたというではないですか…。(結局は、最近のスコセッシ監督作品の多くの製作を務めている、エマ・ティリンガー・コスコフがプロデューサーとして参加しています。)

 

ロバート・デ・ニーロだけでなくマーティン・スコセッシまで取り込もうとしたんですかね…。スコセッシといえば、マーベル映画について「映画ではない。最も近いのはテーマパークだ」と発言して世界的に物議を醸しました。そのスコセッシがDCコミックスのキャラクターを題材にした「ジョーカー」については絶賛しています…。

  

 そんなことが頭の中を巡りながら「ジョーカー」を観ていましたが、ずーっとあることが頭に引っかかるんですね。それは「どう考えても、このアーサーがあのジョーカーになれるわけがない…」ということです…。

 

ジャック・ニコルソンヒース・レジャージャレッド・レトの姿が思い浮かばなかったわけではありませんが…あの「ジョーカー」ですよ…!人の心をもてあそび、残忍でもありコミックでもある、悪人たちですら足元にもおよばない他を寄せつけない異常性がジョーカーにはあります。それこそジョーカーが唯一無二のスーパーヴィランである所以だと思います

 

アーサーがいかに度重なる不幸と絶望と過酷な運命を経て同情や共感を呼ぶことはあっても、そして、ゴッサム・シティの暴徒たちから社会の歪みから生まれたヒーローとして祭り上げられようとも、アーサーがあの巨大な悪のカリスマでスーパーヴィランであるジョーカーになる、というイメージには私はつながりませんでした…。

 

よくよく考えたら、アーサーの運命が劇的に変わることになった節目に現れた野郎どもの方がアーサーよりよっぽど凶悪でゲスですよね…。

 

地下鉄で女性に絡んでいた大企業であるウェイン産業のエリート社員たちから、アーサーは殴る蹴るのひどい暴行を受けますが、持っていた銃で三人を射殺してしまいます…。

 

そのウェイン産業の経営者で市長選に立候補しているトーマス・ウェイン(つまり、ブルース・ウェインの父親ですね…)は富裕層=搾取する側の代表として描かれています。過去に母親と関係を持ち「ひょっとしたら父親ではないか?」とつきまとうアーサーを「二度と近づくな!」と思いきりぶん殴ります…。

 

自分の冠番組を持つ人気司会者のマレー・フランクリンもそれほどではないとは言え、アーサーを自分の番組の中で笑いものにしようとして呼び出し…そして、ついにアーサーはジョーカーとして覚醒します。

 

ジョーカー誕生のシーンに「素晴らしい!」と思ったのもつかの間、暗転して精神病院にたたずむアーサー…「ジョークを思いついた。でも、あなたには理解できない。」と女性の精神分析医に言い放ちます。

 

おいおい!なんて終わり方をするんだよ…と思いもしましたが、トッド・フィリップス監督の思惑が、おぼろげながら浮かんできました…。まさかとは思いましたが、ひょっとしたら、この「ジョーカー」って映画は、まるまるアーサーのジョークというか、妄想だったのか…?

 

「ジョーカー」を監督するにあたって影響を受けていると公言していた作品、特に「キング・オブ・コメディ」については、ロバート・デ・ニーロが演じたルパート・パプキンとホアキン・フェニックスが演じたアーサー・フレックの役柄も、文字通りの「劇場型犯罪」というストーリー展開も、瓜二つです。

 

しかも、「キング・オブ・コメディ」のすごいところは、エンディングまで映画で描かれている出来事が現実であるか幻想であるか、はっきりとわからないところなんですね…。監督のマーティン・スコセッシも結末について問われると回答を避けています。

 

この「ジョーカー」が怖いのは、エンディングで、ジョーカーどころか、バットマンでさえ、アーサーの妄想に過ぎなかったと思わせるところですね…。

 

「ジョーカー」の監督の(脚本も)トッド・フィリップスが狙ったのも、まさにそこでしょう。確信犯と言ってもいいでしょう。監督の思惑通り(?)あちこちで「ジョーカー」のエンディングを巡って論争が巻き起こっているのですから…。

 

私たちがイメージする唯一無二の存在であるジョーカーは、この映画「ジョーカー」には存在しません。ジョーカーである必要はないのです。アーサーのように誰しもがジョーカーになりうることができるということは、ジョーカーそのものを否定することになります。

 

過去の作品で描かれてきたジョーカーはあくまで自分たちとは異なる遠いコミックの世界の住人でした。ところが、アーサーの思い描くジョーカーは自分と重なり合う点を見つけやすく、ひょっとしたら自分もアーサーのような状況に置かれたとしたら…というあやうい気持ちになってしまうところが、多くの人の共感を得たのではないでしょうか?

 

これはある意味とても危険ですよね…。自分の中にあるジョーカーをいつでも解き放てるのですから…。全てから解き放たれた後のアーサーが、ジョーカーとなって階段で踊るダンスシーンは、この映画の中でも特に忘れがたい高揚感あふれる名シーンだと思います。

 

ヒース・レジャーが「ダークナイト」(2008)で演じたジョーカーが「究極」としたら、ホアキン・フェニックスのジョーカーは「対極」といえるでしょう。いずれにせよ「ジョーカー」は必見の作品です!

 

 

 

 

 

 まだ一部の劇場では1月まで上映されていますが、その1月にはもうブルーレイ&DVDが発売されます…早い!あとはアカデミー賞ですかね…。

 

 

 

公開当時に観たよりも、「ジョーカー」を観てから改めて観直してみると、この映画がまぎれもない傑作だったということがわかります…。

 

 

 

こちらも言わずと知れた傑作です…。デ・ニーロも年を取りました…。この映画でのトラヴィスのようなデ・ニーロは、もう観ることはできないんでしょうね…。

 

 

 

 

 

 

史上最強の「ジョーカー」は誰なのか?

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こんにちは、カズノコです!

 

ホアキン・フェニックス主演、トッド・フィリップス監督の映画「ジョーカー」(2019)が、日本でも2019年の年間ベスト10をうかがう勢いで大ヒットしています!

 

 

 「ジョーカー」と言えば、DCコミックスバットマン」に登場する最強の悪役(スーパーヴィラン)です。そのジョーカーの誕生を独自の解釈で描いた映画が「ジョーカー」ですが、過去にも映画の中でジョーカーは数々の名優が演じてきました。中でも印象に残っている三人のジョーカーを紹介します。

 

 

1.ジャック・ニコルソン バットマン」(1989)


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「バットマ~ン🎵」というテーマ音楽とともにアダム・ウェスト演じるバットマンとロビンがバットカーに乗って洞穴から飛び出してくるシーンや、バットマンやロビンが悪者をパンチするとアメコミ風の擬音が画面に合成されるシーンが、テレビドラマで初めて観た「バットマン」のイメージでした。このドラマではジョーカーをシーザー・ロメロが演じていましたが、おぼろげな記憶しかありません…。

 


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 シーザー・ロメロ扮するジョーカー

 

いずれにしても、チープでコミカルな印象しかなかった「バットマン」をティム・バートン監督が超大作映画として蘇らせた映画バットマン(1989)は自分にとっても印象深い作品です。

 

あの暗い断崖絶壁か何かわからないオブジェの中をカメラが這うように動き回り、最後にカメラが引いていくと、あのバットマンのマークが浮かび上がるタイトルロールは、今だに何度観てもワクワクします!バックに流れるダニー・エルフマンの手による金管楽器がうなる重厚なオーケストラのテーマ曲もかっこいい!もう冒頭からバットマンの世界に引き込まれましたね。

 

 

主演のマイケル・キートンは、ティム・バートン監督の前作ビートルジュース1988)で主役のビートルジュースを演じたこともあり、バットマンブルース・ウェイン役への抜擢は監督のたっての要望でしたが、バットマンの熱狂的なファンからは猛烈な抗議を受け、映画が公開されるまではかなり物議を醸したようです。

 

 

でも、「バットマン」でのマイケル・キートンって、バットマンでもブルース・ウェインでもけっこうカッコよくないですか?よく見るとおっさん顔(公開当時は38歳)なんですが、思ったより悪くないですよね?「なんでこのキャスティングで抗議されたのかな?」と映画を観ている間、ちょっと不思議な気持ちで観てました。

 

 

実は、ティム・バートン監督の手がけた映画で私が一番最初に観た映画が「バットマン」でした。ですから、変な先入観なく観ることができたんですね。たぶん「ビートルジュース」を先に観ていたら、マイケル・キートンバットマンを演じることについて「大丈夫か…?」と思ったに違いないでしょうね…。

 

 

それよりも、テレビドラマの「バットマン」と「ビートルジュース」のティム・バートンのイメージで、この映画「バットマン」を観た人は、その「暗さ」に驚いたんではないでしょうか?何よりも出てくるキャラがどいつもこいつも屈折してます。次作のバットマン リターンズ」(1992)では行き過ぎてしまっていますが、この「バットマン」ではかろうじて「ヒーロー映画」としての体裁を保っています。

 

 

この「バットマン」で宿敵ジョーカーに扮したのは、アカデミー賞を3回も受賞した名優ジャック・ニコルソンです。主役のバットマンを演じたマイケル・キートンとともに新たなバットマンの世界を確立したといえます。

 

 

ジョーカー役のジャック・ニコルソンに対しては、文句のつけようがないですね…。強いて言えば、プリンスの曲に合わせてダンスしながら美術品を破壊したり、パレードをしながら札をばらまくシーンがあるんですが、踊っている姿は完全に実年齢50歳の太めのオヤジでした…。でも、登場シーンでのオーラは半端ないですね…。バットマンの対極にありながら、カードの裏表のような関係にあるジョーカーを見事に演じていました。

 

 

一番好きなシーンはジョーカー誕生のシーンですか…。銃撃戦の末に化学工場の薬品槽に落ちて肌は真っ白、髪の毛は緑色に染まり、顔の神経も全部やられ、不衛生でろくな手術器具もない闇医者の手で、常にひきつった笑顔のジョーカーへと変貌する姿が描かれます。薄汚れた病院で顔の包帯を取り、その顔を鏡で見て高笑いするシーンは素晴らしすぎます…。

 

 

紫のスーツに身を包み、陽気と狂気の不安定なバランスを行き来する稀代のヴィランであるジョーカーは、コミックという虚構の世界と現実の世界の間でどこかシラけつつもノリノリで演じたジャック・ニコルソンによって説得力のあるキャラクターとして歴史に名を残したと思います。

 

あの劇中で印象的な「月夜に悪魔と踊ったことがあるか?」というセリフはニコルソンの創作によるものだそうです。

 

 

 

2.ヒース・レジャー ダークナイト」(2008)


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ジャック・ニコルソンが演じた「バットマン」でのジョーカーほど「はまり役」はないと思われましたが、クリストファー・ノーラン監督ダークナイト(2008)では、ヒース・レジャーが演じたジョーカーが登場しました。

 

映画の冒頭で「ピエロ」のマスクを被った集団が銀行を襲撃中に「仲間」うちで次々と「仲間」を片付けていき、最後に残った「ピエロ」がマスクを外した時、またしてもピエロのようなメイクのジョーカーの顔が現れたシーンを観た時には、映画館の座席で身震いした覚えがあります。それほどまでにこのシーンで初めて登場したヒースのジョーカーは、めちゃくちゃクールでカッコよかった!

 

 

ヒース・レジャー扮するジョーカーの特徴は、何と言ってもその得体の知れない不気味さだと思います。出自も背景も全く不明で、汚れた緑色の髪の毛、大きく裂けた赤い口に自らメイクしたと思われるところどころ剥げた白塗りの顔。しかも、口が渇くのかやたら唇をぺろぺろ舐める独特のしゃべり方…。

 

 

ジャック・ニコルソンのジョーカーが洗練された姿に見えるほど大きく異なった姿に、「こいつはただものじゃね~」感がいっぱいでした。でも、映画の後半で警察署から逃げ出したジョーカーがパトカーに箱乗りして夜の風に髪をなびかせている姿は、さわやかさ満点でしたね…。

 

 

また、ギャングたちの会合で悪党からの脅しにも屈せず交渉も通ぜず、えんぴつの手品」を披露するジョーカーも最高です!要は、ジョーカーは悪役が望むような「金」とか「権力」とかには全く興味がないんですね…。

 

 

「いい子ぶった一般市民もいざとなったら他人を犠牲にするし、ヒーロー然としたバットマンもマスクで顔を隠した人殺しと変わりない」ことを証明しようと社会の秩序を乱し、狂気を体現していこうとするヒース・レジャーのジョーカーの姿は、ジャック・ニコルソンのジョーカーもかすむほどのインパクトがありました。

 

 

ヒースはジョーカーの役作りのためにホテルに引きこもって誰にも会わず、役にのめり込むあまり睡眠時間もろくに取らなかったそうです。ジョーカーという稀代の悪党を演じるために、精神と肉体のバランスを危うくしたのかもしれません。

 

 

ヒース・レジャーは撮影終了後の2008年1月22日に処方薬の過剰摂取で死去しました。28歳の若さでした。ヒースはこの「ダークナイト」のジョーカーの演技で第81回アカデミー賞助演男優賞を死後に受賞することになりました。

 

 

生前、「ダークナイト」におけるジョーカー役について、ヒースは「これまでで一番楽しい役だった。多分これからの映画人生においてもずっとそうだろう」と語っており、彼のジョーカーにかける熱意は並大抵のものではなかったことがうかがえます。完成した「ダークナイト」を誰よりも楽しみにしていたのは、ほかならぬヒース自身であったに違いないでしょう。

 

映画が公開される前に亡くなってしまったことで伝説になってしまった嫌いはありますが、ヒース・レジャーが命を賭して壮絶に演じたジョーカーは、「ダークナイト」を傑作たらしめ、その姿はいつまでも観た人の記憶に残るのは間違いないでしょう。

 

 

 

3.ジャレッド・レト スーサイド・スクワッド」(2016)


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ジャック・ニコルソンヒース・レジャーと2人の名優が演じてきたジョーカーとはさらに異なる方向性を目指したのが、デヴィッド・エアー監督スーサイド・スクワッド(2016)のジャレッド・レトです。

 


映画「スーサイド・スクワッド」は、DCコミックスに登場する悪役たちがチームを組んで戦う姿を描くアクション作品です。「ダラス・バイヤーズクラブ」でアカデミー賞を受賞したジャレッド・レトがジョーカー役に挑戦したことで話題を集めました。

 

 

ビジュアルのインパクトは過去のジョーカーの中ではナンバーワンでしょう。白塗りの顔に真赤な口紅はジョーカーの基本ですが、目を引くのが顔も全身もタトゥーだらけで、さながらギャングスタのようないでたちです。

 

 

緑の髪は短髪でオールバック、おまけに口の中には銀歯がずらりと並んでギラギラと光っていて、明らかにやりすぎの匂いがしました。個人的にも、むしろジョーカーらしさを失ってしまったような気がしますね…。

 

 

ジャレッド・レトは、このジョーカー役に並々ならぬ意欲を示していたようで、まず三つ編みにしていた地毛の長髪を切り落としただけではなく、長くのばしていた髭も眉毛もすべてそり落としてメイクテストに臨みました。そして、独自のジョーカー像を生み出すため、数カ月にわたり役作りに励みました。

 

 

さらに、ジャレッドはいかにもジョーカーらしいプレゼントを共演者に送る凝りようで、ハーレイ・クイン役のマーゴット・ロビーには生きたネズミ、デッドショット役のウィル・スミスには弾丸、さらに全キャストがリハーサルする現場に死んだ豚を送り届ける等、撮影期間中は現場以外でもジョーカーのキャラさながらの奇矯な行動を繰り返していたそうです…。

 

 

ところが、これらの行為は役作りの域を超えていると製作者側の反発を招いてしまい、映画では出演シーンが大幅にカットされ、当初は主演級の扱いだったところが出演時間は15分以下になってしまいました…。

 

 

確かに映画の中でのジョーカーはスーサイド・スクワッドの一員といった訳でもなく、ハーレイ・クインの恋人役のような中途半端な添え物となってしまってますね…。

 

 

さらに、ジャレッド主演のジョーカー単独主役映画とジョーカーとハーレイ・クインのラブストーリーを描く映画も製作中止となりました。

 

 

これらのことは、ジャレッドにとっても相当なショックだったようで、後にホアキン・フェニックス主演の「ジョーカー」の製作が決定した際には、製作会社に中止するよう圧力をかけたそうです…。

 

 

このジョーカーという役柄には、演じた役者をも狂わせる独特な魅力があるのかも知れませんね…。2020年第92回アカデミー賞主演男優賞のノミネートも有力視されているホアキン・フェニックスはどうでしょうか…?

 

 

 

 

次作の「バットマン リターンズ」の方が、ティム・バートン節全開です。

 

 

バットマンより、ジョーカーのこのジャケットの方が目につきますし、いいですね。

 

 

DCコミックスの悪役大集合と言うわりには、悪役が皆「いいひと」なんですよね…。

 

 

 

予想をはるかに超えた恐るべき続編…「ドクター・スリープ」

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こんにちは、カズノコです!

 

 スティーブン・キング原作、スタンリー・キューブリック監督のホラー映画の名作「シャイニング」(1980)の40年越しの続編「ドクター・スリープ」(2019)を観に行きました!

 

前作となる映画「シャイニング」で一番有名なエピソードは、原作者のキングがキューブリックの手で映画化されたこの作品を毛嫌いしており、事あるごとに非難を繰り返していることですよね…。その後、映画「シャイニング」の批判をしないことを条件にキューブリックから映像権の許諾を得て、キング自身が脚本を手がけたテレビシリーズまで作ったほどでした。でも、キューブリックが亡くなっても、キングは映画「シャイニング」への批判をやめていません…。

 

 

キングが小説「シャイニング」の続編となる小説「ドクター・スリープ」を発表したのが2013年ですが、キングは自作の続編は書かない作家なんですね。それだけに「シャイニング」に対し愛着があると思うのですが、小説「ドクター・スリープ」は当然のことながら、映画「シャイニング」で変更された設定は全く無視され、映画はなかったものとして小説「シャイニング」の後日談として話が進められています。原作者による「あとがき」でも、まだ映画「シャイニング」に対する恨み節を炸裂させているのが恐ろしいです…。

 

 

 その「ドクター・スリープ」の映画化のニュースを聞いた時には、単にキングの小説「ドクター・スリープ」を映画化するのかと思っていましたが、ポスターや予告編を見ると明らかにキューブリックの映画「シャイニング」を下敷きにしています!「これは面白いことになりそうだ…!」と俄然、この映画に対して期待が持てましたよね!

 

 

どんなに原作者のキングが映画「シャイニング」を嫌おうとも、完全に無視するわけにはいかないでしょう。それだけ映画「シャイニング」はホラー映画史上に燦然と輝くマスターピースとして名を残しています。映画「ドクター・スリープ」の映画化を任されたマイク・フラナガン監督は、小説「シャイニング」と映画「シャイニング」の橋渡しをしようとアクロバティックとも無謀とも思えるチャレンジに挑んだとも思えます。

 

 

【注意!このあと「ドクター・スリープ」に関する重大なネタバレがあります!】

 

 

「シャイニング」の小説と映画の違いのひとつに、舞台となったオーバールック・ホテルのその後があります。ちなみに小説「シャイニング」では、ホテルは最後にボイラーの爆発により焼失しています。ところが、映画「ドクター・スリープ」では主人公たちのクライマックスの舞台としてオーバールック・ホテルで死闘を繰り広げます。これ以上最高な舞台があるでしょうか⁈

 

 

映画「ドクター・スリープ」は、映画「シャイニング」の続編として存分に楽しめる作品でありながら、小説「ドクター・スリープ」の映画化としてもパーフェクトと言っていい仕上がりとなっています。ちなみに、キングはフラナガン監督により映画化された「ドクター・スリープ」を自分の小説とは大きく異なる展開にもかかわらず、絶賛しています。

 

 

まず、「ドクター・スリープ」の物語そのものがホラーとはもう言えません。強いて言えば、「シャイニング」という特殊能力をもった者同士のサイキック・バトルを描いたダーク・ファンタジーで、前作「シャイニング」のホテルを舞台にした閉鎖的空間から、大きく解放された空間を文字通り縦横無尽に飛び回って戦いを繰り広げます。もはや「X-メン」の世界に近いものがありますね…。

 

 

主人公であるダニー・トランスは、40年前に起きたホテルでの忌まわしい出来事で心に深い傷を負い、過去からの亡霊から逃れるためにアルコール依存症となり、自暴自棄な生活を送っています。この中年になったダニーを演じるのがユアン・マクレガーで、父のジャック・トランスと同じようにアルコールの誘惑から逃れるために自分と戦う姿は哀愁さえ感じます。ユアン・マクレガーもいい年の中年おじさんを演じられるようになったということでしょうか…。

 

 

また、ダニー以上の強力な「シャイニング」を持ち、「トゥルー・ノット」と呼ばれる悪の集団と戦うことになる少女アブラを演じたカイリー・カランもよかったですね。

 

 

その悪の集団「トゥルー・ノット」を率いるローズ・ザ・ハット(変な名前…)を演じたレベッカ・ファーガソンもいいですよ!と言いたいのですが、敵役としてはあまり強くないんですよね…。アブラがめちゃくちゃ強いうえにダニーが加わるのだから、ローズには最初から勝ち目なんてない。オーバールック・ホテルの手を借りるまでもなかったですよね…。

 

 

2時間半の比較的長い映画ですが、テレビシリーズにしてもよかったほど細かいエピソードやスティーブン・キングのファンが喜びそうなトリビアはてんこ盛りですし、途中でダレることもなく最後まで観客を引っ張っていくフラナガン監督の手腕は大したものです。

 

 

でもですよ…。映画を観ている間、ちょっとした違和感を感じていたんですよね…。

 

 

「シャイニング」のその後を描いた「ドクター・スリープ」ですが、前作の登場人物も続々と登場します。

 

 

「シャイニング」でスキャットマン・クローザースが演じていたディック・ハロランは、「ドクター・スリープ」でもカギとなる大変重要な人物ですが、ハロラン役を演じたカール・ランブリーは、前作では大した活躍もできず、即退場となってしまったクローザースに匹敵する好演のおかげで、ついほろっとしてしまうほどでした…。

 

 

ただ、ハロランからダニーに渡した小箱が、ずらっと雪のホテルの迷路庭園に並んでいるシーンを観た時に、オチがわかってしまいました…。ネタ的には、スティーブン・スピルバーグ監督の「レディプレイヤー1」(2018)とかぶってしまっていますね…。自分的には封印していたホテルの亡霊が「トゥルー・ノット」の面々を一人一人「必殺シリーズ」のように趣向を凝らしながら倒していく展開を予想してましたが…。

 

 

違和感と言うのは、キューブリック監督の「シャイニング」の印象的なシーンをうまく再現しているにもかかわらず、そこで演じているダニー・トランス(似てない!)ウェンディ・トランス(似てない!)そしてジャック・トランス(なんと、あの「E.T.」のヘンリー・トーマスが演じている!…似てない!

…演じている俳優の皆さんには大変申し訳ありませんが、よくあるテレビのバラエティー番組の再現フィルムを観ているような変な気持ちになってくるんですよね…。いかにジャック・ニコルソンシェリー・デュヴァル の顔と演技に破壊力があったか、思い知らされました…。

 

 

クライマックスのオーバールック・ホテルでの戦いで「237号室の浴槽の女」「双子の女の子」「双子の父親であるデルバート・グレイディ」も登場しますが、みな一様に劣化しています…。

 

 

ホテルに乗り込んできたローズが、映画「シャイニング」で象徴的に描かれていた、血の海となるエレベーターホールの光景を見て鼻で笑うシーンを見て確信に変わりました…。この映画の脚本も担当したマイク・フラナガン監督が、映画「ドクター・スリープ」で本当にやろうとしていたことが…。

 

 

オーバールック・ホテルでの惨劇を細部まで入念に再現し、音楽やカメラワークまで似せてキューブリック監督の「シャイニング」への熱烈な賛辞としたフラナガン監督の意図はわかります。しかし、わざわざこの「ドクタースリープ」の登場人物に前作の怪異現象を目撃させる必要は何もないし、そっくりさんもどきに再現フィルムを演じさせる必要もないんです。カメラのアングルを変えて顔は映さないとか、必要あればCGで精巧に再現することも可能であるにもかかわらずです…。

 

 

この落差って何でしょう…。映画「シャイニング」のあちこちに散りばめられた数々のモチーフの得体のしれない不気味さは消え、オーバールック・ホテルの亡霊たちは残念なことにただの化け屋敷の仕掛けに成り下がってしまっていました…。

 

 

しかも、敵の首領のローズを倒してからの映画の展開は、まるで小説「シャイニング」の展開をなぞっています。小説「シャイニング」でのジャック・トランスとその息子ダニー・トランスを、この映画ではダニーとアブラに置き換えて再現を試みています。小説では正気に戻ったジャックの手でボイラーを爆発させ、炎上したホテルからダニーを逃がすのですが、映画ではダニーの手でボイラーを爆発させ、炎上したホテルからアブラを逃がします。何だかなぁ…、ここまでやらんでも。

 

 

筋金入りのキングの信奉者であるマイク・フラナガン監督は、一度はキューブリックの手に渡った「シャイニング」を、40年の時を経て原作者のキングの手に戻したんですね…。キングの小説とキューブリックの映画を一つの物語にまとめあげた手腕はすごいと思いますが、正直なところ、明らかにキング寄りでしょう…。キングがこの映画化された「ドクター・スリープ」を絶賛したのにも納得がいきます。この「シャイニング」を巡るどろどろとした作者の怨念の恐ろしさはキングの恐怖小説以上でしょうね…。

 

 

この映画「ドクター・スリープ」観た人で、キューブリックの「シャイニング」が嫌いな人は、原作者のキングと同じように胸がスッとしたことでしょう。逆に、キューブリックの「シャイニング」が好きな人は、もっと映画「シャイニング」のことが好きになったのではないでしょうか?少なくとも私はそうです。

 

 

「両雄並び立たず」とはよく言ったものですね…。

 

 

 

 

 

キングの作品の中でも一番脂ののっていたころの作品だと思います。最近のキングの作品に物足りなさを感じている方は、この機会に読み直してはいかがでしょうか?

新装版 シャイニング (上) (文春文庫)

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新装版 シャイニング (下) (文春文庫)

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 原作の小説「シャイニング」を読むときには、この映画のことはいったん忘れてしまうのがいいでしょう…とはいっても、この顔を忘れるのは正直ムリでしょうね…。

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 ここまで来たら、やはり原作の小説「ドクター・スリープ」も読んでおくべきでしょうね。小説「シャイニング」からストレートにつながる続編です!

ドクター・スリープ 上 (文春文庫)

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ドクター・スリープ 下 (文春文庫)

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「ハズレ」ばかり⁇ スティーブン・キング原作の映画たち

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こんにちは、カズノコです。

 

ここのところ、「IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。」や「ドクター・スリープ」と、アメリカのホラー作家であるスティーブン・キング原作の映画が続けて公開されています。

 

私もスタンリー・キューブリック監督の「シャイニング」スティーブン・キングの名前を始めて知った一人で、キングの熱心な読者と言うわけでもありませんが、1980年代の日本で突如吹き荒れたモダン・ホラー」ブームに乗っかり、キングの長編や短編、リチャード・バックマン名義の作品まで新潮文庫、文春文庫、扶桑社ミステリー等、複数の出版社から次々に邦訳が出され、それこそむさぼるように読んでました…。

 

 キングほどその小説が映像化されている作家はいないんじゃないでしょうか?それも作品によっては二度、三度と映像化された作品もあります。これだけ映像化された作品の中にはもちろん「ハズレ」もあるのでしょうが、原作者としてのキングとしては、あの「シャイニング」だけは許せないようですね…。

 

そんな100近くもある膨大な数の映像化作品から、特に私の思い入れのある作品をご紹介します。

 

 

①「デッドゾーン(1983)

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デヴィッド・クロネンバーグ監督が得意の「肉体崩壊」描写を封印して、抑えた演出に徹した最良の一作。交通事故による昏睡後に超能力を身につけた主人公のジョニー・スミスをクリストファー・ウォーケンが演じ切り、彼を襲う悲劇には切なくなること必至です。カナダのトロントで撮影された寒々しくも美しい風景はスミスの心象風景とも重なり、音楽も盛り上げます。音楽は絶対ハワード・ショアやろ…と思ったら、意外やマイケル・ケイメン!原作ではもう一人の主役ともいえる地元政治家のグレッグ・スティルソンのパートがかなりの分量を占めるのですが、映画ではその部分をバッサリと切り、スミスの視点に絞ったジェフリー・ボームの脚本も見事としか言うことがありません。

 

 

 

②「ミザリー(1990)

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同じくキング原作の「スタンド・バイ・ミー」(1986)のロブ・ライナー監督によるサイコ・スリラー。この映画は主役のアニー・ウィルクスを演じたキャシー・ベイツの怪演に尽きます!彼女はこの映画でアカデミー主演女優賞を受賞しています。ただし、原作の小説で描写されるアニーの方がもっと陰惨で残酷で怖い!映画はよい意味で恐怖とユーモアが絶妙にブレンドされ(これは監督のロブ・ライナーと脚本のウィリアム・ゴールドマン、ベストセラー作家を演じたジェームズ・カーンらの熟練の技の賜物でしょう)、かなり楽しめる作品となっています。

 

 

 

③「スタンド・バイ・ミー(1986)

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キング原作の非ホラー小説の映画化としては「ショーシャンクの空に」(1994)と双璧でしょう。この映画を観た当時印象に残ったのは、「こいつら12歳の少年のくせに、やけにタバコを美味そうに喫うなぁ…」と思ったことと、ゴーディ少年が夜焚火を囲んで仲間に語る「ブタケツのパイ食いコンテストでの復讐」の話でした…。やはり、大人になってからでないとこの映画の本当の良さはわからないんでしょうね…。今は亡きリバー・フェニックスが輝きを放っていた映画でもあります…。

 

 


④「ショーシャンクの空に
(1994)

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この映画の原作が、私自身はサラッと読み流してしまった中編小説の「刑務所のリタ・ヘイワース」(1982)だったとは当初は全くわかりませんでした…。公開時にはノーチェックで、後に口コミで面白い映画があるよ、というのを聞いて観て初めてわかりました。評価のメチャクチャ高い映画で、キングの引き出しの広さを改めて感じましたね。ティム・ロビンスモーガン・フリーマンの好演もあるでしょうが、ここはやはり監督・脚本を務めたフランク・ダラボンの功績でしょう。鑑賞後にこれだけ爽やかな幸福感に包まれる映画も珍しいですね。

 

 

 

⑤「ペット・セメタリ―」(1989)

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ジョージ・A・ロメロと長らくタッグを組んでいるリチャード・P・ルビンスタインが製作(監督はメアリー・ランバート)なので「ゾンビ映画」かな?と思う向きもありますが、元ネタは恐怖小説が好きな人ならおなじみの古典中の古典、W・W・ジェイコブズの猿の手です。ホラー映画ですが、ペットや家族の身近な愛する者の死という、避けては通れない葛藤にどう向き合うか問う映画でもあります。キャスト等やや地味な印象ですが、描写はなかなか強烈で人によってはトラウマになるほどです。特に、3歳の息子ゲージを演じたミコ・ヒューズは人形のようにかわいらしいのに、メスを持たせるとすごいんです…。この作品もリメイクされ、2020年1月に日本でも公開予定です。

 

 

 

⑥「黙秘」(1995)

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原作となった小説「ドロレス・クレイボーン(1993)は、キングが映画「ミザリー」(1990)で主演したキャシー・ベイツを主人公のドロレスを想定して、しかも、全編ドロレスの一人称の“しゃべり”で記したというすごい力技の作品です。映画の方は真逆の「黙秘」の題名通り静かに展開しますが、一人称視点の原作を映画用に解体・構築し直した脚本の力で、ミステリ映画として十分堪能できる仕上がりになっています。主演のキャシー・ベイツはもちろんですが、娘セリーナを演じたジェニファー・ジェイソン・リーがとてもいいんですね。脚本のトニー・ギルロイ、監督のテイラー・ハックフォードもいい仕事をしています。

 

 

 

 

⑦「クリープショー(1982)

f:id:kazunokotan:20191210223431j:plainこの映画は5話の短編で構成されたオムニバスのホラー映画で、キングの書き下ろしオリジナル脚本になります。SF、ホラーや猟奇犯罪を題材にしたECコミックスの再現を画面でも試みており、どぎつい色彩や効果音など漫画を見ているような感覚に陥ります。スタッフもキャストも今から見るとすごく豪華です!特筆すべきは、第2話の「ジョディ・ベリルの孤独な死」主演しているスティーブン・キングキングは自分が原作の映画によく出演していますが、これはしっかり演技していて、しかも結構笑えます…。あと、ほとんど話題にもなりませんでしたが、続編のクリープショー2/怨霊」 (1987)も意外と掘り出し物ですよ。

 

 

 

 

⑧「クリスティーン」(1983)

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小説の出版される前から映画化の企画があったというのが驚きですが、原作にあった前の持ち主のルベイの怨念が取り憑いた車から、車そのものに邪悪な意思がある設定に変更されています。結果的に「クリスティーン」と名付けられた真っ赤な1958年型プリムス・フューリーと主人公アーニーの歪んだ愛の物語が描かれることになりました。この映画の見どころは何と言っても「クリスティーン」に尽きます。悪ガキどもに破壊された車体を自己修復するクリスティー(このシーンに流れる「ハーレム・ノクターンがいいんです…)、夜の闇の中を火だるまになって静かに走るクリスティーン、ぞくぞくするほど美しいクリスティーンの姿をジョン・カーペンター監督も愛情をもって描いているようです。

 

 

 

⑨「ミスト」(2007)

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キングの長編、短編の中でこの映画の原作となった中編「霧」(1980)が、個人的には最も好きな作品なんです。あのフランク・ダラボンの監督・脚本で映画化されたと聞いて、カービー・マッコーリー編集の「闇の展覧会」で初めて読んだ時の感動を胸に、映画館に足を運んだものです。原作の小説にほぼ忠実に話は進み、もう嬉しく嬉しくて…もちろん、ラストの衝撃に座席でしばらく固まっていましたが…。キング自身はこの結末の変更について称賛しているようですが、テーマは全く別のものになってしまいますよね…。

 

 

 

⑩「シャイニング」(1980)

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キングにキューブリックはホラー映画の何たるかがわかっていない」とか「エンジンの積んでないキャデラック」とかどんなにボロクソに言われようが、(ある意味、皮肉なことですが)キング原作のホラー映画の金字塔としての地位はこの先も揺るがないのではないでしょうか?やっぱりはずせませんね…。

 

 

 

 

うーん、選んでみると意外とよい作品がありますね…。「キャリー」(1976)もグリーンマイル(1999)もバトルランナー(1987)も「痩せゆく男」(1996)もIT/イット(2017)も抜けてしまっている…。「ハズレ」と言われている作品にも、何かしら愛着はあるもんですね。

 

これから先もキングの作品は映像化、そして過去の作品もリメイクされていくでしょうから、当分楽しみがなくなることはないですね…。

 

 

 

 

 

 

 

 「キャリー」から「ドクター・スリープ」まで網羅されたガイド本が、タイミングよく発売されました!ちょっと高価ですが、これはスゴイ本になりそうですね。

スティーヴン・キング 映画&テレビ コンプリートガイド

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日本ではやや不幸な公開をされましたが、気軽に鑑賞できるようになって欲しいですね。いずれはBDで発売になるのでしょうか?

デッドゾーン [DVD]

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撮影は「アダムス・ファミリー」や「MIB」のバリー・ゾネンフェルド監督です。

 

さりげなく、キーファー・サザーランドリチャード・ドレイファスが出演しているのもいいですね。

  

映画のポスターにもなっていた有名な写真をジャケットに使用していますが、公開当時は一体何の映画かさっぱりわかりませんでした…。

  

おどろおどろしい「パスコ―」の顔の大写しのジャケットから変更されて、雰囲気はよくなった?

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この作品もBD化を望みたいですね…。でも「黙秘」と言う邦題はよかったものか?

  

個人的には、第5話の「這い寄るやつら」が大好きですね!E・G・マーシャルえらい!

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ジョン・カーペンター監督が「苦手」とする「恋愛映画」としてもよくできています!

  

 いつまで「後味の悪い映画№1」とか「鬱映画」とか、言われ続けるのでしょうか…。

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 やっぱり「コンチネンタル・バージョン」が好きですね…。

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